ひこばえのうた
ディレッタント

夕焼けの嘆息、きぬごし、
漏れた光を褥とし、
少年のまどろみ。

春風が、ひとしきり、
染められた、創傷のある、頬をなで、
現実を匂わす。

少年、嘆息するが、
ひらり、
こればかりはそのまま、
コエにもならない。

彼の中でたゆたうもの、
煙を真似た浮雲、
名も知らない娘の乱れ髪、
蚯蚓みたいに疼く傷、
おととい失くした腕時計、
ひらり、
最後のはなびらを渡す。

日居月諸の晩秋に、
わたしは倒れ、切り株に。

刃を振るう、青年の、右頬はしる
傷跡と、葉隠れしていた、
腕時計、
何処かに姿をくらました。

冬を越し、
抱いている蘖、
夕焼けの嘆息、真に受け、
青葉をかざす、我が子、
あゝたまさかの残前、
たまゆらの命へと。


自由詩 ひこばえのうた Copyright ディレッタント 2005-02-09 11:13:09
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