足りないから 足してゆく
多すぎるから 引いてゆく
どちらがたやすくできるか
知っているかと
こどもたちに質問をしたら
本気の二者択一が返ってくる
ただの思いつきクイズなんだけど
....
いじめられてる少年を見た
町の外れのバス停で つい
途中なのに 降りてしまった
いじめている少年を見た
まだ、間に合う
直感したから 手に握らせた
キャンディーだった
キャラメルやチ ....
団欒の横
座椅子に座り
静かにみかんを剥いている
今日どこかへ出かけたことも
娘の顔も
忘れたよと笑う
テレビの映像は意味を失くし
新聞は取りに行くだけの紙になり
積み重ね ....
僕がいくら部屋に閉じこもって
この部屋の空気を濁したって
窓を開けた先の空気は澄んでいる
そういうものだよね
いくら夏の砂つぶを挟んだままのサンダルを
玄関に置いていたって
誰も僕を連れ出 ....
僕は知っている
満月の夜
梟の声響く夜半過ぎに
一の社の榧の古木は
封じられた記憶、取り戻し
社裏の小さな瀬に
小さく泡立つ冷たい流れに
月の光は毀れ落ちては千々 ....
指ひとつ夜に融かして冬ひとつ
迷う背に涙の匂う二月かな
種火から双つの声と双つの葉
冬あおぐ二十三時の命かな
戸惑えば戸惑う ....
始まる前は 長いなぁと
おもっていても
いつのまにか 千秋楽が
来てしまう
十五日間の大相撲場所
そうだ そうな ....
2016年3月21の吹雪
対
マイルス・デイビス
「Bye Bye Blackbird」
コーヒーの湯気と
古いポートレート
中心を射抜 ....
ぼくはまどろみのなかで詩を書いている
このまどろみが好きだ
世界が落ち着く夜に書く
詩は別の世界へといざなってくれる
ニートでも書くことができるのだ
情念を言葉に
ありえないほどの ....
一日の仕事を終えて
帰った家のソファに、坐る。
ママは台所に立っている。
人より染色体の一本多い、周は
パパが足を広げた間に
ちっちゃい{ルビ胡坐=あぐら}をかいて
「おかあさんといっ ....
世界からはじきだされた
社会不適合者
ぼくは詩を書くことしか能がなくなった
身勝手なものだ
強迫神経症はいつまでもどこまでもおいかけてくる
実存性のないぼくはどこどこへいけばいいのだ
珠を数えている。
腕に通された木目の珠を。
祖母が亡くなったとき
父が握っていた大粒の珠を、
父が四角い小さな石塔になったとき
母の手首に引っ掛かった数珠の珠を、
数えている。
....
誰かのことを、おもいやったりなんかしたことは
あるよ 人に
やさしくなんかしたことも
あるよいつもそうだったような
気もする いや
いや やっぱりそうだそうだったいつも
人にやさしくしてい ....
近づくこと
遠ざかること
暗い
音節の
蝶番
止まることを拒む
海の裾のドレープ
駆けあがる白い泡
絶えまなく
描き直され
拒みながら ....
ここから
線香花火のように見えます
あの日
あなたが燃やした命
このまま
つづくわけがないと思う日々が
案の定
抜け落ちた日々
日々から日々が抜け落ちた日々は
日に日に遠くな ....
ベッドからそっと抜け出し
サプライズを兼ねて
朝食の準備に取りかかる
ベーコンを焼きながら
野菜を並べて
おっと
コーヒーを蒸らさないと……
やがて物音に気づき
目をこすりなが ....
愛してるって
言うよ
何ひとつも
差し出してはあげられないっていうのに
限られた時間の中で
苦しくてたまらない
ぼくにできることは
詩を書くことだけだ
ひやりとした現実
夢のまどろみのなかで
考察を繰り返すしかない
詩を殴り書きするしかない
こころにメスを入れる
存在の耐 ....
空を渡る種の帯の下
あなたは何故暗い笑みを浮かべているのか
原のなかで
明るい風のなかで
無数の角と無数の羽が争い
多くが失われ多くが生まれた
双つの光が向かい ....
桜吹雪の舞うのは
春のみか――?
否、人々は気づかぬだけ。
目を凝らせば
宇宙永劫二度と無い
今日という日の花びらが
ほら、目の前に透けて
ひらひらと
能面被って
声を、殺して
あえて明るい色彩の着物を身に纏い
たとえそれが千年昔の恋物語であり
源氏に捕らわれた{ルビ重衡=しげひら}が、死刑へ歩む
前夜の密やかな宴だとしても
透け ....
アブラナの
花が咲き乱れ
その
黄色い雲の上を
黄色い蝶が力強く羽ばたき
黄色い雲の上を
蜂達は
せわしく動き回り
これが
春でなくてなんであろう
これが
....
急いで!
学校に遅刻しちゃうよ
今日はどうしたんだろう
自転車がパンクしたのかな
息を切らし
落ち葉をけって走る君
でもスカートが飛び跳ねて
僕は真っ赤になっちゃうよ
....
※
その痕のことは、
何も知らない
水たまりを、
陽気なアメンボが通りすぎたあとのことは、何も……
みずうみに、
きみが爪先でたてた水の音も、
寝転んで何かを囓ったり、口のかなで ....
*
「虚写ノ残像」
乾いた砂に二つの異なる影
少しずつ洗われた息使いを覗きこむ
無数にある偶然の中
鎖されたまま迸り出る感情を味わう舌
互いを睦まじく絡ませ合い
怠惰 ....
生き甲斐を持てた人以外
人生は暇潰しでしかないのか
暇潰しに生き甲斐を
見つけるのが人生なのか
銀鮭の
苔かおる底を、
小河らの肌がすべる 春という時に
生きることができてよかった
灰色の水に 憶えている
歌の果てに燻る 哀しみの螢火
耀 ....
山口くんが木になった
あれは小学生の頃だった
木にも命があると
彼は言った
山口くんの木は
どんどん空に伸びて
校庭の
イチョウの木よりも高くなった
あれから彼に会っていない
....
ミサイルが飛んで落ちてまた昇るまでのあいだ、
くだらない冗談をひとつずつ言いあって
河原の小石をうめるようにしていた
川釣りのおじさんが面倒くさそうに餌を投げてくれる
もしかしたら彼もみか ....
土手の手つかずの雪が老いて
カラスがなにやら啄んでいる
穏やかな冷気に衣服の戸惑い
惜しめば儚く望めば遠く声は
なにも残さないただ揺らした
言葉が追う死者を追うように
セー ....
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