すべてのおすすめ
4月に、
生まれてくる女の子(らしい)、
ぼくの子供。
名前を考える。
妻の語感を甘やかしながら、
ぼくが整えてゆくことになるのだろう。
ばんび
って可愛いよね。
ざじ
....
わたしが泣き出すと
姉は自分の手のひらにエノキさんを描いて
「もう泣きやみな」と言った
エノキさんは森の木こりだった
中学にあがったとき
両手にマニキュアを塗ってくれた
わたしは水色の ....
自分の人生を愛おしんで
ここまでつき合ってくれた
セーターの青ミックスの色を
両の腕に抱きしめる
コープのお店に並んでいた
赤ミックスも緑ミックスも
好きだったな
モールのセーター
....
私は霊だ 唐突だが気づく
年を重ねて老いてなるわけでもなく
生まれつき 霊だ
霊と肉体の合体で
動かしているのは心
じゃあ 私って誰?
肉体を授かり 名前を授かった
その負う この世 ....
まだ幼い頃
家族で夜の海へ
泳ぎに出たのだろう
若い夏草のような
家族で
私は玩具のように
小さな浅黒い生き物
だった
海もまた
生き物だと
生々しく感じたのも
それが初めて ....
(ふるる 街に
リルケが 今宵も
遠く
灯りに (ふるる
砂の十字架
闇のブーケに
光る ) 壊れたリルケが
(ふるる 白い はら
....
やまない雨
ひとりぽつんといる
すべては遠のいているし
この部屋できみという花が萎れてゆくのをじっと見ている
ふりしきる雨はやがて氷雨となって
言葉を紡いでゆく
....
新しく作られた神様を
ひび割れた背中にぶら下げて
くすんだ野道に そぞろの巡礼
通りすがりの南風から
千年前のにおいがする
中空いっぱいにひろげた彩度の
かけらだけでも ....
文化祭で焼きソバをパックに詰めていると
わき腹をちょんちょんつつかれて
そんなに親しくない人が親しい人になる
何を考えているんだろう?
私って
ビートルズにすごく詳しくなった人が
....
がんばりんさい きばりんさい
けれど ちからを ぬいてきばりんさい
どうしても 我慢ができんときは うちを おこりんさい
あんたになんもしてやれん
あんたの出すもんを うけとめて
....
地上で使った資料の多くを海の藻屑にする
書斎は浅い海の底
侵食された岩の本棚に
小さな貝が貼りつく
整理された書斎には
イソギンチャクや
蛸や珊瑚が棲みつく
海面 ....
子を宿す誇らしさと後悔を
ごちゃ混ぜて女は吐き出す
野原の上に建っている家はとてもよい紅色
とても満足
まんぞく
足デ満タサレルと読めてしまう滑稽さに
ほほえむ
想像を絶する痛みを想 ....
休んでる間に担当を変えられた
と嘆く彼女
突然だね というと
前から決まっていたらしい 一言もなく
休んでいるうちに外されたんだと激昂
おもしろくない と朝から大荒れ
だよね 嫌だねと ....
雪として残されるのは
なぜなんでしょう
花のように咲いて
ひとひらの暖かさだけにも
こぼれるしめりは
かすれていくだけなのに
白く つぶら なる
雪の香り
遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの
鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営み ....
風をたべていた鳥は
夢をたべはじめるようになってから ずっと
お腹をすかせ
風は
その鳥をたべたせいで
空を吹けずに
地を這うようになった
たくさんの綻びた男たちと
肌をあわせてき ....
部屋にあった服のいくつかは
わたしに合わないものでした
一番うえの兄のことを
二番目の兄が幾度も
同じように語るのを
わたしたちは
雪の音をききながら
気にしました ....
「行かないで」
遠くで聞こえた気がした17時55分
あまりに寒い夕方には
温かい缶コーヒーに手が伸びてしまう
一時的なぬくもりを
誰もが求めてしまう
コンビ ....
見えない塔のてっぺんから
見えない鐘の鳴る音がする
見えない塔には見えない人が住んでおり
少しのふこうと
少しのしあわせを
味わった
見えない塔には見えない鳥が飛んできて
よい声 ....
直球だけを
生きる君と
直球しか
知らない俺とが
やっと
いっしょに
なった時
変化球が
生まれる
とおく どこからか 風のなきごえがきこえる
今日 ぼくらの小さな家で 象が 溺れそうに
泳いでいる
厳寒の朝だ。
ぼくらは
今日も
すべてのオムツを
捨てた。
氷結する
....
ひと みな ひとり
ひとみな ひとり
ひとみなひとり
青空にいる
強く高みを掴んだ
脚に力を射して
秒速の息づかいを届けた
筋肉の震え
ハチドリの余韻
ふたごの虹
高音域を続けたのち
からだをつらぬく絹糸
歌はすべて感情から生まれ
歌はすべてあ ....
あ が揺らいでいる
あなたの ○だ
あ は 風かも
しれない
あ が涙流している
あなたの △だ
あ は いつだって あ
であるし ....
笑うと金語楼になると
細くなった母の目を
指さしながら父が笑う
明るいさざ波が立って
子どもたちの顔まで
福笑いの目になる
母が笑う日は少ないが
その笑顔はぼくの
胸の引き出しにある
....
ぎゅっと
からだじゅうをにぎりしめてまるまった
てのひらのつめあと
ああ、と、
目を閉じて、夜
心臓の音の数でなにかとの距離を測り
火を吹き消すようにして忘れていく
見えたも ....
小刻みに刻むチョコレート
ロンサム・ジョージのために
部活をさぼってクローバーをちぎる
きみのためだよ
小学生向け科学雑誌がなくなってひさしいね
ちいさなピンホールカメラを
覚えて ....
二十歳の誕生日も近づき
お祝いに赤飯を炊いたというから
おすそ分けを貰いに寄った
買物のついでにお菓子類など買って
ちょっとお祝い気分
日曜日で車庫に車がない
ああ 遊びに行ったのね
....
傘のベランダから見る
雨のとんとん
ポケットにはビスケットおじさん
割れたりしけったり
自転車タイヤの螺旋階段を
のぼっていけば虹
ストロートンネルを抜ければ
サイダーのくす ....
大柄な夜が行ったり来たりして
目にうるさいわ
と姫が言う
夜は地球の影だと
どこかの王子が教えてくれた
ならなぜあんなに行ったりきたりするの
小さな頃はよかった
やわらかいお湯に ....
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