擬態
わずかに残された木々のふゆの葉を北風がこきざみにゆらすとき
それは小鳥のはばたきになる
家出
街角のメリーゴーランドは天使をのせてくるくるまわる
色とりどりに着飾った馬 ....
はかり知れない
暗黒の 宙に
君は浮かび
その彼方から
確かにとどく君の
燦めく 言霊
それは時に
のんびり夢みる浪の音
それは時に
欣び甘える涼 ....
仮面をつけた憂愁が舞う
着飾った歌姫と水鳥たちは歌い、
色とりどりの声を散らして
哀しみの浮かぶ透明な空を渡る
広場では巨大なパエリアが炊かれ
裸の犬と子供、朱や紫の女にふるまわれた
....
純白に
立ち現れる
アナタは誰?
優雅な笑み
その顔に浮かべ
燃え盛る黄金の
文字で記されて居る
のか、それは?
堤防が決壊すれば
すべて無に帰し
顔のまた ....
虹が出るかもしれない
大嫌いな数学の宿題もそっちのけで
雨を眺めていた 頬杖をついて
身体は確かにここにあるのに
心はどっかへ行ってしまったみたいだ
そう言えばあの日もこんな雨だった ....
ふりむけば裸のまま
眠りに落ちる月
しわひとつない空のシーツ
蒼白の
ひんやりした頬
東雲は遠く
高台から見える町並みは
靄の中から生まれたばかり
橋の上 羽音が
明けの夢の掠めて ....
ガーベラの
余りに赤い花弁の群れ
花冠を捧げ持ち
街中を疾走し始める
濃密な色彩の赤、
人の抱え持つ
存在への乾きを潤し
癒やし清めながら
前進しなさい、
魂の闇を取り ....
あと十三分でこのワークショップ小屋を出て
長雨のなか派手な帽子を被って鍼灸にゆく
何を話しても伝わらない日々である
この気持ちをどう表現しようかしら
何を貰って生きてきて 何を返そうかしら
....
夕時雨
車窓から見入る
白梅は
しっとり光りて
見返り天女
湖をめぐり
冠雪の峰
空に張りつき陽を浴びて
その中に 黄梅の真っ黄、
躍り込み散る
....
生きる方が
勇気が要るのだ
けど
もう少し
生きてみるか
宇宙の魂と
一体の
私の魂という命
こう思える
星空のもとで
闇のなかへ祈りをポンと放り込む
どこか奥のほうでぱしゃん、と水の音がする
跳ね返ってくるかすかな水音が
応えなのだろう
それを紐解いたりはしないけど
冷える夜に丸くなって眠る
....
ふと何の関連もなく
二度と関わらないはずの
あの人を思い出すことがある
忘れたい人を
思い出すことが嫌だったけど
その人がその時に自分を
思い出しているからだと
思うことにした
....
夜が来て
刺すような凍をそそぐ星
神秘めく 真冬のそらを征服する
ビルの柱の蔭で
一本の竜巻のように巻き上る
子供の愛が
大空を圧し馳ける
懐かしい愛の歌をハミン ....
姿見池には
何も映らない 別名は影見池
梅と詩文を愛惜したひとが
西へ行く路
水鏡を覗き
月に宛てて歌を呟いた
古代の風景は
異国のお伽話よりもわからない
ありもしない罪に ....
鞄の中には
ひと握りの青空と
昨日捕まえた飛行機
微かなその羽音
生きていく毎日の走り書きは
遺言のように積み上がって
夏、という言葉だけが
いつまでも
うまく書けなかった
....
こうして
踊る人形は
同じ動きでくるくる回る
いいことあった
悪いことあった
朝になって
寝不足のような顔が
ただ腫れている目が
夜の怖さが
朝も怖くて
いつかの終焉と祈りが
....
日正規雇用
時給いくら、日給いくらの
疲正規雇用
乙かれ、乙欄〇
避正規雇用
壊れた椅子の脚を支えて何年
飛正規雇用
支払調書で凧揚げ、向い風
秘正規雇用
メンバーではない、知ってた ....
自分のこころを
見失う時もある
そういう時は
自然に任せます
私という宇宙の一部を
・
今日は
元気が
出ない
こういう日もあるさと
こころの日なたぼこをする
闇に沈んだ森に
すみきって硬質な音がひびいている
呼び出しのベル
からすの巣にかかげられた黒電話
ひなはとうに巣だっていって
せつな、
忘れていった羽毛がおどる
とても軽いから
命 ....
散りおちて
生垣の茂みに燃ゆる 花びらは、
貴方への想いを馳せてピンク色
今日歩む 暗き小径の
竹灯篭
すぎさるものいとし
いつものみちよるべなく
てのうちいれた指の
すぎるもの零れぬよう
はかりにかけるちのこえ
わすれてに仕舞う
いちぢくのみの爪さき
海のうちおちてくみ
ゆうど ....
この世界の
平面直進する
時間の次元に
立体垂直の次元
貫入スルその瞬間、
どろんと昇った
下弦の月
濃密に暗む黄に
輝く巨大
死体安置所目前にした感触 を
死 ....
冬靄に
鳴き交わす水鳥の群れ
細い車道のヘッドライトを
吸いこむ ささめ雨
大通りの交叉点
如月の靄 薄れ
東へ連なる街燈のむこう
仄かなサーモンピンクの低い雲
....
冬空の蒼く凍結し
しずか独り小部屋に
打ち寄せる内なる光の波
次第ひろがる遠く奥へ
波打つ光の粒子無数無限
白銀の輝き増し揺れ躍り
内なる光景の自立し
弾む言ノ葉、力 ....
オカリナを吹くことになった
メロディで三曲
選曲はわたしの自由だったが
オカリナは音域が狭いので
吹ける曲はそう多くない
「翼をください」と
「たんぽぽ」と
「昴」を吹くことにした
....
青銀色の
光る
風に
吹かれつつ
ここで生きる私
・
名の無い鳥を
見送る
名の無い私の
名の無い気持ちが
芽を出す朝焼けへ
固く結んだ唇を
解く時が来た
まだやりたいことがある
諦めないで夢を見た
何度目の朝でも
バターを塗るように
目標の四隅に
春という風呂敷を広げて
もう一度だけ飛びたい
柔ら ....
猫も杓子も
上から下に水が流れるのに問いも答えもない
食べて、排泄し、寝て、育ち、全うする
何処に産まれようが
何処で死のうが
自他画像
まず、目の前に別の顔が合って
....
なんにもない
ひろがり
ほんのりあからみ
そまりいく
磔刑の無力耐え忍び
呪言を読み聴かす
置き去りにされた夜に
〈向こう岸が見えるかい?〉
と、 ....
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