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フラットしたまま
夕暮れていく
音楽室からは
いつも
音のない
演奏会
放課後に
わたしたちは
どうしようも
ないほどに
透明で
同時に
不器用な
温度で
つま弾いてい ....
たまに
思い出す
ふと
きみのゆびさきの
深爪のやさしさ
買い物帰りの
坂道や線路沿い
二番目の
小さな交差点
そんな場所に
沸き立つ
やさしさ
ひらがなを
好むきみ ....
夜を走る
列車から覗く風景は
何もかも止まっているようで
少しばかり
眠ってしまっても
あしたには
間にあいそうだったから
夜を走る
光の羅列は
枕元を通り過ぎて
ずっと知らな ....
夜が
明けないうちに
こっそりと
地平から
覗いてみたよ
旅立ちの日
に
君の食べられる野菜
食べられない野菜
を知ってたのに
僕との距離を
知らない
やがて
そんな ....
夜が
更けていくと
ほつほつと
灯る
微熱の痛み
37.2度の
隙間から
零れる昨日
裏返る
あした
だから
つまり
なにもないのさ
首筋に
うっすらと汗
瞼の裏 ....
夜中
水道から
ぱたぱたとなみだ
海になんか辿りつかないのに
机の上で
しまい忘れたサラダが
哀しい彩りで居場所をなくしてる
きれいに一人分だけ残して
あたたかみをなくしたイスが
部 ....
午後から雨
そうだね
草丈より少しばかり高いだけだよ
寝転んで空を覗けば
透き通ってくどこまでもずっと
背中がくすぐった痛いね
午後から雨だね
蟻が不器用な列を作って
ゆっくりと夏 ....
たとえば
水銀の
体温計の
危うさだよ
それは
けだるさの
端っこで
かすかに
午後の授業
先生
砂時計が
ぜんぶ
落ちたら
眠ります
少し
似ている
前髪 ....
ずっと
遠くに
行ってしまった
くじらの
足音
どこに
ずっと
北の方に
どうせなら
満天の夜が
いいね
少しずつ
舵をとりながら
長い旅だね
くじら
しっぽ ....
おとといの
夕暮れかけた空
君は
夏の底に
沈殿していったきり
西の夕焼けが
音をたてて色あせていく
手のひらの温度を確かめたくて
軽く握ってみても
汗ばんだ夏の終わり
いつだって ....
{引用=木の芽を幾つ数えた頃に
木の芽を幾つ摘んだ日に
想い晴れないこの空で
幾度の晩を越したのか
ひとつ小さな結びの手
時には木漏れ日うたたね木
姿変われど弓張り月の
野原 ....
雨の夜に雨宿り
海の底にいた頃を思い出すと
今でも胸がぎゅっとする
引き潮の晩
こっそりと寝床を抜け出して
海岸線で眺める淡い月
明くる晩も明くる晩も
私段々と海から遠ざかっ ....
郵便受けに
さくらの花びら
淡い水色の
小さな便箋
ゆううつの波に飲まれそうな朝のこと
春はまだ見えない
思えば今年の冬はいつもより少し長い
便箋の封を切ると
中からか ....
先生、誰も来ない放課後です
理科室は薬品の匂い
閉められた
暗幕の心地良い温度
埃が泳いでいきます
気だるい午後です、先生
魚になるにはどうしたらいいですか
答えの出ない ....
夜になりきれない
うすむらさきの空
段々模様の
やさしい音色
坂道を
駆け足でころがる夕日
向かいには海
やがて落ちると
明日のために蒸発していく
町外れの工場から沸 ....
あなたがいつまでも
空の切れ端と手を繋いで眠るものだから
私は枕元でやわらかい髪を撫でるしかない
頬を寄せれば懐かしい夏の匂い
あなたの瞳の色と
私の夜の海のような色はよく似ている
....
粉挽きの風車の家
屋根裏で
ほこりまみれの古い本を読んで
知らない国の知らない言葉を見つけては
お父さんに読み方を教えてもらう少女
小さな窓から覗く世界は
どこまでも草原で
ためしに口笛 ....
終電が過ぎて真夜中
ひとりきり家路を辿れば
無音ばかりがこだましてやるせない
呼吸をするたびに白い息は空に溶けていくのに
うまく言葉にできない気持ちは
もやがかかったまま解けてはくれない ....
車窓から眺める景色は
ゆっくりとスピードをあげながら
めまぐるしく通り過ぎていく
あの夏が加速するのと同じように
このまま行けば海に出る
何の脈絡もないまま
手ぶらで電車を乗り継い ....
真夜中
のどの乾きに目を覚ましコップの水を飲み干すと
小さな波音が聴こえて不安定になる
部屋の隅で水槽は
溺れそうなほど満水で
薄いガラスを軽く叩くと
魚は眠るのを忘れてため息によ ....
やさしいけもの
おんなじ日に生まれて
いつでも一緒
やさしいけものは
決して箱の中から出してはいけない
それが母親との
唯一の約束であったし
幼いわたしは
約束の文字が
なんだか ....
「あ」と声に出そうとして
うまく発音できなかったそんな目覚め
冬はもうすぐ終わるというのに
まだ春は土の中であたたかな夢を見ている
喉が掠れて泣いているみたいだ
裏返って仕方ない。
空はな ....
{引用=今夜は
月もちょうど半分の明るさで
なんて幻想的な夜なのでしょう
今夜は
月も森の木の天辺に腰掛けて
なんて素敵なお客様なのでしょう
丘の上から眠る町を一望して深呼吸
物 ....
夕日の丘で
お母さんとお父さんと
それからおんなのこがひとり
小さな家で暮らしている
夜はみんな一緒くたに寝転がる
ほんとに小さな家だったから、
(だけど、お菓子の家みたいにかわいらしい) ....
ハロー、グッバイ
まわる世界
君の手のひら
夕暮れてく空に
まどろんでいても
昨日の続きなんてどこにもない
意識が遠のきそうなほどの
鮮やかなオレンジ
それでもうまく
あの空の青さに ....
{引用=しん
と張りつめた空気の隙間から小さく 雪ふるる}
氷点下の朝
白樺の並木道
枝の間から差し込むあたたかさ
昨日の凍てつきなんて
思い出すことなく
鳥たちのさえず ....
まためぐる季節に
埋もれてくしろいまち
夜が来るたびに
暗がりの向こうから
沈黙を引き連れて降る白
霜焼けの幼い手のひら
目が眩むような世界に
迷い込んでしまわないよう伸ばす手
誰 ....
私の町
海辺の港町
夢うつつに波音で目覚めて
窓を開ければ
かすかな潮の香り
胸いっぱいに深呼吸して
優しい海で満たして
一日が始まる
私の家
高台の一軒家
階段を下りると
....
君の寝ている隙に
本を開いてしまったよ
手のひらと同じくらいの大きさの
くたびれた表紙
真ん中より後に挟まれた栞
海の色をしている
波の音が聞こえそうで
耳を澄ませば
君の静かな寝息
....
うたたね ひつじたち
はる の あったかさ
ひるさがりに
まくらのしたから うまれて
ばんごはんのじかんに
また かえってくる
みどりのにおいの かぜに のって
ふうけいを ....
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