これ以上失えないっていうくらい深い夜から君は見つかる
簡単な夢を見ている 生温い浅瀬であなたが手を振っている
○「携帯トラブル」
妻「どうしてすぐ出ないのよ!」
夫「トイレだよ!」
妻「どうしてすぐ出ないのよ!」
夫「運転中だよ!」
妻「どうしてすぐ出ないのよ!」
夫「風呂だよ!」
妻「どうして ....
夜の街燈はいつも
何かを考えている
光を灯すだけでなく
決して暗いことばかり
考えているわけではない
夜の街燈の思考が閃いて
宇宙が一輪の花になる
あまりの果てしなさに
自分の孤独を感 ....
あなたしか、いないんだ
待ってください。
あなたしか、いないんです
時は、流れ、流れ、流れ、つづけ
すべては、変わる、
変わる、
変わる。
もう
ちょっと
....
コーヒーをやめて{ルビ白湯=さゆ}にす冬の朝
小春日の電車園児に満たされて
ふくよかな大根足の{ルビ娘=こ}もいいね
その音のパリッと淋し踏み落葉
シュッとして冬のゴキブリ安楽 ....
白い風が吹いて
今朝
ライトブルーの空から
なにかの声が聴こえた
空に窓ガラスがあるなら
かすかに震える声だった
昨夜の夢を忘れてしまえる
涼しくすき透る声だっ ....
緑道の奥にある図書館に向かう
調べものがあるわけではない
感想文を書くわけでもない
興味があるのは静かな空間と
そこで本と睨めっこしている人々
悪趣味の人 ....
花の種を植えようよ
そこに種があるかぎり
植えようよ
おおきな水が
うずまく火が
ようしゃない光の炸裂が
通っていったあとの
街の
そのあとの
地面を探して
土があれば
植え ....
詩の様に小花に秋の小蝶ゐて
食ふ顔も干柿に似るおばあちゃん
靴置き場{ルビ紅葉=もみぢ}もふたつ並びをり
妖精が紅葉を履いてやって来た
ぷるぷるの中に歯ごたへ橡の餅
干柿 ....
ことばは不思議だ
受け止められかたによって
深く傷ついたり
深く響いたりする
ことばは不思議だ
人によって
鋭いナイフともなり
時にはこころの拠り所にもなる
滔々と流れる川の水 ....
桜ばながおおいに散り、
けものたちの背に 描かれた
わたしは するどい雨になって
丸ノ内のビルを降っていく
記憶の 蓋に添えられた 女の髪の束
あらゆる場面の悲しみが
不変の透徹とした哀しみの
響きへと変わりゆく瞬間、
あゝ打ち付けられ心張り裂ける
あの瞬間の磔り付けにされた感覚
識る者ならば 、
それ以上を何を語れると云うの ....
中学1年の時
クラスの新聞係になって
毎月クラスの新聞を書いて
掲示板に貼っていた
新聞には毎回タイトルをつけていて
10月の新聞を書いた時
季節を表すつもりで
栗とリス
というタイト ....
いつからだろう
積み上がっていく喜びが
積み上がってしまう寂しさに
変わったのは
こころもとない
ケイケンとジッセキの上から
辺りを俯瞰できる大人なんて
いるのだろうか
今 ....
ごみ箱にポンと紙くづ冬隣
秋蝶の影消え風の軽くなる
つぶやけば淋し野菊といふ語感
うつむけば青空の色{ルビ牽牛花=けんぎうくわ}
それぞれに名の美しく秋の草
団栗のひと粒 ....
つなぐ手に夕陽の映えて赤とんぼ
ゲームにて地球を守り星月夜
野良猫の痩せたるを見て冬隣
防犯のカメラにピース菊の紋
風にまた雨音かはり破れ蓮
さつまいも料理出来ぬが生もら ....
光の矢となり走る魂、
響き迸り灼熱帯び
光の海から沸き立つ言の葉 、
何も観えぬまま魂の死を待つのか
死者たちの魂が問い掛ける
美貌のまま自らの肉を引き裂き
滝に呑まれる君 ....
鳥になりたいと言いながら
人は空を眺めている
そのテーブルにはフライドチキン
飛べる鳥と飛べない鶏と
格差社会が存在するのは
人間だけではないようだ
うつろいを風で知る
突然キンモクセイの香りが通り過ぎて
ふるさとのまちなみをおもいだす
大切な人を喪って
もう何十年と経っているのに
まだちゃんと立ち直れないの と
彼女は言った
あ ....
○「もう秋なのか」
日中はまだ暑いが
朝夕は大分涼しくなった
日が暮れるのも早くなった
日の出も遅くなった
もう秋なのか
あれだけ眠れぬ熱帯夜が続いたのに
もう秋なのか
扇風機はもうし ....
一時一時
生きて過ぎゆく最中、
水の色を突破して
透明になりゆく
この瞑目した
肉の私の意識の内に、
充満する光の凝集点
その向こうを観んと
意志し凝視するわたしに
....
暗闇から暗渠を覗くのものすべてが恐怖に等しく
その眼が吸い込 ....
あるひおもちゃをてにいれた
とてもたのしいおもちゃだった
わたしはそれでたくさんあそんだ
おもちゃばこにしまって「またこんど」
だけどべつのひには
そのおもちゃはみつからなかった
ほか ....
ほら あれが宵の明星よ
と云う貴女
、
なんて美しく青紫に躍り咲き開き
直進する時を下方から貫き通し
ただただ変転し広がり続けてゆく無限、
死 ....
どうしたら人は人に優しくなれる?
私は何に衝き動かされる?
今日と明日の間
勇気を持って為すべき事を為す
所謂
「情熱」だ
私を衝き動かすのは
もう二十五年も、黒板に向かって、数式を書いたり消したりしておりますが
おとつい、あるおひとりの数学の先生に
「田中先生、図形は、どうして反時計回りにアルファベットをふるのでしょうか。
ご存 ....
こんなにもどうして愛していましたか はばたきもせず囀りもせず
描き出すもの
愛も欲望も全部絡まっていて
──Grapevine
赤とんぼ夕陽と共に籠に入れ
虫の音やそのお姿は置いといて
名を知 ....
秋に撒いた種が花を咲かせたか
わたしは知らない
春になる前に去らなくてはいけなかったから
瓦礫のなかに
そっと咲いていたらいい
眠ると亡くなった人に会える
まだ生きているような感じで
....
層のなか小僧を憎む贈りもの
無造作な夢想の魚 群れのなか
贈りもの一層増して小僧へと
待ち惚け まぼろしの町を冒険
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