深まる 純粹無垢な真紅
滅んでは次々また育ち色付く
真紅その暗まる深み異様な威容 に、
この世界という謎
すべて含まれ在り と。
「何だ、これは。」
トラの左肩を掴むハチの目にチラッと
ずれた小袖の襟元から 見えた刺青
肩から ずりッと引き下げて
「桜吹雪の刺青とは洒落てるじゃないか。やっぱり遊び人か。」 ....
....
生(せい)の
衝動に
導かれて
五行歌を書く
よろこび
・
読書は
こころのさまざまな旅だ
出会う
こころと
こころだ
・
あ 仕方無い
これも
こころの糧 ....
青い空
白い雲
わたしは野を走る
一両の列車になって
心のすべてを
空っぽにして
空に 冴える下弦の月
雑穀問屋の屋敷の裏庭
縁側の沓脱石の傍で
浅い眠りにつく ハチ
ふと 嗅ぎなれない匂い
目を覚まし 見廻すと縁の下に
小さく動く影一つ
「誰 ....
明石
もしほ焼く海人のころものかわけどもきえかへる夜の袖におくつゆ
澪標
かずならぬみをつくせども難波潟ふしのまほどとうきよはわたる
蓬生
あきの花もかれて果てつるわが庭のまつのみ青 ....
空に冴える下弦の月
ポツン と川ぼり佇めば
水面にこぼれる 舟宿灯り
さっき 別れてきたばかりの
タマの泣き顔
浮かんで揺らぎ
男泣きする トラ
ガラリッ
....
黄色の帽子被り
時の坂道に向かい
遡り走る走る
子らの笑顔叫声、
このアパート一室
狭隘な玄関口に
はち切れ溢れ流れ
点火するこの瞬間に 、
脳髄破裂し
生誕する新たな私、 ....
何かのふりをして歩いていると、詩を書くこころが僕
のなかからふらふらと彷徨い出て来た。そいつはゆら
ゆらと漂うように移動して、道行く人たちをとおくを
見るようなぼんやりとした眼差しで見たり、空を ....
在る
だけに見える
石にも
詩(うた)がある
幾億年の
「近頃、米や油が大変高くなって皆困っているよのお…。」
「まこと、この物価高で。俺達よりイワシの方が健康状態良いのでは
ないかな。」
あぐらをかく膝に丸くなっているイワシへ
....
光の中で見えるものを見て
闇の中だけで見えるものを見て
いまそのどちらでもない
薄暗がりだからこそ見えるものを
見ている君の瞳が
葡萄のように熟れてゆく
砂時計がたてる音のように
せつないくらい小さな寝息
双生児より近くて遠い君の
魂には今生でしか触れない
血の味がする朝餉のあとで
鶴を折ってこの運命で遊ぶ
手の熱すらも知らない相棒
ぬめりほぐれぬ二頭の
一頭の方の悪魔、
アーリマン*と称されるアクマ、
感覚される物質ノ
世界次元を唯一とさせ
生命・魂も無機物質の産物とする
(肉体の誕生と共にソレ生まれ
肉体の消 ....
あたらしい夢のなかで眼醒めることができたなら
もうきみのことを懐いださなくともいられるかも知れない
でも、ひとのない13番地に立つたびにきみを懐いだす
いままで読んで来た ....
向こう岸に行ったことはない
ずっと地元で暮らしている
此処が特に好きなわけではないが、気になるほどでもない
何かを諦めた訳でもなく、ここで何かをやりたいわけでもない
なんとなく成り行きでここで ....
山脈の
雪の肌が
青空に
際立っている
痛いくらいに
・
時計は
時の地図です
今 いつにあるのか
私の一日を
見守ってくれる
・
行雲流水
という
言葉を ....
下弦の月が冴え
よく冷える晩のこと
「おい、炬燵とは豪勢じゃないか!」
浪人が、長屋の玄関の戸を開けて
迎え入れた友だちは羨ましそうに言う
煮炊きする へっついの傍
....
○「こだわり症」
「こうしなければいけない」
「ああしなければいけない」
とこだわりが強い
しかしその一方で抜けているところもある
○「人間関係」
「僕はこう考える」
というのはいい ....
冨の神を崇める教義では、
あなたの身体と魂は誰よりも清く
その清い身体のために、
毎朝オレンジジュースを飲む
また、あなたの美貌のために
幼い夢を祭壇で屠り、鮮血を啜る
既に世界は ....
これは季節感のない冷蔵庫
一定の地位を占めるドライフルーツは罪なのであります
森の中で目覚めたまま立ちつくす僕のハムストリング
....
ごめん下さい 駅員さん
―はい
文化の中心へはどう行ったらよいですか
―難しいですよね 教えますよ
助かりました 簡単だったのです、少し前まで
あのあたりに住んでいたころはよかった ....
わたしはしもべ
かしずく石角を探している
あなたは月
欠けては丸み
レイとムイの中を結ぶ
ここは静か
塞がれた霊道の人気のない洞穴が
ひゅうひゅうと現世の暖炉を廻る
あちらからしか ....
それはこれのパクリやんて続けたら
いつのまにか独り
パクリでもすがりつきたい
みかづきのはじ
新月になれば落下する
不時着し
さがしもとめた
蜃気楼から
かきならせさけべ
....
郊外の夜
白い途に独り居て、
海辺の唸る光景
ふと浮かび、
耀く光点
夜の青みに浮き上がり
白い途の先に拡がりゆく
〈だいじょうぶ、大丈夫だから進みなさい〉
澄み渡る ....
「あら、この通りじゃ見かけない顔ですね。」
近江屋の厨の隅
水桶や たらいが置かれる陰にしゃがむ
おきぬの頭上から覗きこむ おゆう
「そうだよね。今晩の連れは、ちょいと痩せ ....
今が良ければそれでいい
でもね
今は
すべてとつながっているのだ
未来の墓標とも
・
これは
墓まで持っていこう。
未来の墓は
待っている
この大切な悲しみを
・
....
小鬼は
もどってきたよ
銀河の岸から
私のここ ろに
おかえりなさい
・
ろくでなしを言う
私の悪に
小鬼があいづちを打つ
でも小鬼はこうも言う
やめときなよ
・
....
珍しい、わたしたち
口腔の匂いをさせながら
風の端っこ
挨拶をする
水平線の輪郭を越えて
乾燥した皮膚の入口と
遊園地の車線変更
家族のことになると
嘘をつく癖が
わたしたち ....
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