鮮やかな
紅灯る
秋の声
逃れ去っていく逃れ去っていく記憶の
その核心を掴もうと
広がる鉛の海を泳ぐ、泳ぎ続ける
失われた煙の花と団欒
終わった関係と更地
虚脱の時を刻む秒針
静まっていく静まっ ....
誕生日気づかれなくて秋刀魚焼く
いつのまにか
齢(よわい)は噛み砕かれ
おカネが 卒寿の勲章をたずさえて
ころげこんだ
おひとりさまのふところに・・・・
このうえの無い因果となって
あぁ
ことしは冬将軍の目覚め ....
魂の境を越えた交わりだった
わたしたちは一羽の大きな鳥になって
暁に輝く大河の遥か上空を
風を切り 大きく弧を描きながら
深く埋もれたまま錆びて膨れた散弾
思考に敷かれた玩具の電車の閉鎖回路 ....
もう二度と歌は歌わない
そう決めたのは
合唱コンクールの練習の時
隣の子がクスッと笑ったから
以来本当に僕は歌を歌わなかった
音楽の時間は口パクで通したし
歌のテストの日はズル休みをした
....
肉体だけが失われた
魂だけになった人々のすむ世界は
遠くて
案外近い、のではないか
たとえば
風の吹いてくる方角に向かい立ち
乾いてゆく眼球の映す景色が
そのまばたきのたびに
一枚 ....
“相手とコミュニケーションが取れない
この作戦は決行するしかない
我々には戻る場所が無くなった
補給する術も材料もない
我々は戦うという選択肢を取らなければならなくなった
この暮らしを守るた ....
例えば、それは記念日の夕食の
テーブルにある蝋燭が照らす淡い瞬間
ワインで少し赤くなった顔が綻ぶ瞬間
例えば、それは久しぶりに家族で行く海外旅行の
澄み渡る天の青を仰ぎみる瞬間
遠くに見える ....
ゾウさんのお鼻は
不思議な鼻だ
バナナをつまんでお口に入れる
水を吸い上げシャワーする
敵をひっぱたく武器になり
ああ きょうは
少年ゾウのまたの間から
鼻を入れおちんちんをいらって ....
狡猾であり
幼稚でもある
すべては悲しく美しい
そう
狡猾であり
幼稚なのだ
幾日も
幾年もかけて
日が沈む
その終末の真っ赤な空を
眺めては小さな飴を頬張るように
感慨に ....
はい、向いていなかったです
生きることには
まったく間違いでした
生まれてきたことは
恨んではいないけれど
なぜですかと 思っていますお母さん
申し訳なく言葉もないです
大好きな。お ....
だれもいない夜
見失い そして 鮮明に 私がここに
意思を持って
だれも、みない 私が
遠い日日からきょうまでをもう
守り切れない 私が
透明な漣の道を歩いてきた、つもりだった
、それは ....
卒壽となったおひとりさまは
なかば めざめの大脳をさそって
朝食後
ウインドーズをたずね
蒼白なワード面をひろげてみました
すると 第一行には
詠嘆の麗句が
そして 最終連に ....
いっそ
このまま
逃げてしまおうか。
という純粋は、
間近に控えた病床での浅い眠り
耳鳴りのような
譫言を以て
熱を
帯びるのでしょう
少女の恋する瞬間は
レモンバ ....
凡庸な言葉の花束に
なんの価値があるのだろう?
いくら集めたところで
枯れてゴミになるだけじゃないか
そんなことを考えていると
自分のペン先から流れ出ているもの全てが
所詮ゴミ処理場直 ....
151122
7号のクリスマスケーキを注文する
7号は当店の標準品ではありませんから
1ケ月前までに願いますと言われ
うーむと呻る
電話口では顔が見えない
見えなくて良か ....
チャリティの結婚願望だね、どれも外したいとき外せる鎖
皮膚のした脈打つきみの平熱のただ、なだらかな痛みをたどる
水彩画ここで過ごした季節たち カルピスのうすい夢みたいだ ....
ヨラさんは小児麻痺だった
ヨラさんはよく笑った
ヨラさんはそのたび涎を机に垂らした
ヨラさんは頭が良くてクラスでいつも1番だった
僕はヨラさんを笑わせるのが好きだった
僕はヨラさんの涎を ....
冬庭は音符を奏でる
花の終わった残骸は
案外気難しく
やっと植木鉢から引き抜けば
無数にめぐらせた白い根は
持てるかぎりの土をかかえこんでいる
ああ うたはここからも
うまれてきてい ....
針を指先に刺して、
血の花を咲かせるように、
ことばを呼ぼう。
浮かんでは消えていく気配が、
幻聴によく似た囁きに呼応する。
....
臨界に旅立った母は、すこし痩せたみたいだ
もう、帰りたい。という
ここには団欒がない。という
距てるものは何もないのに
働きすぎたのだろうか
午後十時二分の、電動歯ブラシは
....
母から聞いた遠い日の思い出話です
貧しい農家だった父と母は
農耕馬に馬橇を引かせ
町の市場へ暮れの買い物に行きました
正月のための食材を買い
家族の冬のビタミン源として
おそらく当 ....
秋と冬の境目の
限りなく冬に寄り添う秋だから
ならべてみたくもなる
あったかいものをしこたまに
{ルビ炬燵=こたつ} 湯たんぽ 綿入れ{ルビ袢纏=はんてん}
焼き芋 甘酒 鍋料理
{ルビ熱 ....
名も知れぬ花々が倦怠を司っている。
彼方に聳える山々が郷愁を誘う。
人間は目に見えるものを真実だと捉えがちだが、
夢の中までそれを固持することもないだろう。
夜空に浮かぶ三日 ....
天の慟哭か大地の怒りか人間が驚愕するのは決まって夜だ。
神秘の詰まった夜を私は愛する。
それはロマンに満ちた星空だけによるものではない。
何とも言えぬ甘美な恐怖とそこはかとない漂いが ....
マッチを擦った
においが好き
懐かしいから
クリスマスのロウソク
ストーブ
父さんの煙草
子供の頃に
安心した匂いだ
痛む喉気遣いながら栗を剥く
誰にも逆らうことは許されぬと
仁王立ちで立ち竦む姿が見えて
心が震えた
冬でも無いのに見える雪の塊は
一体全体どういう事だろうと考えて
頭を振る
振り子ならば
あっちへ行 ....
あなた方の死骸を埋めると 私が芽を出して育っていく
アイ、の呪いはコトバと声を包んで あなた方を肥やしにどんどん伸びる
声が子守歌に変わる夜
初めて骸の種となったあなた方に 向き合う ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135