ぎらぎらと陽が照っている
草木が緑に燃えている
世界はゆらゆらと揺れている
折しも二匹の紋白蝶が
絡み交わり輪を描き
白々と視界を過っていく
いったい何処へ行くのだろう?
自ら描 ....
よく耳を澄まして欲しい
伝わって来る筈だ
あの人の心音が
あの人は私たちの事を
一人一人が宝の存在であると言ってくれた
何という人生への愛
私の中にあった情熱は
一瞬にして湧き上がっ ....
二〇二〇年十一月一日 「{ルビ生贄=いけにえ}の王」
『年間SF傑作選3』の6作目は、ポール・アンダースンの「{ルビ生贄=いけにえ}の王」アメリカ人側の宇宙飛行士が生き残り、敵側に捕まった。 ....
やさしい
やわらかな
音に包まれ
反復のうち
落ちてゆく
夢の底
青い波、残響する宇宙
たましいのふるさとを歓び
肉の苦痛から解放され
ただひとりに戻る
蝋燭の炎が青白く燃 ....
○「老老田植え」
今年も友人の田植えの手伝いに二日行った
今年は田植機が故障しなかったので
順調に田植えができた
しかし一年一年耕作者も
故障しやすくなっていく
来年は自分たちで植えられる ....
手押し車を押す老人
たいまつの火は燃えている
異郷のこの地にひとり立ち
遥かな地平を凝視する
わたしはふるさとを持たず
同じ道を通い帰る
痛む脳髄を密かに抱え
それは静かに歩いていく ....
こころころころこころころ
こころはころがるころころと
不思議なおにぎり食べたとたん、
こころがおちてころがって
ほっぺもおちてころがって
たくあん食べてお茶のんで
あちこち探してみたけれど ....
中新庄から
線路沿いをふざけて歩いて
「立入禁止」にラクガキしたり
熱帯夜
福井越前ハタチまえ
子どもだからと置いていかれた
それでもそっと覗いて見ていた
あなたと私
繋がらないまま黙っていた
想像していたよりも良かった
でも と言い淀んで
私とあなた
すぐに来るからねとうなず ....
ひとりの月が穴を穿つ
地球のでこぼこに
孤独な肉は
激痛に裏返り
あなたとわたし
夢をみる
虚空に向かい
美しい悲鳴をあげながら
黄昏に沈む太陽の輝きを
僕ら、掴めるか
それは
永遠の光芒だ
肉の痛みの隙間を見つけ
意識の深層に分け入る
記憶が渦巻くイメージが波打つ
遠い声が懐かしく響き
ひび割れた過去を繋ぎ ....
かすみ草が
軽口をたたくように
洗濯物は風に揺れて
迷うことはよいことだと思う
右頬をつたう涙に
うつらないせかいがあるとは
全くもって知らなかった
紫陽花色のかなしみには
ちょっぴり ....
昨日いつもの爺ちゃんにあった
知り合いでもなくても知り合いみたいな人だが
やがて僕もこういう素敵な爺ちゃんになってゆきたいと
僕は自分の歴史しかわからないし
時々前後も混乱するのだが
....
雨に降られて
雨に降られて困っていると六つか七つの女の子が
「こっち、こっち」
軒下へ入れと私を誘った
「やあ」
私は言った
「ひどい雨ね」
ませた口調で彼女が言 ....
美しい旋律が
肉の激痛を洗う
対極が宥和を促し
浮遊するたましいを
肉は縛り付ける
執拗に
脳髄にテツスイを
脳髄にイカヅチを
肉の激痛に
引き裂かれ
日は沈んで
わたし ....
今を静かさが支配している
静かさは私という不安を抱き留めている
私は静かさのなかで震えている
静かさのなかですべては始まるから
静かさがすべてを支配するから
私は吐きそうになりながら ....
丸く円く収めるつもりが
内側から裂けるように
咲いていく
心の傷を糧にして
終う言葉は種になる
種は何時か芽吹き
誰かの支えになっていくと知っても尚張り裂け続けた
結果は何処にも ....
満天の星空が、朝靄の中に静かに消えてゆく。
鳥達はいつもの歌を歌い、季節の花達はその手を広げている。
誰かの魂と私の魂が共鳴しては離れてゆく。
キャンバスの淡い白色は歩き始めた娘 ....
プラズマになりたい
そんなこと言われてもこまる
じゃないならみかんのままがいい
夢をみるのは只
言われて思う
猫のやわみを味わうのだ存分に
にごりが晴れる空
くるくる揺れあかすひれを舞わ ....
アルコールを追い風に
並べた言葉の胡乱羅列悪鬼羅刹適当馬鹿常套句卍
てきとうに置いて並べるセンスだけ磨いてきた二〇数年
なんか できたかなぁ
意味の薄い胡乱羅列天上天下馬鹿罵詈雑言卍
紫 ....
からだが冷えている
外は雨だ
アスファルトは黒々と濡れ
行き交う人々はそれぞれの目的地を持ち
僕はただ震える
季節は梅雨
何も無い不安に僕はおののく
僕は此処に留まらなければならない ....
千の陽光が結んでほ
王位を継承したいと言
ころぶ子どもたちの足をまたはらう稲穂
うその曠野を食べなければならない
立ち入り禁止の看板にな
必ずや勝ってみせると言って引
だれの予言なのか ....
なんにもない
向こうに
何かがある
王国は滅びゆき
魂の故郷は常に輝き
孤立は一掃され
孤独は俊立し
私たちは
ともしびを失った亡命者
脳髄の導火線に火をつけろ
脳 ....
ハッピーエンドの小説なんか読んだことがない
ホッとした後に生活なんか送れるのだろうか
眠れない夜に読書をするなんていうのは
かえって明日が怖くなる
毎日裏切り者たちと仕事を共にして
罰を ....
窓辺で飛行船をながめていた彼女も
結局は海の底 深く深くただよって
そうだね、
かみさまは後ろ暗い思いをかかえはしない
きりがないからね
突然にねむたくなったり
ねむりたくなったり
....
二〇二〇年十月一日 「みやうち ふみこさん」
『O・ヘンリー名作集』の2作目は「警官と讃美歌」冬は寒いので、なにか悪さをして刑務所に入ろうと、いろいろ努力するホームレスが主人公。どうしても努 ....
八番目だ
八つ目の角を曲がると
きっと見えてくる
左へ行って
左へ行って
右へ曲がって
天を仰いで
橋を渡って
信号も渡って
また右へ曲がって
そこから八番目の角を曲がるんだ
間 ....
荒涼とした
この地に独り立ち
おまえの傷ついた足を洗う
地獄にも似た静寂が辺りを覆い
暴威の呪われた異邦の声が響く
冷えた原色の広がり、渦巻く虚空の闇
おまえは微笑む
い ....
静けさ
ちょこんと
座っている
気付けば
夜底に
座っている
私は寝床を整える
不眠の昨夜を払うように
新しいシーツで敷布団を包み
黄色い朝の喧騒に
心の奥処の祭壇が
荒らさ ....
皇女は嵐を飼っていた
嵐は乳房に纏わっていた
どこからか瑠璃色のヤンマが静かに
目交いにとどまっている
まやかしのような口元が匂う
大路を抜けて山へと折れる道
狂わす水がいざな ....
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