【椿】
花嫁の紅を着飾って
貴方を待っているのです
この純潔が叶わぬならば
首を落として
夢に果てましょう
【水仙】
明後日の方向を見ているのは
白いうなじを見せるため ....
雪の降った夕暮れ
すっかり冷え込んだ空気の中で
黒いコートのポケットに手を入れると
黒い皮製の手帳にいきあたりました
そう
全てはこの手帳が始まりでした
死神の僕にとっては ....
路地でしくしく泣いてる人がいた
黒いマントに身を包んだ
綺麗な銀色の髪をした人だった
気になったので声をかけてみたら
彼は自分を魔王と名乗った
私は魔王を家へと招待した
縁側に座らせて ....
“その名前で呼ばないで下さい”
“約束ですよ”
昔の夢から目をさますと
見なれた白い天井が水晶体に写りました
ベットから見える空の色は群青色に染まっています
いつのまにか眠って
....
“眼鏡の度があってませんよ”
俺には死神のじぃちゃんがいる
母さんの名付け親だ
父さんが死んでから
母さんは死神のじぃちゃんと二人暮しを始めた
俺が面倒を見ようかとも言った ....
君が好き。
凄く好き。
めっちゃ好き。
本当に大好き。
だから好きなの。
君が好 ....
その言葉を見ると泣いてしまうから なぜか涙が出るのはなんでだろう
かなしいことがあるわけじゃなくて 難しい言葉が並んでいるわけでもなくて なぜか私はいつも涙を流している
時折、開いてみたくなる衝動 ....
“真夜中に雨が降ると良いですね”
押さえ切れない怒りの中で
死神の言葉はそれだけしか聞こえませんでした
息子が一人暮らしを始めました
あの子にも手がかからなくなって
お互いに二つ ....
“言葉にはきちんと止めを刺してあげなさい”
俺のじぃちゃんは死神だ
母さんの名付け親だから
血が繋がっているわけではないけど
昔からよく遊んでもらって今も良く遊びに行く
命がかかわる ....
“かえりみちでほたるをとってきてください”
平仮名ばかりのメールが届いたのは
電車が駅にすべりこんだ瞬間でした
アドレスは息子のものでしたが
明らかに使いなれていない平仮名と文調子 ....
“白い蛾が産まれると困るのでしばらく家を出ます”
“追伸”
“白い蛾を見ても殺してはいけませんよ”
こんな置手紙を残して
死神が家から居なくなりました
いつも一緒にいた名付け ....
“回転木馬は月夜が本番ですよ”
目の前をスキップしながら語る死神の後を
私は諦め半分で歩いていました
夏の果実は真っ赤に熟しているというのに
少し遅めのマリッジ・ブルーが私を襲っていま ....
“夜霧よ今夜も有り難う”
風呂場からのん気に聞こえてくる鼻歌を尻目に
私は部屋を出ていきました
前前から
死神の電波加減や頑固さには目を瞑って来ました
でも今回ばかりは限界です
私 ....
“朝は優しく起こしてください”
というのは
寝汚い死神のきまり文句です
名付け親の死神は寝起きが最悪です
五個の目覚ましなど死神の眠りの前では無力なので
死神を全力で蹴り起こすこ ....
伸ばした指先に触れた
温もりが薄れるたびに
寂しさが生んだ幻だと
自分に言い聞かせてた
何度目かの言い訳の後
振り返った道の向こう
通り雨に濡れた路面に
微かな足跡が続いてて
....
“電車に乗る時は”
“なるべく人の多い車両にのりなさい”
“蒼い電車に出会ってはいけませんよ”
口うるさく喚く死神を後に
私はドアを閉めました
名付け親の死神は時々どうし ....
書かれた言葉と
書かれなかった言葉を挟んで
あの日記は閉じました
喜びが込み上げてくる日には
書かれた言葉が読めるのですが
悲しみが込み上げてくる日には
書かれなかった言葉が読 ....
頼むから
触らないでください
御願いだから
触らないでください
僕の心は
もう
君への想いで
爆発しそうだから。
豆をやるから
こっちへ
来いよ、
だなんて
そんな餌には
釣られません
私は私の
信じる空へ
羽ばたくだけです
くるっぽー。
いつでも君に
会えるのだけど
まだ
会わない
今はまだ
一人で
頑張ってみたい
踏ん張ってみたい。
最初に
プラネタリウムの作り方を教えてくれたのは
祖父だった
天文学者だった祖父は
黒い画用紙と豆電球で
あっというまに
掌サイズのプラネタリウムを作った
黒い画用紙には
....
打たれ弱いのは
よくわかってる
得意な事も
なんもないけど
君のこと
捕まえて
がんじがらめに
するくらいなら
できる。
淋しいと呟いたら
きっと何もかも
消えてしまうから
後ろから
暖かく見守って
涙は
苦手なんだ。
泡を吹くまで殴られたって
譲れないものってのはある
自分の殻に閉じこもっても
プライドは残ってる
でも、もちろん
生きてることを
大事にしてる
何万年だって。
なんだかだるいのは
背中に大きな悩みがあるから
いつかつぼみをつけて
大きく、花開くまで
まだ、夢は捨てない。
その ピカチュウに
俺の 名前 つけてよって
言葉を聞いて
ピカチュウ に ゲンキ って
名前
つけてる人
ああ、なんだろう
この空気 好きかもしれない。
....
また『薬指』を拾った
今月で3本目だ
白く細い
白魚のような指に
上品なシルバーのリングが
しゃん、と通してある
今まで拾った中で
一番美しい薬指だった
いつものように
....
“夜に抱きしめられてはいけませんよ”
というのは
死神の口癖です
死神は
私の名付け親です
両親を無くした今
一緒にくらしています
命にかかわる問題以外は
かなりアバウトな ....
明け方に
貴方様の
その
乱れた
長い黒髪を
結い上げるのが
私のお仕事でございました
脱色も
染色も無い
真っ黒な
艶やかな
濡羽色の御髪に
{ル ....
真夜中
雪の解ける音で
目が覚めた
窓を開けると
まだ小さな
『春』が
窓枠に腰掛けて
せっせと雪を食べていた
時々
喉に詰まらせて
せき込むので
背中をさすりな ....
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