それぞれに運命を入れた容器たちの
つかの間に折々
わずかな光を胎動し
森のかたちにふくまれていく
欲しいからだを差し伸べる
天使たち
祈りをおびて瑠璃色の
小箱にひそめ ....
140402
+0パーセントの悲鳴が
2パーセントに達するほど
奥が深くない湾岸の住民たちは
3パーセントアップでも耐えられるはずだ
5パーセントアップだ ....
乗用車一台通れば
塞がってしまうほどの道幅
両側の家並みに
人は暮らしているのか
いないのか
どこも無口で
通り抜けるにも 身構えて
足音忍ばせ
辺りに目を配る
ここは都会 ....
昔大きな戦争があったことを
食卓のバナナは太陽に教えてもらった
黄色い時代だったという
バナナは自分が青かった頃に住んでいた国について
通りかかった風に話し始めた
小さな島がたくさんあっ ....
死んでみてわかった
あの世の消費税は
100%なんだよと
父が逃げるようにこの世に帰ってきた
それが私の息子だ
あの世でも
何かを消費しなければ
生きていけないら ....
僕の通っていたひかり幼稚園は
お寺の中にあって
墓地は恰好の遊び場だった
4月8日は花祭り
お坊さんの園長先生は
あまりおいしくない甘茶をみんなに飲ませて
毎年自己紹介させる
め ....
眠剤をワインで飲んで四月馬鹿
けっこう血が出てドッキリカメラじゃなかった
星が瞬かずヒーローは来ない
あの大きな地震から三年たって
家を建て直した人の窓ガラスが悪意で割られるという現実
廃炉問題や生活再建や瓦礫処理はまだまだ続きその一方で
こちらの生活は元通り
スーパーで売っていないものはない ....
廃屋に一本の桜が立っている
誰一人愛でる人もなく
人知れず枝を伸ばし
花を咲かす
月明かりの夜
街灯に照らし出されて
ぼんやりと薄桃色の
その姿を浮かび上らせていた
夜の静寂に ....
小枝
小石
いきどまり
切り株
ほんのちょっぴりの孤独
ガラスの破片
命
太陽
これは夜
これは死
これは罠
これは釣り針
畑仕事
木の節目
カ ....
合気道の稽古で
左目を傷つけた
痛風の発作が
右の親指の付け根に出た
車庫入れのときに
自動車を壁でこすってしまった
黒皮の財布を失くした
それでもぼくは
幸せであると唱える
....
結論がない朝 風が素通りする
乳児用の細軸綿棒で耳掃除をすると
耳の奥深くに綿球が入り込み
ふつうの綿棒では届かない部分で感じるわずかな痛みと恐怖が
心地よい
目には見えぬ自分の鼓膜付近で
薄い皮膚と細い紙軸の綿棒が ....
やさしさは省略された
ふりかえれば風速の弱い地帯
簡潔な救護をあずけた
そこかしこの明るみは
ひとつ、ひとつ、きみのなかに
重みを持っていく
ひとは、か ....
かなしみをください
あなたの傷口のように深い夜に
ことばをください
書き忘れた遺書のように
端正に綴ってみたいのです
桜が眼に沁みてなぜかせつなく
なにかを教えてくれるのですから
....
陽炎や判子をつきて終わる恋
糸遊にからまる別れ話かな
ドイツ語で弱音吐いた
春への憧れ
風の唸りとみぞれ雨 白激しくて雪から氷
春は名のみに 待ち待ちし
春への憧れ 今日終えて
春は来にけり 吾が庭に
仏の座母子草 胡瓜草姫踊り子草
さり気なき草々の ....
こぬか雨骨にしみいる寒さかな
春の雨歩みは遅く花遠く
想ふても雨に流され春の宵
微笑みを恐れて泣くなど愚かなこと
胸腔を吹きすさぶつむじ風は微熱をうばい
からころと鳴る胃が律動を求める
乾燥した真昼の道は
縄に括られた首を一心に手繰り
点々と続く血の跡を浮き上がらせ ....
月夜の桜にご用心
照らされた花吹雪に心をもっていかれるという
そんな夜はおひとりになりませんように
もうすぐやってくるものを迎えるために
部屋の配置を変える
“あるがままを受け入れる” それが存在の呟きだとして・・・
翼は鳥に似合う
「重いものを背負っていますか?」
おせっかいをやいてみる ....
コンビニの灯りに集まるクラゲを
殺し屋はすべて撃ち落とした
その間にも人は計画を作り続けた
幸せになることはとても簡単だった
書いたばかりの遺書を握りしめて子供が走る
町はずれまで行 ....
別に昆虫の話じゃありません
これは一種の開き直り
あなたは平和主義者ですか
わたしは違います
大仰に言ってみても
所詮 頭と胸
頭で知った理想を
胸にぶら下げて生きること
本音と建 ....
我が社に知的障害持った青年が入社した
長い期間研修で頑張って入社した
彼は我々の新しい仲間だ
18歳の彼は真面目で優しい
彼を見ていると
健常と障害の違いは紙一重だと思う
彼の ....
小枝の別れめに すごした雪が溶けかけている
のしかかられた小枝は いつも 問いはしない
さまよいながら 降り募る 重さにただしなり
折れたら落ちる 回る季節に巡りを てばなし
花芽を ひとつ連 ....
木蓮の近くに寄せる車いす
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