「コラッ!あっかんべーしたなっ」
バックミラー越しに
「今、あっかんべーしたなっ」
わざと見えるように
「もう!あっかんべーしたなっ」
お母さん、こがん(こん ....
大人になったのわたしは 眠たい時に寝る
あるいは 眠たい時にも寝ることを許されない
子どものころは違った
短い針が9のところに来ると 布団に追いやられた
否応なく灯りが消された
二段ベッ ....
少女、
月曜日の放課後につくった詩が
火曜日の朝には消えていた
細い指でなぞった物語が
校舎裏で砕けていた中2の夏
西の空がまぶしい
あれは現代詩ですか
いいえ、
夕暮れです
毎日す ....
雨は平等に降りしきる
あなたにも、わたしにも、
だけど、わたしには傘がない
僕が思春期に可愛がっていた
片瀬江ノ島駅に住む、野良猫ニャー子は
破れた恋に涙を流す学ラン姿の僕に寄り添い
顔を膝にこすりつけ
(にゃあ)と優しくひと声、鳴いた
僕と出逢 ....
抱枕だいてはなして虫しぐれ
三人寄れば文殊の知恵
ふたりで一緒に考えよう
僕がふたり分考えるから
目覚まし時計の呼ぶ声に乳白色の霧をかきわける朝
夢の続きの小路をたどればあの古い石の門がが見えるかもしれない
丘の上の教会には孤児院が併設されていて僕の友達がいた
通りを浜のほう ....
甘いモノばっか口にして
青写真の上で踊らされ
あからさまな嘘に 慣れていく
他人の思惑に乗せられて
自分の声には耳を塞ぐ
そんな生き方が 楽ちんだ
なんて 思っていたけど
ど ....
お前は木の葉のように
大気の騒がしいうねりを巧みに乗り継いで
俺の途上にやって来た
到来はすべて拒絶であるので
お前は遥かな海からはるばる俺のもとへと
拒絶の華々しい毒を優しく手渡した
....
ある満月の晩、女友達が私の家にやってきた。シャンパンを片手に。何かのお祝い? と尋ねたら「まあ、そんなようなもの」とほほ笑んだ。酔っぱらうと虚言癖のある彼女は「やっとわかったの。わたしは王女さまだった ....
汲みあげる
言葉になる前の想いが
溶けている井戸水から
丸い壁の井戸の底の水面には
手がとどかない
のぞきこむと
そこには何十年もつきあってきた
おれに似た顔がいる
顔はつぶや ....
熱湯を浴びたあと
綺羅綺羅しくこおりが浮かんだ
キンキンな水に投げ込まれる。
いちばん色鮮やかで、歯ごたえのある状態でとまる。
サッて血が昇って(顔が熱い!)
サッて血が落ちる。
わた ....
したたかに濡れたひな菊のとなりで
腐り果てた一羽の雀
受け止める土は泥のようで
月の光も届かない
空家と廃屋に挟まれた僅かな路地のことだった
塗り潰されたような目
塗り潰された ....
異様な色の雲が
頭上を物凄いスピードで流れ
不吉な予感が
風に乗った電波で
直接的に送信される
老婆が路上に倒れて
泡を吹き
幼児が2人
互いの髪を引っ張り合い
若妻は
....
分断されてゆく
もうなんどめの喪失感だろう
季節やこころのことは
もう書き尽くされていた
また熱帯夜がやって来ようが
秋の虫たちは鳴くのをやめなかった
考えると ....
願い事叶えるための流れ星何度も流す飽きがくるまで
Casterをすってはいてあまいふうりん
いくつもの交差点を越えて
道はまだ続いている
緩やかに弧を描くカーブの先に
終わりはまだ見えない
進んで 止まって 曲がって 進んで
約束事を守って運転していても
右折してきた ....
慕情とか
郷愁とか
そんな古めかしい語句を
あてはめてみたくなる
吊り革につかまってみていた
車窓の風景
たくさんの人々の日常が
幾重にも重なり すれ違っているはずの
それでいて私 ....
電子レンジの中で何が起きているのか
ぼくはよく知らない
中に入れた物が熱くなって出てくる
そういうものだということの他は
操作方法だけ知っていれば困らない
ターンテーブル ....
九月十三日の朝
風のこどもたちは
キッチンの西窓の向こうで
すでに足踏みを繰り返していたとみえ
私が縦長の窓を押し開くと同時に
遠慮なんかこれっぽっちもしないで
じゃれあうように
とびこ ....
お義母さんから昨日メールがあった
ここ2・3日夏が惜しんで最期の力を振り絞っているから体調大丈夫とのこと
若くして最愛の伴侶を亡くしながら 女手一つであの人を
逞しくそして優しく育て上げ ....
かなしくてなみだをこぼす闇のなか気配はきみのただの面影
アルバムに辿るあの日のよろこびもいまは一人の愚図のため息
二十四わたしの歳はその時に綴じこまれてるスチールのまま
....
青空と呼ぶのはたやすいことだけど本当にこれは青なのですか
週一度通ってくれる看護師さんわたしに触れる唯一のひと
晴れるかな空をみるため扉開け一歩だけ出て知った八月
詩と書 ....
共通の話題はつねに天気だけ気象情報全局録画
椎茸の炊き込み御飯母の声
木漏れ日を受けた椎茸哲学者
大空を切り裂く百舌の軌跡あり
みどりごが喋った喋った花畑
{ルビ末枯=うらが}れに手を差し伸べて日が帰る
秋蒔きの汗を愛しむ空の神
丁寧に過ごす真昼に小鳥来る
....
かなしさは夜のなかにある。
体育の時間、ぼくはだれともペアをつくれ
ずに、みんなが踊るフォークダンスを眺めて
いた。それは濁った河を渡る水牛を眺めるの
....
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