何本か入ったら
道に迷っちゃって
そうしたら
住宅街の奥に
小さなお店があって
わたしは自転車をとめて
そこへ入った
テーブルの上にはメニュー
カレーとチャイとラッシーを頼んだ
水も ....
異国の地を歩く
知らない街を歩く
静寂
遠く修道院の
尼僧の溜め息が
聞こえそうな
遠く眠っている
赤ん坊の寝息が
聞こえそうな
このトンネルを抜ければ
あそこには光がある
あの光が
わたし ....
チェーン店のカレー屋で
「グランドマザーカレー」
を食べていた
自動ドアが開き
ヘルパーさんに手を引かれた
お婆さんが店に入り
隣の席にゆっくり
腰を下ろした
....
ヘミングウェイじゃないけれど
何を見ても何かを思う
この街は体に毒だ
記憶の濁流に押し流されて
立ち尽くしたまま泣きそうになる
冷たい風が刺す中で
涙だけが生温かった
....
この季節に居たくない夜
どこか、向こうがわを見ようとする
すべり台の天文台に寝そべって
どんな温もりでも
消えていくときはいつも赤い星
経験の記憶が
証ではないのに
あい ....
闇の東が
ほの白く潤んで
密やかな色と匂いが
滲み出す頃
花は
膨らみ過ぎる喜びに
身悶えしながら
目覚め
人は
濁った夢の浅瀬を
溺れながら
まどろむ
やがて ....
電源が下りた
太陽は
真っ黒だった
燃え尽きてしまった。
太陽がなくなると
寂しくなった
皆静かだった。
月も消えた
青い空も
消えた
私達は
希望が欲しかった。
「ねぇ。」
「ねぇ、キミ。」
「ねぇ、ねぇキミ。」
無限廊下の、うさぎいすが鳴きました。
淋しいうさぎいすは、死ぬのです。
無限廊下に並ぶのは
無限個数のうさ ....
グダグダ言いたくないので、とりあえず簡潔に言いたいコトのみ書く。
イシダユーリと今村知晃のユニット「後ろ回し蹴り」の先日の朗読パフォーマ
ンスに関して、意味不明の批判がくり返されている。
....
海に沈殿した子ども達を
耳かきで掻き出す
「わたし早くママになりたいの
と
餌を求めるように
口々に主張する子ども達は
飽和した酸素に触れたとたん
波に揉まれて白い泡になる
灯台の ....
ぼくは、綻びかけた水
燃え渡る花、降りしきる炎 それでも
常に飢えていて
誰かの 立っている処からは
分かれはじめた
友だち達
いま 遠く港の閉じていくのが
みえるでしょう
ぼく達に、 ....
夜が青く明けてゆく頃
除雪車の音が聞こえている
ひとつの戦争のように
降り積もる雪を魂に置き換えて
作業は続く
まどろむ真冬の月の目は
わたしたちと同じ
出来事だけを音で ....
今はここわかれ道で君のそば花咲く速度で涙を落す
雛たちが巣立つ喜び悲しみを抱いて鳴いてるウミネコになる
ないているウミネコのいるこの海よりしょっぱい涙を流したのかな
潮舟 ....
カルピスの底みたいな白濁色に
おぼれてしまう人を笑うことなど出来ない
明かりがいつも灯っているわけではなく
でも闇ばかりというわけでもない
はっきりしない色に囲まれて
遮られた視界を ....
春の影が歩いている
人のふりをして
わたしのふりをして
わたしが振り返ると
影も振り返る
いったいどんな過去を
振り返りたかったと言うのか
影は
わたし以外に知らな ....
氾濫する
春の本流を立ち泳ぐ
辺りには甘い毒素が満ちていて
脳から先に侵されてゆく
あらゆる感情の結び目は解けて
それがいいことなのか
悪いことなのか
判断さえおぼつかないまま
い ....
おぼろ月夜に
醤油をかけて
チュルルと
流し込んでも
うしろめたい後味が
背筋を駆けるだけだからって
桜の散り際を
ゼリーで固めて
トゥルルと
頬張っても
安っぽい哀しみが ....
たくさんの
思い出に囲まれた
箱の中で
春まであと少しと
必要なものを丁寧に
包んでいく
持てないからと
選ぶしかない別れにも
振舞いだけは潔く
過去も未来も
考え ....
キリンのように
長い首だったので
保育園の先生を
キリン先生と呼んでいた
心の中でも同じように
お友だちはみな
そう思っていたらしくて
ある日お友だちの誰かが
キリン先生 ....
大きな声を上げて喜ぶ子どもと肩車する父親
隣でカメラを構える母親
恐らくまだ若いのであろうカップル
日曜日の動物園は賑わう
君の口からは
たくさんの刃物のような言葉が発せられ
こん ....
象が海を渡っていく
かわいそうに
目が見えないのだ
かわいそうに
と人は言うけれど
思ってもいないことを
言葉にしてしまう
人もまた十分かわいそうだった
かわいそうに
何度も言 ....
骨を飲み込んだ壁の絵は
歩けるようになった
かすかに影をいだいて
陽をひきずり
音を避けて
草の渡れぬ反対側へ
道に線をのせた
ぽとり と雨が
さほど濡れない
ひさしのついた壁の ....
「夢の言葉」
わたしはあなたに声をかける
あなたは静かに両手を広げる
わたしはあなたを見つめる
あなたは見られることに慣れている
わたしはあ ....
赤い紅した微風吹いて
柔らかい肌した土の香りが
スギの種と一緒に
舞い踊る
君の鼻のてっぺんだけは
赤ら顔だけど
目尻はすっかり
春うらら
コートを脱ぎ棄て
日和に飛び込 ....
男は、レミオロメンを知らなかった。いや、そればかりかサラ・バレリスもブランディーさえ知らなかったのである。しかしそれが彼の生活にあえて格別の影響を及ぼすということではなく、ただ美しい天使たちの歌声か ....
妻の笑い声で目が覚めた
夢の中でも笑いたかったのか
夢の中でしか笑えなかったのか
出会った頃のように
無邪気な声だった
揺すっても起きる気配もなく
いずれにせよ
生まれ育った故郷か ....
長い長い、ゆめが落下して
重さを忘れたわたしは、大きな幹の鼓動を聴いている
その音と音のリズムが春の速度と似ていて
甘い甘い、きみも落下する
そこらじゅうに溢れているのは、
多分、今年の
....
よっこらしょ
そんなことばが口癖となった
ひとしきり身の回りの片づけを終えると
臨月の大きなお腹を抱え物干し台兼用のテラスへ這い登る
白いペンキを塗り重ねた木製のデッキチェアに身を委ね ....
夜明けの街
ビルの硝子は空を映して
深く青く
深海のように深淵のように
瞬きの度に光の差す時間を
吸い込んで見上げれば
頭上には群青
鳥が泳ぐ青い海
私なんて実はいない
誰かが成り済 ....
まずは網膜と虹彩の特性を
知らなければならない
細めた瞳に形、またはそのありか
私は照らされて存在する
ただ視界になりたいときには
井戸の底に住みたいと思う
遠い水面に朝と夜を
切り ....
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