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わたしに
ゆ という文字を
教えてくれた人は
あたかもそれを
ひとふでがきのように
描いてみせるので
その曲線の美しさに
魅せられたわたしは
日暮れて
昏くなるまで
いくどもそれを ....
そのわらべうたは
作者不明だという

畑に添って
作られた石垣
その隙間から
シダやペンペン草が顔を出し
しっぽがふたつに別れた小さな虫が
忙しそうに出たり入ったり
雨が降れば
水 ....
左手首の動脈を
右手の指先でさぐり当てる
脈に触れれば
自然とそれを数えてしまう
まるで
生きていることを
確認するように
えいえんに似たそのリズムを

日が暮れて
血の匂いがする ....
現代詩フォーラムという場所に限定していえば、ここに投稿されるいわゆるネット詩と呼ばれているものは膨大な数が毎日投稿されている。
タイムラインはよどみなく更新される。一日開かないだけで、ひとつの詩は一 ....
たまねぎの
ちゃいろの
うすかわを剥く
のり、で
はったわけでもないのに
なかみのかたちに
ぴたりとはりついて
かわいてしまった
うすかわは
もう
うすかわ以外の
何者でもない
 ....
川伝いに伸びる
でこぼこ道の向こうから
菜の花がきれいね、と
懐かしい人が
光をまとってやってくる
どこかで硝子製の呼び鈴に似た
澄んだ鳥の声が響く

あなた、
ずいぶんともう
大 ....
何事もなかったように光る海
廃線路の先には菜の花が咲く
網棚に取り残された箱を開ける勇気もなく
揺れる電車
ねむりを誘う振動
座ったままのうたたね
かしげてゆく首
透明な重力に引かれる右 ....
知りたかった
僕を
取り巻く
空気の中に

どれだけの
水の粒子が
溶けているのか

手と手
心と心
乾燥地帯で
ぶつかるたびに
静電気が起き
そこに生まれるのは
青白 ....
今日の肉体は
昨日の肉体より
確実に
死へ近づいているのに
今日の傷は
昨日の傷よりも
命をうたっている
ふしぎな
からくり

はがれていった
皮の下から
赤く湿った
細胞が ....
ゆっくりと
頁をめくる
それは
何かを
惜しむような
誰かを
見送るような
こころもちで
結末を
知ってしまえば
この手の中の
物語が終わってしまうから

桜は咲いて散る
 ....
春色のセーターをほどく
うねに添って並ぶ
小さな毛糸の環が
現れては消え
現れては消え
優しく解体されながら
終点に向かう

逆回転を奏でる音楽のように
くぐっては消え
くぐっては ....
  たましいだけに
  なったものたちが
  幾千もの
  透明な指になって
  舟に乗り
  たどりついた
  砂丘の上に
  さざなみのような
  じゅもんを描いてゆく

祈り ....
晴れでも
雨でも
ころころころがす

かど取れて
かなは
ようよう丸くなる

わずらうことなく
かなは
ふくふく育つ

カナころがし
という
虫がいる
手近な男とくっついちゃって
あたしもヤキがまわったかなあと
それが照れ隠しなのは
彼女の顔を見たらわかる

手近な言葉
ありふれた言葉
黒板消しで拭くたびに
私の屋根に白いチョークの粉 ....
ここに居た

そこに居た

あちらこちらに
居た
ことを記す

愛を叫ぶ雨蛙を乗せた丸い大きな葉も
その傍らに転がっていた水晶のような玉も
美しい色を持つ手が
幾重にも重なったよ ....
左腕に
浮き出た内出血の痣
八年前に受けた
ハーセプチンの点滴は
あたしの血管までもぼろぼろにして
以来 採血は
看護士泣かせの儀式となった
その痕を
老いた母は
かわいそうにと
 ....
西側の二脚の椅子に
座っていた
子らは
ふくふくと育ち
ようようと三月へと出かけていった

つながったひとつのベンチに
結果 残されたようになった
夫婦は
横に座って
同じ景色を眺 ....
影と影は
こんなにもたやすく
ひとつになれる

犬とわたし
樹とわたし
電信柱とわたし
あなたとわたし

昼に束ねられていた
よそよそしさは
夜がくれば
溶け
すべての影と影 ....
早瀬のそばの竹やぶに
住んでおりましたので
笹舟を流しては遊んだものです
手を離すと同時に
それは勢いよく
旅立っていきました
赤い橋をくぐるまでは
なんとか目で追うことができましたが
 ....
スーパーで並んでいたときのこと

小学校一年くらいの男の子が
母親とおぼしき人に
何やら言いに行ったかとおもうやいなや
ばしっと音が響きわたるほどの勢いで
頭をはたかれた

理由はわか ....
銀盤の周囲には
金や策略やら
得体の知れない黒いどろどろが
埋まっているとかいないとか
それと比べたら
ライバルのスケート靴に
画鋲をいれちゃうなんて
(そういう少女漫画があった)
わ ....
 太平洋の荒い波が
 かつてひとつであった石さえも
 みっつに分断させたのよ
小説家志望の女の子の戯言が
ここでなら
信憑性をもって
語りかけてくる
干潮時にだけ現れる
海の通路を渡り ....
空もなく
風もなく
光もなく
雨も降らない
季節がない
そんなところに命があるのだろうか

あるよ。
声がした
家の建つ
ベタ基礎コンクリートで
固められた
土の中から
芽吹 ....
腐る。
ギリギリのところで
なんとか持ちこたえている
としたら
死がとても怖い
かくれんぼしていて
うっかり見つけてしまった
小鳥の死骸にうごめいていたうじむし
その卵が
この空気中 ....
水を張った洗面器
顔を沈める姉
ストップウォッチを押す弟
呆れて素通りする母
あくびをする猫

どれだけ息を止めていられるか
平凡な家庭のちゃぶ台の上で
流行ったのは
危険な遊戯
 ....
こんな日は
決まって風が泣く

弔いはもう済ませたというのに

細い通路に
冬という冬が
我もわれもと押し寄せて
ひゅうう ひゅううと
うなるのだ

夢遊病者のように
あの音を ....
あゝ薔薇が咲きました
昨日までは蕾であったのに

馬鹿だね 何もこんな寒い日を
選んで咲くことないのに

小学校から知っている息子の友達は自衛隊に入隊するといいます
有事の際には戦うので ....
冬景色 北国生まれじゃないけれど懐かしいわぁ今日は湯豆腐

かつをぶし削って薫る郷愁は年経るごとに熟成します

水仙をたどれば春はつながるよ ふるさとの土 温かい風

手作りの竹馬結局乗れ ....
生きているということは
自分に穴を開けるということ

生きているということは
穴から塩辛い結晶手放すこと

生きているということは
穴を塞ごうともがくこと

生きているということは
 ....
昨晩
ひとつの恋を失った
ミセス ミスティは
男の不実を責めるでもなく
ピアノの蓋を閉めた

ミとファ
シとドの間に
黒鍵がない理由は
おそらく
その間に
幻想があるからだと
 ....
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