遠い呼び声/冬    月夜見・乱太郎
乱太郎

   冬

新緑の匂いなど知らない
今は深く眠るだけだという

獣たちの叫び声を閉じ込め
風の白い息だけが聞こえてくる

妖精のように踊っていた水
山々に見つめられても
厚い衣の下に身を隠す
時折丹頂鶴が訪れ湖面で舞う

氷点下
底はどこにもない

氷のぬくもりを抱いて
夜空は澄んだ瞳で
ひとが生まれる以前の世界を映し出す

遠い異国で途切れた赤い糸

棺のなかで眠る前に目覚めさせて

君の呪文が僕を呼び覚ます

ならば
本能の赴くまま行けゆけ
吹雪は耳元で叫ぶ
北風は耳朶を赤く染め上げて
くちづけて言う

凍えたのなら
温めあえばいい
恋心が冷めたのなら
寄り添い打ち融け合えばいい

恋人たちよ
互いに見つめ合い
抱きしめ合え



導かれるままに
僕は今 君のもとへ向かう


自由詩 遠い呼び声/冬    月夜見・乱太郎 Copyright 乱太郎 2009-01-19 13:37:37
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