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その本を開くと
ガラス玉のような星がこぼれました
しみだらけの古い本です
星を見失わないために
すべての星に名前が付いていました
本にはページがなかったけれど
ページをめく ....
雨が降ると いつも
あまだれをじっと見ている
子どものままで
いまも
樋の下でふくらんで
まっすぐ地面に落ちてくる
あまだれ 一ぴき死んだ
あまだれ 二ひき死んだ
あまだれ い ....
古い家の
納戸の隅とか仏壇とかに
小さな暗やみがいっぱいあったけれど
おばあさんがいつも座っていた
土間につづく台所にも
深い暗やみがあった
その暗がりに何があったのか
覗いたことも ....
サチ子先生は
理科室でメダカを飼っている
先生の白くて細い指が水槽に触れると
メダカは狂喜して泳ぐ
メダカは十六ぴきいる
一ぴきずつに名前をつけたいの
クラスのみんなの
と先生は ....
星をひとつもらった
夜空がすこしだけ暗くなって
そのぶん
ぼくの夜が明るくなった
きみに手紙を書く
いくども書き直したので朝になった
星のことは書かない
ぼく ....
人間になったときに
長いしっぽは捨てたはずだったが
ゆうべまた失くしたので
蜥蜴になろうと決心した
体が楽になったのは
まっすぐで生きられるからだろう
背中が陽に染 ....
背中の星が重いから
飛翔しても
飛翔しても落ちる
てんとう虫の
ちいさな宇宙
野の草のように
持ち上げたものの重みに
ひとも耐えているが
あまりにも大きなものの中で
あま ....
夜ごと
小さな星から星へ
色とりどり
おはじき遊びのようでした
きいんと澄みわたった音がして
そのとき
宇宙は大きな円盤でした
まわるまわる輪廻転生
虫から花へ
花から虫 ....
膝小僧よ
なんだか久しぶりだね
そんなにきれいな顔をして
おまえもすっかり
年をとったか
崖の上や
崖の下や
いたるところ
赤い実をさがして
赤い血を流した
傷をなぞる ....
ゆうがた
ひとびとの背がかなしい
ひとびとの背を超えてゆく
魚がかなしい
水が均衡する
まずめどき
幻想の水をしなやかに
幻想の魚がおよぐ
しのびよる色が
....
追うように
追われるように
獣たちが駆け抜けていった
土手の草むら
ことし祖母は
言葉をいっぱい失ったので
体も半分になってしまったと言う
秋になって
いちめん ....