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ここではいつも
少しずつ違う絵が描かれている
だから
少しずつ違うことを忘れてしまう
垂れ流した絵の具が
しがみつくようにして
一つの記憶になる
曖昧な残像に縁取られて
一 ....
長いトンネルを抜けると
また長いトンネルだった
不思議に思って
後ろを振り返ってみても
やっぱりトンネルだった
はるか前方を見ても
やっぱりトンネルが続いていて
入り口まで戻 ....
雨には匂いがあると思った
昼下がり
蒸しあがった空気と入れかわるようにして
突然降りだした雨の
湿った冷気が部屋を満たしてゆく
「雨だ」と
呟いたかどうかはさだかではないが
そん ....
思い通りに喋れない
言葉が言葉になりきれずに
まるで蛹みたいにうずくまっている
戸惑いや迷いが
細い糸のようにからまって
いつしか自分自身を閉じ込める
繭になる
吐き出さ ....
外は雨
灰色の壁にカーテンがもたれる
裏に隠した影に「わたし」を探す
探す
見つける
爪痕のようなキズ
記憶を見つめる
何年か前に患った病
真夜中の病室は6人の病人よりも暗い
けれど ....
ため息を薄めた空気を吐き出せば
白くけむった現実が儚く揺れる
滅んでゆく世界が急激に収縮すると
必至にしがみつかなければ吸い込まれてしまう
その前に見えた
一瞬の閃光を書きとどめるた ....
赤色灯に浮かび上がる
限られた僕の価値観では
真実を見極めるには至らない
語りかける先に
響く警告の音は
ときに沈黙であったりする
しかしそこには確かに悲鳴があり
傷を受けた者の ....