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ひとつの風景の動きが
瓶に詰められてゆるやかに
はっこう、していく

風景は酵母となり詩情とざわめき
月明かりが窓から注がれて神々の手が
攪拌を始めれば乳白色の神話の海になる

言葉に ....
1 夏雨

梅雨の長雨にうたれていますのも
窓辺で黙って日々を記すものも
ガラス瓶の中で酒に浸かる青い果実も

皆んな夏でございます

あの雨のなか傘を忘れてかけてゆく
子ども、あ ....
案山子の首はぶぅらぶら
揺れているのは首だか、風だか

ちいさな呟きが繰り返されて

とうもろこし畑から風がくる
とうもろこし畑から盆の東風
だれかくる来るようにおもう

木の葉を撫 ....
丸い小窓を抜けたなら
まぁるい形になるだろか
四角い小窓を抜けたなら
しかくい形になるだろか

まぁるくしかくくなりながら
眠る赤児のくちをぬければ
どんな形になるだろか

そこにい ....
冬の立ち込める並木道は
身を縮めて、息をひそめて
葉ずれや雲を流す空の息吹きを
まとい、深い憂いに口を閉ざし
軽々に言葉を弄さない

冬よ、あなたは何を思うのか
その白き顔(かんばせ)に ....
誰もがそれとわかるように
名前をつけてみましょうか

花と名前をつけます
蜂と名前をつけます
光と名前をつけます

だけれど君がそれを指さすとき
花と戯れる蜂や蜂と戯れる花を
輝かせ ....
山の稜線が静かに燃えている
白々と、諸人の魂や神々が
頂きへと登りゆく夕まぐれ

誰もがすれ違いながら
互いに頷きあう、それも無意識に
生命が燃えている、あの山の頂きへ
向かうときではな ....
あゝ、わたしの枕元に
瑞々しい橙を置いたのはだれでしょう
橙の一つ分、ちょうど掌に一つ分の匂いが
わたしを空に誘います

いつかの夕陽からこぼれ落ちた
橙が
たわわになった
樹々の間を ....
ごぅごぅと言う風と戯れながら
花たちが散り舞いゆくのです

種子は風や鳥や虫に運ばれ
あの町で咲きこの街で咲き
それを見た人たちの心にも
花が咲き乱れ赤、青、黄、
赤、青、黄、花が咲き乱 ....
眠るひとのいない
ベッド、手摺りには水漏れが、と
書かれていて、シーツには髪の毛が
いっぽん、半ばしろい枝毛のかなしみ

もう増えないであろう
壁や箪笥の上の笑顔や
家族の群れ
灯り ....
わたしの椅子に
誰かが座っていたから
夜の浜辺に座っている

冬の日本海が
風邪をひいたように
ぐずっているから

ハーモニカを吹いてやる
いつまでも吹いてやる

なぜなぜ泣くの ....
遊び疲れたのか
母親に持たれてねむる
少年を挟んで
父親と母親が
それぞれ、編み針を手に
小さな毛糸の靴下を編んでいる
どちらが欠けても使えない
暖かい色の靴下に見えないものを
編み込 ....
くぼみがある、あなたのくぼみだ
あなたはそこにいた、ぬくもりがある
長い歳月がくぼみをつくって
その円やかなわん曲はあなたの
生のおもみだ、刺々しさの消えた
まろやかなくぼみ、あなたというく ....
小夜時雨、わたしは夜のなか
朝をしらない、昼にふれば
だれもわたしを小夜時雨と
よびはしないから、涙もない

夜の静寂を細いゆびでたたく
あの窓明かりからのぞくひと
あなたがわたしをわす ....
季節外れの薔薇をみた
薔薇を吸えば棘にひりつき
裂けた咽喉に根を張り、歌う

あぁ、私は美しさ故に人を傷つけても
こうして許されています

(なんて傲慢……)

咳は止まず、薔薇を吸 ....
Dance!Dance!Dance!

押し寄せる刺激的なメッセージに
いつの間にやら頭は痺れ
我を忘れ礼を忘れ時を忘れ
忘れた事も忘れ忘れ忘れて
誰もが誰かに踊らされてる
君も僕も踊っ ....
餌をつけた針をゆらり
次の瞬間に竿はしなり針は
川面に静かに滑り込む

じいちゃんのとなりに座ってぼくはみていた
それから黙って手渡された竿を手に川面を
じっ、とみつめ ....
『椅子』

もしここに椅子がなければ、
自分だけ
椅子がなければ、
どうするだろうか?
立ち尽くすのか、床に座るのか
だれかの椅子を奪うのだろうか
それとも黙ってその場をさるのか

 ....
父さんの部屋には
美しい蝶たちがたくさん死んでいる
父さんのお好みの姿勢でピンに止められ
埋葬もされず
ひたすらあの男から愛を注がれている

父さんの部屋から
解放された死者たちが溢れ出 ....
由木名緒美さんの帆場蔵人さんおすすめリスト(19)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
風景を食む- 帆場蔵人自由詩8*20-1-20
夏の記し(三編)- 帆場蔵人自由詩719-7-15
とうもろこし畑- 帆場蔵人自由詩6*19-5-10
風、風、風よ- 帆場蔵人自由詩12*19-3-30
白き顔- 帆場蔵人自由詩319-2-15
沈黙のなかで- 帆場蔵人自由詩18*19-2-14
稜線- 帆場蔵人自由詩319-2-11
- 帆場蔵人自由詩519-2-9
春想歌曲- 帆場蔵人自由詩419-2-9
無題- 帆場蔵人自由詩519-1-21
行き場のない夜に- 帆場蔵人自由詩419-1-21
駅の待合室- 帆場蔵人自由詩419-1-7
くぼみ- 帆場蔵人自由詩519-1-4
小夜時雨たたずむ夜に- 帆場蔵人自由詩419-1-1
わたしに咲く薔薇- 帆場蔵人自由詩6*18-12-19
Dance!Dance!Dance!- 帆場蔵人自由詩318-12-18
村の記憶- 帆場蔵人自由詩418-12-14
椅子のいる風景- 帆場蔵人自由詩7*18-12-12
標本に溺れ- 帆場蔵人自由詩718-11-22

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