生きていくこと
空箱の庭
蝉の抜け殻の残響の続き
風に揺れる透明なブランコの隣で
ほんの少し匂いがした
嘘みたいに
あなたに触れたかった
「ぼくは無力だよ」
とあなたは言ったので
「どうしてあなたは無力なの」
と私は聞いた。すると
見ているうちに、あなたは手のひらに乗る位に小さくなって
青白く光る星になった
自分の弱さを
....
心は揺れる。いつも頼りなくて、大嫌いだ。心。
心のことを書いている。
ちりちりとした火に焼かれる日々のことを思う。関わったり、失ったり、人として生きることの苦しさと、辛さと、そのたびに乱れ ....
僕は泣いていた
世界が僕に厳しくて
その時、君に出会った
嬉しかった
でも君が急に
僕に冷たくなった
なんで?と聞きたかった
他に好きな人できたの?
君の気持ちが分からない ....
まだ来ぬ明日の光景
描くことができずに
布団に沈んでゆく
何度も目覚めて
夜の長さ
静けさに
孤独がピン留めされて
寝返り寝返り
消極的に待つ朝
今は
二度とは無い
同じことでも
同じことではない
いつも初めての今
私は一人だが
独りではない
しかし独りだ
「あ」と言って
「あ」とならないからさ
花火と雲と風と影
梅雨明けに久しぶりのあまたの星、満月の夜
部屋の割に大きな柱時計は
間違いのない《とき》を刻んでいるのか?
それともただ文字盤を
針が三本移動してい ....
残らず文字が飛び去った詩集を開いて
男は夢を見ている
白紙の上に万象を結び付けていたものがなんであったのか
ことばという記号はうさん臭かったけれど今はむしろ生臭くさえ感じている
実体験も夢 ....
○「疲れ」
年寄りの疲れは
後から来るといわれる
だから調子に乗ってやると
大変である
○「批評家」
世の中のことを悪くいう人の大部分は
悪く言う資格のない人が多いらしい
○「 ....
地平線の彼方まで丸焼けだった
瓦礫と錆びたトタンで作った
家族でさえ疑って暮らすバラックで
卓袱台に載った、芋粥と悲しみ
ヤンキーに{ルビ集=たか}ってチョコをせしめた
空地で捕まえた飛 ....
夏にだけあらわれる
小径の奥に
ひっそりとした場所
そこにやわらかな墓標がひとつ
あたりを囲む緑のざわめきの中に
なぜかいつも感じる
揺籃の気配
その中には多分 壊れた玩具の ....
空にさしだした手のひら
つきさしていく日のひかりで細胞が痛い
夏のひとはみな発熱し
アイスクリームはみるみる溶ける
蟻がやってくるまえに
きのうのできごとは蒸発してしまう
会いたいひとがい ....
喉滑る夜半の冷茶
温くなった保冷枕を取り替えて
寝間へ戻れば 扇風機の寂風が、
モザイクかかる途切れた夢の
あなたを白い紙屑にした
光りを失った灰色の瞳たちには
それだからなおさらに美しくみえて
むかしながく住んでいた街みたいに
想い出がゴロゴロと転がってる感じで
僕にはその大きめなガラクタが
手 ....
考えてみてください
他人の詩とか
まず読まない
じゃ、僕の詩も読まれませんねぇ
そうだねぇ
そんなことないよ
僕、他人の詩、読みまくってるよ
目が滑っているが
唯我独尊の宇 ....
坂
線路
燃える月
見下ろす街に
光る桃
動かない月に照らされて
キュウと心が締め付けられて
勝つために何かを探す
文字を追う
塩と釜
暖か ....
時間は降り続ける針の雨だ、すべてが的確に俺を貫いては床を鳴らして消える、概念的な血みどろ、底無し沼に踏み入ったかのように身動きもままならない、それは痛みには思えなかった、それは傷とも思えなかった、 ....
持って生まれた器
雨が降ると
すぐに溢れてしまう
ずっと頑張ってる
自分より仲間のこと
上手くいかないこと
責任は私にある
すみません、すみません
だからすまない
....
人知れず
あなたと私の
さまざまな
感覚がある
いつも初めましての
・
鬼やんまは
林の陰を
すぅっと
とおりすぎていった
魂を乗せて
・
心地好い
風に
....
narrata refero.
私は語られたることを再び語る。
(『 ギリシア・ラテン引用語辭典』)
熊がかわいそうな人間を食うのなら、なおさら人間が熊を食ったっていいではないか。
(ペ ....
「熱っ!」
熱湯の入ったコップをぶちまけながら
何なの? この成績は!
また順位が下がってるじゃない!
勉強してるふりして
くだらない漫画でも読み腐ってたんだろう!
「ごめんなさい、読んで ....
○「身近な生の自然」
鳥のさえずり
風の音
虫の声
犬猫山羊の鳴き声
空の色
雲の形
小川のせせらぎ
草花の色
木の繁り
野菜や稲の育ち具合
山の匂い
身近な生の自然へ目を向け ....
世界が 平和で あることを
むろん みんなが 祈るとき
そんなに 長くは ない夕べ
赤い 夕陽が 沈むとき
悲しみ なんて なくなれと
じぶんに 向かい 祈ります ....
夜の窓辺 畳の上にひろがる
うすあおい布のような光りを
手のひらで受け
撫でて 六月の風はさわれた
ひとりの夜が普通だったころ
ひと粒ひと粒の波をむすんで ほどいて
千切って 噛んで ....
気温は三十度を越えた午前九時
父は誰にも告げず、徒歩で家を出た
まっすぐな国道を四キロも歩いた末
暑さのせいか、何かに躓いたのか、転倒した
通りがかった人や周辺の住民が介抱してくれ、
一 ....
夏は夜
涼しげな空気の回廊を歩いていく
百個の風鈴がピンク色に染まって揺らめいている
猫が足元に擦り寄ってきて
パロサントの香りが風に乗って流れてくる
宇宙人は私達のことで
本当は魔法 ....
被せ取り込まれるような
ましろい泡に目を奪われる
その姿は優しさ こわさ
はるか遠いのは分かっているのに
手をのばしたくなるのはなぜだろう
誰かが扉を叩くのが怖い
締め切って
薄暗い部屋に根を張る
眠る度に見る夢は
誰にも見せられない私
目は腫れて
湿った毛布を手放せない
黒い枝葉ばかりが育ってゆく
扉は叩かないで ....
夕暮時
蜩の
……かなかなかなかなかなかな……
という歌声に
いのちを見る
・
ばかやろうちくしょう
と時々
つぶやく私
でもね
いつもありがとうなんだよ
・
....
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