月蝕
岡部淳太郎

神が不在の夜
その間隙をぬって
あくまでも地上的な硬い何かが
天上の淡い光を覆い隠す
その時
人びとの喉はゆっくりと絞められ
背徳の快楽に意味のない言葉が虚空にばらまかれる
昔日の絵の中で召喚された
隕石からの深い要請は却下され
新しい壊れやすい岩石を創出するために
人びとはおなじみの旅を再開する
曇り空の月曜日
恐ろしい永遠の始まり
それを高い窓から見つめる
一対の望遠鏡の眼差し
星は濡れながら次第にその光を弱めていき
宙を跳ねる者は這いつくばって混沌へと身を落とす
むしばまれた水の思いを
どこに投げれば良いのか
枠から外れた風の体力を
どこで消費すれば良いのか
僕の属性は残酷だ
何の報酬もなく
息を潜めて
次から次へと降って来る時間を
ひとつずつ丹念に殺してゆく
理由は訊かないでほしい
淋しいのだ
隠れていることが


自由詩 月蝕 Copyright 岡部淳太郎 2005-01-10 19:57:21
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