滅びる海
A道化




風上に立つ冬が
耳に届くすべての海を
耳鳴りに
します


遠く
遠くに
此処には無い海が
あるとして
それは遠くの
ずっと遠くに
此処には無い海が
あるとしても


風上に立つ冬が
耳に届くすべての海を
耳鳴りに
して
どんな海も、この耳鳴りのように
ただ冷えていることだけを叫び知らせるような
耳鳴りに
して


嗚呼、遠く、遠くに、海があるとしても
冬の海の向こうに冬でない海があるとは思われず
嗚呼、それならいっそ、それならいっそ、此処に無い海など
何処にも海など無いことに、したら


冬が風上に立ち
耳鳴りが冷え切り続け
ほら、今なら
海など簡単に滅びます



2005.2.8.


自由詩 滅びる海 Copyright A道化 2005-02-08 00:08:21
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