世界一高い山よりも
海は深いのだという
だが海面が下がれば
山の方が高くなる
火星には
世界一深い海よりも
さらに高い山があるという
しかし火星に海はない
それゆえに
高い山 ....
ガーベラ バレリーナの背筋の通る首のような 滑らかな
その首かしげ
少年も青年も 性を見ずに純粋に触りたくなりそうな 一目惚れの可愛さに
くちもとが 止まる
世界が止まったと錯覚する 若い ....
ふたたびの春が突然舞い降りて僕の心はにわかにざわめく
いたずらに恋は心を乱すけどときめきだけが私の宝石
忘れてた恋が今さら燃え上がりどうしようもなく君が愛しい
忘れない時がどんな ....
おそらくは
やわらかな春の香り
おそらくは
かぐわしい早乙女のような
おそらくは
この世に用意された
おびただしい
喜びと悲しみのあわいで
おそらくは
それは
幻の香り
さく ....
奈落の底から 天上世界にまで突き抜ける滝が
私の体の中に 降りてゆく
これまで
沈鬱がわたしを咥えたまま 離そうとしなかった 私の目の前に
ただ黙って耐えていた私に 滝が現れたわ ....
130603
突然
滝とはなんですか
滝とは
あの水が滔々と流れ落ちる瀑布のことですか
流れる汗をかきながら抹茶アイスで滝を見ながらひ ....
偏差値の低き俳句や若葉雨
ラムネ瓶祭りのあとに横たわる
指名手配に似てきた
夜明け前にはいつも
街路樹が一瞬だけ背伸びをする
夜のうちに出されたゴミ袋は
浅く水たまりに浸かって
少しの間まどろんでいる
生きていた時のこと
本当に言ってほしかったこと
使い ....
君が
はじめて私の手を離し
自分の羽根で
よちよちと
はばたいていった日のことを
母は忘れることができない
君はとうに
逞しい翼をひろげ
上空の風に乗り
母には見ることもできない ....
{引用=
街は、いつも
こぶしを振り上げる 動乱のような
非日常を 人の心にやどす
ちいさなネオンの明かりに立つ少女
夜を踏む女の ピン・ヒールの 短い天使の影
....
イボイボした奴 中身の綿はスプーンでほじくる 否 掬う
苦味にパンチの効いた緑色の君
薄くスライスさせる 太いと苦味のパンチにマジパンチくらうから
炒めても 叩いても 機嫌悪く睨んでも 痛ま ....
大木になりたいから大木になるよ
あなたに木陰をつくりたいから
それは宇宙いちの木陰だから
あたまのうしろで手を組んで
得意げに目をとじて
風の声や鳥の声
光のささや ....
パンケーキに溶くるバターや南風
坊主憎けりゃ寺を焼いてしまえばいい
下町のエジソンが思いつきで開いたカフェ
具合悪くてリポビタンDを飲んだのだけど良くならない
と先生に言った電話越し
いまのあなたにはきつすぎる、胃にも腸にも
脳にも刺激が強すぎるから飲まないように
破って、飲んだ。さっき
具合 ....
光では消える
だから 灯りを
照らすという意志が欲しい
だから 灯りを
ともすという力が欲しい
だから 灯りを
暗いものが見えるだけでも
心の灯り
たきつけているのは ....
カランと氷が泣いたなら
グラスの水滴なぞります
なにが足りずに欠けるのか
なにを足せば満ちるのか
欠けた夜空の三日月 ....
風に吹かれて空き缶が
ゆるい傾斜を上って行く
カンカラ転がり上っては
カラカラカラリと下りてくる
あの風が止んでしまえば
あとは 下りるだけ
底の底まで落ちぶれて
それ ....
浴槽の栓を抜く
しばらくは何事も変わらない水面
さざ波のそぶりさえない
今 渦中では
見えない引力に導かれ
出口へと
まさに水が
わあわあ殺到しているというのに
ことの始まりは
....
まだボケる余力がある
わたしはわたしの中に
夜を溜める
そしてその夜を醸してゆく
深くなるように
やわらかくなるように
わたしはわたしの身体に
花を鳥を
風を月を沁みこませる
わたしの中の夜が
やさし ....
【暮れかねる】
ある日 冷蔵庫の中のものが
すべて 薔薇の花になってしまった
五月が さえざえと冷蔵庫の中で咲いていた
ばら肉は どこへいったのだ
薔薇が ここにはあるだけ ....
前の家のばあさんが死んでしまった
腰より低く背を曲げた八十いくつのばあさんだ
息子夫婦は遠くに住んで
干からびたみたいな平屋に一人で住んでいたが
隣近所に迷惑のかからないように
死んだら近親 ....
梅雨のぬるい日日
あたまが豆腐になっている
天気予報が世間並みに外れたので
好天のそとに出てみた
道を歩いていてさて
右に曲がるか左に曲がるか
人生はまるでロシアンルーレット
きょう ....
すてきな溝があったので
かたほうの耳をそこにあずける
夏草は風にこすれ
虫たちが{ルビ清=さや}かな羽音をたてる
日の光のなかですべては
ひとしく ....
目覚めても
夢が続くのか
岩穴に
風が吸いこまれていく
のぞく眼に
洞窟の奥でうつむく子どもが映る
近づけば
幼いままのぼくだ
小さいからだを
剃刀の風が
音を立てて
通 ....
辺りは静かで仄暗い
細かな気泡としなやかな水草だけが
照明の光を蓄えて揺れ動く
水槽の中を泳ぐアロワナは
夏の夜行列車に似ている
いつまでも眠れず、読書も捗らなかった
車窓に触れたゆび ....
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