「あー」

横になっているだけで
教えてくれるTVの言葉たち


「いー」

息を大きく吸って
誉める言葉を探している


「うー」

あまりに苦しすぎて
う、う、う ....
 
 
涙は流れ続けた
僕らの頬や
そうでないところを
やがて涙が川になると
一人の少年を飲み込んだ
凍える夜の川底から
母さんを呼び続けていた
僕らの知らないところから
悲しいニ ....
 
 
機械の少年は
機械の少女に会った
機械のように恋をして
装置のように結婚して
遠く秋の空を眺めると
肌が乾いて懐かしい
あれは春だったのだ
二人はそう思うと
子供が一人
 ....
 
 
健康診断の結果
肺に小さな影がありますと書かれていた
早く再検査に行きたかったけど
仕事も忙しくて
時々そのことを思い出しては忘れ
思い出すと泣きたくなる夜もあった
実際泣いた ....
とおい秋に
実るものはなんだろう
わたしが実家の門を通るときに
ふと、かいだ
祖父が築いてきた
歴史のにおい
短いとも長いともつかない


毎朝はやく
仏壇に水をあげる、祖父
 ....
身を粉にして働く
マメねー!
と言われる。
そうですマメですよ。

愛をばら撒く
皆が可愛い
皆の{ルビ僕=しもべ}
皆の足を洗う

命を大切に
命を平等に
命に責任を
命に ....
もくもくと
床磨き

とんとんと
整理整頓

掃除を
したのに

てんてんと
足跡が付き
まいにちが

わかりやすいしあわせに

みちた日々であれば

ぼくらはそれを

しあわせと呼ぶのだろうか


春のかおりが

夜にひびいている

ぼくらは

さびしく ....
張り詰めたラップを着て
新しいキャベツが店頭に
テカテカと並んでいる

両手に乗せて天秤になるひと時に
良いキャベツは感覚で選ばれる

冷蔵庫で
一枚ずつ身包みを剥がされるのを待つ間に ....
えんぴつの先をねぶると
木のぬくもりと
黒鉛のつめたさ


三寒四温だよ、と
町角ですれちがった
親子の会話が
耳に残る


繊維に染みわたっていくのは
甘みではなく、
苦み ....
灰色のクレヨンひとつをにぎりしめ
まっしろな画用紙をくまなく灰に
塗りつぶしていたチビなぼくを
えんちょう先生は庭に呼んで
「ほらよくごらん 地面はね
灰色じゃないだろう? ちゃいろかな?
 ....
 
布団の中から
黄色い豆電球を
ぼんやりと見つめてるのが好きだった

とても無機質で物静かな
豆電球と向かい合って
顔のない人と対話してるような
自分の顔をを見つめているような
そ ....
 
たかのり君
と呼んでしまった
生姜焼き定食のことを

もちろん
たかのり君が
生姜焼き定食であるはずはなく
けれども
一度そう呼んでしまえば
そのようにも思えてきて
こんがり ....
  

ぼくのはじっこは
とりあえず社会に結わえてある

ときどき
なにかを思い出して
するりとほどける

そのはじっこが
君のはじっこに絡まることは
もうないのにね

とき ....
あの上り電車で何本見送ったことになるのだろう
別に数えている訳では無いし
有り余った時間を費やせればとストールの毛玉など毟りながら
外界と隔絶された待合室の硬いベンチに腰掛け
あの夜の顛末でも ....
手のひらと手のひらを合わせて
ぎゅうと押しつければ
肉と骨の二枚貝から肉と骨の枝が飛び出して
醜くてたまらない私が客観的に見える


大丈夫だろうか、まだ平気だろうか
酸性雨でたましいは ....
 
 
石積みの朝
陸橋はその歪んだ影を
路面に落とし
昨日までの工程を語り終えると
あなたは静かに
最後の生理を迎えるのだった
 
+
 
足音が擦り切れていく
あなたにとっ ....
飛騨小坂に
帰りました。

小坂川を
見に
行ってきます。

翡翠色の川
ほとばしる
瀬と

真っ黒い
たゆたう


そこに
身を投げます。
私は
川の中で
暮 ....
 
あなたはセーラー服であらわれた
わたしも学生服であらわれた
もう高校生ではなかったけれど
二人は約束の場所にいた

店にいた高校生が
みるみる生まれたばかりの子供になって
お父さん ....
電車が
夜になると光るのは
恋をしているからよ

夜の街を
急ぐように駆け抜ける列車の
まっすぐな光の筋

あのカタブツが
淡く夜光するさまは
なんともいじらしい

だから ....
 
小指をにぎる
強くて
弱い力で

たしかに
そこにいる

母さんの
子でよかったと
思う日も来るだろう
君にも

けれども今は
ひとまず母さんに
なれたみたい
よか ....


恋にはあなたが必要だ
あなたは僕を和ませる
愛にはあなたがかかせない
あなたのために僕は苦しむ




あなたがいくつ歳を重ねようと
ぼくはあなたの若い歳しか覚えてい ....
二人の時間をはかるために
砂時計がほしい
と、君がいうので

硝子の器に閉じ込める砂を探し
砂丘に鳴き砂を求めてみたけど
どの砂もしょっぱく湿っていて
完成しないのです、砂時計は

 ....
心地よく 温かく 暖かく

ああ 遠赤外線よ もっと 僕らを温めておくれ

遠赤外線よ 遠赤外線よ 僕らを温めておくれ

燃やしておくれ 鳴いておくれ
僕らを清めておくれ

じんわりポカポカ
じんわり ....
 
お見舞いにいくと
ベッドと見まちがえるほど
平らになっていて
痩せていた
祖母と手をにぎりあって
見つめあっていた

帰り際に
手をふった
なるべく笑顔で
いつものように
 ....
風を辿ってみれば
春はいまだ遠い
待っているのかもしれない
病室にいる母に
思いを巡らす
どんな風景を、この雪
窓から静かに
眺めているのだろう

病を患って永い
爪の先からこぼれ ....
   冬

新緑の匂いなど知らない
今は深く眠るだけだという

獣たちの叫び声を閉じ込め
風の白い息だけが聞こえてくる

妖精のように踊っていた水
山々に見つめられても
厚い衣の下 ....
 
さよならは
しずかに
すぎてゆくから
せなかを
そっとおしてほしい

そんな
さしすせそが言えなくて
ふたりは
せなかを
むけたたまま

あいしてる
いまも
うたうよ ....
たまたま日本人だった
たまたま男だった
たまたま右利で
たまたま魚座だった
たまたまA型で
たまたま佐賀の生まれ
たまたま親が離婚して
たまたま結婚が遅れた

たまたまイスラエル人で ....
 
裏木戸が
閉じたり開いたり
冬の言葉で話してる

積もる
雪の音以外
何も聞こえない
意味の欠片さえ

さくさくと
家に帰る足音が
遠くからやってくる
もっと遠い
何処 ....
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