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──献杯の酒を飲む夜に

  * * * 

高校三年生の頃、僕は恋をしていた
あんなにも好きだった娘(こ)に
教室で話しかけることもできず
震えながら・・・告白しようとした
夏 ....
僕は今夜
晩年に娼婦の肖像を描く
マネの孤独の深さを知った

今宵 彼のアトリエを訪れる
ボードレールとマラルメの
美を語らう声が聴こえる

――汝のいる風景の〝今〟を視よ
 ....
ジャズを聞きながら
君に手紙を綴っていたら
知らぬ間にアルファ波が
出ていたらしい

気がつくと
時計の針の30分が
あっという間に過ぎていた

願わくば
退屈で長い1日よりも
 ....
渋谷・RUBYROOMのカウンターで
白ワインを飲む
今夜は嬉しいことがあったから

先月はここで
赤ワインを飲んだ

この店では月に一度
「SPIRIT」という朗読会が行われ
今夜 ....
年に一度の聖なる夜
壁に掛けられた靴下には
目に見えない歌が
そそがれます

十二月二十四日の聖なる夜
無数の子供等は
あどけない寝顔で
それぞれの夢を見るでしょう

僕は神さま ....
誰の手が自分を温める? 

日本の何処かに
そんなお方はいるやも知れぬが 
ああせめてその日まで 
俺は俺の情けない手で 
俺自身を温める 

俺は俺の最上の友達 
人知れぬ 
酸 ....
背後にひとり立つ木の葉群から 
夏の終わりの蝉の鳴き声…ふりしきる
路面を歩いていると
ふいに 涼しくなった

見知らぬ誰かが
水をまいた道だった

私は、気づいていたろうか
いつの ....
時は令和元年9月23日月曜日  
神宮球場ナイトゲーム

8回の表 
試合は佳境にさしかかり
引退を心に決めた阿部選手の同点ホームランで
(球場内はどっ、と湧き)
続く若手・大城選手の勝 ....
スマートフォンの天気予報図を見た

「台風は非常に強い勢力を保ちながら
 本州に向かっています」

空の御機嫌は知らないが
いずれにせよ
明日は来る

日々の些細な出来事に
ぐにゃ ....
一心不乱に庭の草をむしる中
訪れたアシナガバチが 数秒間
目線の先を漂い
静かに通りすぎていった

おととい
{ルビ合羽=かっぱ}で全身をまとい
屋根の下にぶら下がる、ハチの巣へ
殺虫 ....
時は昭和三十三年のプロ野球
日本シリーズ
巨人に三連敗で
絶体絶命の西鉄ライオンズ
エース稲尾和久は残りの四試合全てに登板
チームを逆転優勝に導き
翌日の新聞には
「神様・仏様・稲尾様」 ....
愛読書を手に
寝床で頁を開く 休日の午後
ゆるゆると…睡魔に襲われ
眠りに落ちる、寸前

――ガンバッテ

の囁きに
はっ と目が覚める

隣室の机上の
日だまりに
昨日、水を ....
自閉症をもつ息子の
小さな手を引いて
特別支援学校のバス停まで
いつもの道を歩く

――はやあるきっ、はやあるきっ
かけ声と共に
到着時間まで、あと3分
息子が地べたに這いつくばり
 ....
五反田駅構内で
アジアの青年三人の、ひとりは呟いた
――JR
僕は足を止めて、質問した
――JR?
続いてほほ笑み、尋ねた
――ユア、チャイナ?
彼らは不揃いに小さく、頷く

――グ ....
やあ
十五年前の君
予想できるかい?
ひとつだけ、教えてあげよう

{ルビ面白=おもしろ}苦しい、面苦しい、日々の果てに
君は手にいれる
ひとつの温かい宝を

自由だとか、幸いだとか ....
鼠が地面に落ちた
餌を食べる 午前〇時の新宿

家の無いおじさんは
幸せそうな笑みを浮かべ
北風に凍える僕の傍らを通り過ぎ
バケツの残飯を探す臭覚のままに
繁華街の路地へと
消えていっ ....
流れてゆく
流れてゆく
二度と無い今日が
流れてゆく

僕は今夜ここで
(小さな舞台で朗読する
 新宿ゴールデン街の老舗「ひしょう」で)
何を待とうか

星の無い夜空を仰ぎ
あて ....
ドアを開くと
幾十年も変わらぬ空気の
Piano Bar Lyon

カウンターに腰を下ろした僕は
ピンク色のグラスを傾ける

ピアノの周囲には
いくつかのアコーディオン達が
寂れた ....
植木鉢の
{ルビ萎=しお}れたシクラメンに
水をそそぐ

日中は出かけ、帰宅すると
幾本もの首すじはすっと伸びて
赤紫の蕾がひとつ 顔をあげていた

先週、親しい伯父が病に倒れ
ふい ....
小袋を開けて
柿の種を食べる
{ルビ掌=てのひら}にのせ
柿の種に混ざるピーナツを、数える
――この組み合わせは二度と無いだろう

夕刻 ダウン症児の息子の
小さな手をとり
川沿いを歩 ....
風の招きに集められ
ひとつの夜に出逢う僕等は
互いの盃を交わす

この胸から
静かに踊り出す…心音の行方に
物語の幕はゆっくり上がる

誰にも知られぬ遠い夜よ
{ルビ蹲=う ....
私の中に
永い間眠っている
マグマ

涼しい顔してほんとうは
体内を巡る真紅の血が
いつも渦巻いている

そろそろ目を開く季節だ
あの空、葉脈、
一本の水平線を
( ....
まぼろしの人は戸口を開けて、歩いていった
後ろ姿が遠のいてゆく
夕映えへ連なる… 小さな足跡

――それを誰かは数珠と云い
――それを誰かはロザリオと云い

      *

木漏れ ....
世を去って久しい、彼女は
開いた財布の中にいた

先日ふらりと寄った
懐かしい店の
薄桃色のレシート

ちょこんと、折り畳まれ
あまりにも無垢な姿で
誰かが蹴とばした丸石が
転がって
僕の爪先にぴたり、とまる

――丸石は、{ルビ囁=ささや}いた

空っ風が吹いてきて
一枚の枯葉は{ルビ喋=しゃべ}りながら
アスファルトを、撫でてい ....
僕の部屋に友を招いて
ゆげのぼるお茶を飲みつつ
「マイナスをプラスに変える術」を
語らっていた

 どすん どすん

窓の外に、切り株の落ちるような
物音に耐え切れず
腰を上げて、外 ....
今日はわたしが生まれた日
まだ{ルビ仄暗=ほのぐら}い玄関の
ドアの隙間から
朝のひかりは射している

幸いを一つ、二つ・・・数えて
手帳の{ルビ暦=こよみ}を
ひと日ずつ埋めながら
 ....
三日前、一度だけ会った新聞記者が
病で世を去った
一年前、後輩の記者も
突然倒れて世を去っていた
彼の妻とは友達で
今朝、上野の珈琲店にいた僕は
スマートフォンでメッセージを、送信した
 ....
船は往く
昨日の港を
遠い背後に置いて

船は往く
未開の日々を
目指して

揺れ動く海の{ルビ面=おもて}を
魚のリズムで、跳ねながら

甲板に立つ旅人よ
潮風に
頬を{ル ....
人と人の間の
カキネのカベを、壊す時
遠い空で
合図の笛は鳴るだろう  
由木名緒美さんの服部 剛さんおすすめリスト(108)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
……とある蛙さんへの手紙- 服部 剛自由詩1123-11-1
或る女の瞳- 服部 剛自由詩520-1-19
純粋な時間- 服部 剛自由詩820-1-11
SPIRITの夜- 服部 剛自由詩320-1-11
聖夜の夢_- 服部 剛自由詩119-12-25
即興対話詩1_~おもろい日々へ~- 服部 剛自由詩319-11-23
蝉の声- 服部 剛自由詩319-9-25
神宮球場の夜- 服部 剛自由詩119-9-25
明日の天気- 服部 剛自由詩319-7-23
ハチの情- 服部 剛自由詩119-7-23
息子への手紙- 服部 剛自由詩1019-7-13
薔薇ノ声- 服部 剛自由詩419-5-22
石の顔- 服部 剛自由詩419-5-14
青い窓_―平成もあと二日―- 服部 剛自由詩319-5-1
十五年前の君へ- 服部 剛自由詩519-4-3
新宿駅・午前〇時- 服部 剛自由詩219-3-5
この夜が明けたら- 服部 剛自由詩319-2-9
Lyonにて- 服部 剛自由詩119-1-30
花の分身- 服部 剛自由詩219-1-29
夕方の散歩- 服部 剛自由詩419-1-3
布石- 服部 剛自由詩518-12-31
或る午後の変容- 服部 剛自由詩418-12-31
いのり- 服部 剛自由詩718-12-17
再会- 服部 剛自由詩318-12-12
石の合唱- 服部 剛自由詩218-12-7
野球少年- 服部 剛自由詩418-11-4
祝福の日に- 服部 剛自由詩318-10-31
光の欠片- 服部 剛自由詩1318-9-18
時の航路- 服部 剛自由詩218-8-16
空の声- 服部 剛自由詩518-5-26

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