ゆるすからゆるされるのだ
ゆるさないからゆるされないのだ
あたしをひきちぎる
あなたのひとみ
にんげんみたいなぬいぐるみ
悲しみのピアノ
短調の和音
ゆび ....
巨大な宇宙の夕焼けに
染まり進む人々が
鏡の中を通っていく
さようなら さようなら
言葉を置いていきながら
後から後から奥へ奥へ
張り巡らされたアスファルトを越え
才能の定義とはなんであるか、なんていう細かいことは置いといて。でも簡単に言えば、「僕には才能があるんですよ」なんて宣伝しなくても誰かしらに受け止めてもらえる何かをそう呼ぶ、ということになるだろう。 ....
血液ハ、作レナイモノナノデス
人ノ血ハ人ノ手デハ、作レナイモノナノデス
めまいのする空を
ミカヅキの匂いのする方向へ
光の視線が突き進むなら
かまわないけれど幻想は死に絶えるのです
....
眠るひとのいない
ベッド、手摺りには水漏れが、と
書かれていて、シーツには髪の毛が
いっぽん、半ばしろい枝毛のかなしみ
もう増えないであろう
壁や箪笥の上の笑顔や
家族の群れ
灯り ....
わたしの椅子に
誰かが座っていたから
夜の浜辺に座っている
冬の日本海が
風邪をひいたように
ぐずっているから
ハーモニカを吹いてやる
いつまでも吹いてやる
なぜなぜ泣くの ....
はじめて書いた文字は
まどかの「ま」だった
うれしかった
母がほめてくれたから
不思議の国のアリスを読んでもらって
気に入った言葉を
画用紙に集めて色を塗った
コタツに入 ....
いとしいといわない
愛しさ
さみしいといわない
寂しさ
祖母と行く畦道
ふゆたんぽぽを摘みながら
手は
手とつながれる
枯れ野には
命の気配がして
墓所には
命だ ....
透明な雨が降り
冬の夜を静かに濡らし
私は宇宙の孤独に座る
恋をしたので窓を開けることにした。
揺らめいている、夏のシルエット。
君のせいで、世界が晴れてしまった。
さよならを告げて君はこの場所を去る。
光と風を残して。
遠い
在るものすべて
遠い
言葉は浮遊し声さざめき
(意味と響きは解離して)
通り過ぎる人、人、人
わたしは母語を失って
記憶の像にうっとり沈み
遠い
在る ....
海は
海でしかなく
ひとは
ひとでしかないはずなのに
定期船に乗って
航路に出ると
なにもかも
忘れ物したみたいで
空っぽになったわたしは
地球ではない地球のどこかへと
まっすぐ
....
みかんが美味しい
コタツに入り
テレビを見て
くされ縁のあの人と
いっしょに食べる
みかんが美味しい
吹く風は
窓ガラスを叩いて
あたたかい部屋に
入ろうとしているのか
....
何につまづいてどこで倒れて
誰の手も届かないこの場所で
立ち上がることが怖くなったから
今は目を閉じて時間を戻そう
パールのネックレスのような長さで
繋いできたはずの思い出が揺れて
....
ひとの形をしている友は
寒い寒いくにへ行って
そのまま凍えて雪になった
ひとの形をしていない友よ
くちは利けずとも まだ
わたしの隣にいてくれる友よ
心臓などなくても
温かい友よ
....
遊び疲れたのか
母親に持たれてねむる
少年を挟んで
父親と母親が
それぞれ、編み針を手に
小さな毛糸の靴下を編んでいる
どちらが欠けても使えない
暖かい色の靴下に見えないものを
編み込 ....
晴れた港の
防波堤を歩いた
コンクリートのひび割れから
小さな花は灯る
テトラポットは
夜ごと
組み替えられている
それらが
いつか砂粒になるまで
続いていくとしても
さかなの ....
死体のような
ひたすら一点に
冷たく凝固していく
気配、
辺りに充ち満ち
私は漆黒のアスファルトを進む
蒼く蒼く結氷する
異界の感触、
次第に足許に広がり
じわりと恐怖に浸さ ....
全ての喪失は流れいき
乾き切った胸底に
氷食地形の
研磨された岩石の如く
哀しみの蒼い窪みだけ
鋭く冷たく穿たれる
(愛は
私の中にある
思いを伝達しようとする
すべての努力を
....
くぼみがある、あなたのくぼみだ
あなたはそこにいた、ぬくもりがある
長い歳月がくぼみをつくって
その円やかなわん曲はあなたの
生のおもみだ、刺々しさの消えた
まろやかなくぼみ、あなたというく ....
小袋を開けて
柿の種を食べる
{ルビ掌=てのひら}にのせ
柿の種に混ざるピーナツを、数える
――この組み合わせは二度と無いだろう
夕刻 ダウン症児の息子の
小さな手をとり
川沿いを歩 ....
大人になると
目に映る全てに
順番を付けて
幸せを急ぐ
振り切って
好きなものを
選べる力が
正義なんだと
言い聞かせた夜
ミシンをかけた
雑巾の表と裏が
どっちでも同じ ....
神走る
跡を追う
ただ痕跡のみ
残す
見えぬものを
聴く言葉、掬う言ノ葉
散らす人
俺は流石に音を上げた
貴女の遠去かるスピードに
流れる石、意志、猪の
猪突猛進
速度増し
....
白鳥の舞い踊る岸雪は降り
神走る跡を追い追い御神渡り(おみわたり)
若菜落ち暗渠に響く人の声
できるだけ神の御意志に添えるよう感覚を研ぎ澄まして
できるだけ私利私欲や雑念を払って
それを探っている
そして、これだと思うものを
打ち込んでい ....
晴れ上がる宇宙の
戸口に立ち手を振れば
降って来る無限の青!
この新年の時を包み込み
森羅万象、在るものすべてを
その清明な静けさに迎え入れる
小夜時雨、わたしは夜のなか
朝をしらない、昼にふれば
だれもわたしを小夜時雨と
よびはしないから、涙もない
夜の静寂を細いゆびでたたく
あの窓明かりからのぞくひと
あなたがわたしをわす ....
風の招きに集められ
ひとつの夜に出逢う僕等は
互いの盃を交わす
この胸から
静かに踊り出す…心音の行方に
物語の幕はゆっくり上がる
誰にも知られぬ遠い夜よ
{ルビ蹲=う ....
私の中に
永い間眠っている
マグマ
涼しい顔してほんとうは
体内を巡る真紅の血が
いつも渦巻いている
そろそろ目を開く季節だ
あの空、葉脈、
一本の水平線を
( ....
夕陽を抱いた木々の裸は細く炭化して
鳥籠の心臓を想わせるゆっくりと
いくつもの白い死を積み冬は誰を眠らせたのか
追って追われる季節の加速する瞬きの中
ゆっくりと確かになって往く単純なカラクリに ....
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