どうしても海が見たくてしかたない時は
海の すぐ傍にまで行くか
それとも
あえて離れた場所に立つ
たとえば山を削った住宅地のはずれの公園
ゆるい長い坂の上から
遠く見る海は
白い岬をした ....
せっかくの天気なのにバイクがパンク
すぐ近くのバイク屋さんにかけこむと
オートバイがたくさん詰め込まれている
車体の骨組みだけのもの
部品が飛び散ったスクーター
似たようなハンドルやライ ....
鮮やかな緑の波を揺るがして
強い風が吹き抜けて行く
その風にあおられるように
忘れていた何かが目覚めようとしている
あなたと出会ったのはこんな緑の季節でした
お互いに愛し合いながら傷 ....
静かな朝に
とおくとおく
列車の音がする
私達のあらましを
紙に綴った日
小さな子供は
おろかしい大人を
黙って観ていた
列車が走る音に
夢を重ねて
今日の朝は憂鬱だ
ぱちぱちぱちぱち
ばちばちばちばち
雨の音がだんだん強く地面を叩いている
大きな傘をさして自転車漕いで
つるつる滑るアスファルトに気をつけて
鞄はぐっしょり仕方が ....
太陽と月を結んだ線が俺座
今日が不安なのはいつものこと
ドアをあけたくない気持ちになる
雲っているから
雨がふりそうだから
制服の頃なら通じたいいわけ
もうため息はつかない
そんな約束は無効になって
背を ....
父が商人になったきっかけは
一本のから芋の蔓だったのです
長男だった私は
そんなことを弔辞で述べた
そばで母や妹たちのすすり泣きが聞こえた
その前夜
父はきれいに髭を剃ってねた
どこ ....
あれはまぼろしだった
晴れ渡った夜の空
一つみつけた美しい輝き
とても嬉しくって
毎晩窓を開けて眺めてた
あれはほかの星とは違って
あれはとっても特別で
どこが
って言えないけれども
....
{引用=
陽炎に
雪 みあげれば
あっさりと あっさりすぎるほどに
春のよそおいを見棄てる
サクラでした
生の 爛漫が閉塞と終焉のはじまりなら、
未完でありつづ ....
山奥の沢
大きな石の上に寝転がっていると
こんぽろりん
こんぽろりん
遠くの方から小さな
木琴の音色が聴こえてくる
私は少し調子の外れた
しかし心地の良いその音に導かれるように
....
羽化したばかりのモンシロチョウの
おぼつかない羽ばたきが
風にあおられ
じりじりと後ずさる濃い霧の中を
触角も羽もなく這いずる夜も
誰かの仕掛けた銀色の罠に
迂闊に絡めとられる朝も ....
空のどこかが
解けて
みずが零れる
雨
モノとコトの上に
容赦なく
みずが注がれる
雨
雨
ぬるんだ雨は
葉っぱを揺り起こし
やわらかな雨は
根っこにじ ....
{ルビ弓弦=ゆづる}が啼いている
火と風の言葉で
戦いはもう終わったと
あのひとはもう帰って来ないと
裸足で駆けてゆく濡れた樹下闇
白い裳裾を引きずりながら
胸には冷たい雫が流れ込 ....
最近よく父のことを思い出す。私が現状、ときにしんどいこともあり、でも楽しいことも沢山あり、負けたくないと思うからかもしれない。
このままではおそらく病死、あと一年もつかもわからない父に、私の ....
一.
雨あがりの きみの靴は
つま先が いつも
虹のうまれる方角を ながめている
二.
黄のバイエルを
途中でなげだしてしまった
きみの
メゾピアノで吐く息が
ス ....
アパート、贅沢な荷室
惰性の中で想われる 知らない人
知った風に 想われる人
私、贅沢な荷物
腹を空かせ、吹雪を想うひと時
空は曇り/乱氷帯・ぬかるみ・吹雪・川
語彙と眼球と ....
あなたの胸に、耳をつける。
はらはらと
降りつもる、ゆき。
さいげんなく現れる、ぶあつい雪片。
あなたにふれた手のひらが、やはらかく折り重なり
何層にもなってゐる。
ぼくのも、知らないひと ....
毎日毎日、何で飯食ってるんだろう。
性懲りもなく、毎朝顔洗うのは何故なんだろう。
飽きもせず、季節を繰り返すのは何故なんだろう。
そうやって考えたら何だか可笑しくて笑ってしまったよ。
....
心の中のゴミを掃く
ざぁ、ざぁ、という
あの音を聴け
塵一つ無くなった心の中の
真空の庭に
ひかりの鳩が降りてくる
そうしてひかりの{ルビ嘴くちばし}は
開き
....
蝶が
土にたかり
互いの喉に触れ
青い夢を見せる
幾度もの成熟
生まれ変わりを
軌跡を描き
焦がされている
羽が
また地面に落ち
辿りつけない木陰に
終わらない
あなたが死んで ....
忘れ物に気がついて
もと来た道を引き返す
立ち塞がる湿気
項垂れた街路樹
焦げた揚羽蝶
嫌々巻き戻される遊歩道
本当は忘れたままで
良かったのかもしれない
纏いつく濁っ ....
まだこれからも
咲いてゆくのだと思って
種を蒔く人がいる
空がこときれたように
雨がとつぜんやみ
後には思い出のように風が流れていた
大地もしっかりと
流れていて 古い
しきたりの中で ....
もうこれからは
咲かなくてもいいと思って
道を掃く人がいる
枯葉やら 紙吹雪
あるいは花びらと 花そのもの
それらで埋まった道を
木の箒で掃いていると
うっすらとにじんでゆくような
心 ....
夏の日の宇宙の深さ星の数
冷房費払うつもりで夏カジノ
チョコアイスとけきってまだ愛されず
夏館ネコがいっぱい出るテレビ
八月を生きるしかない黒揚羽
炎帝を飲み込みサ ....
銀行ATMの画面に映る
貯金残高の、底が見えた時
日雇いの如き自分に
歯軋りをしながら
この手を額にあてて、考える
一日の労働を終えて
家に帰れば迎えてくれる
妻 ....
昨日とおなじものは
いらないのに
明日になったらやっぱり
おなじもの?
君はかわっても
ぼくはかわらないのかな
いくつになっても?
うん。
将来のゆめを語るひとでいたい
九十 ....
ポリープが見つかりました原爆忌
夕涼み羽根軽くなる軽くなる
歯で弾いたギター燃やして夏の月
神々の人間いじめ天地炎ゆ
ハードルを全部倒して氷水
睡蓮がさりげなく咲く猫 ....
例え握りつぶしたとしても
きっと
手は汚れないと思うんだ
乾いてひび割れてきている田んぼにも
まだ新しいビルの真っ白な壁にも
しっとりと重たい町屋の歪んだ屋根にも
よろよろ ....
都会について語ると
都会は沈黙する、
唇はいつも僕にあるから
生き物たちが寝静まった深夜
列車に乗って
都会という名の駅で降りる
駅前では高層ビルが
ひんやりと脱皮をしている ....
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