「誰でもない何処にもいない」
何回目の夏を送別したのかは とうに忘れてしまった
火傷するほど熱い砂を踏みながら 水平線と湧き上がる雲の先に
いかなる幻影を見出そうとしていたのか ....
5年前の手帳に いつ正体を明かすか考えるというメモがあった
いったい何の事 疑問以前に笑いしか来なかった
果てし無い自分の浮遊感の頭を撫でる
結界を創っているわりに 網目の粗いザルで環境 ....
雨の匂いが
潜んでいる
濡れた靴下の爪先に
よれたハンカチの糸に
ほつれさせたじーぱんの穴に
更紗の青い染料に
ぱあまねんとがとれかかったおくれ毛に
やすりをかけたかかとに
ポケッ ....
出場種目を決めるホームルーム
男女を問わない千五百メートル走なんて
陸上部の長距離走者でもないかぎり
誰もがいちばんいやがる
手を上げる人なんていないのに
コーナーで ....
「最後の問題は答えを書いた人全員に丸を上げます」
先生はそう言って、その能面のような顔にくっついている唇を、申し訳程度に上げて微笑みました。
しんちゃんは不思議に思いましたが、先生の暴 ....
この男いいなと思っても
八分待って
性欲が80%まで上昇しなければ
その男とは性交渉を持っては
いけないと言われる
八分以下の気持ちなのに
性交渉を持った場合
ヤリマンと呼ばれ
村中か ....
満ち満ち足りて花は枯れ
棘立つ指で弄った
あれは神秘で現実で
僕は童貞を思い出していた
体は痺れ 呼吸が億劫だ
息は溢れ 肺が窮屈だ
夜と朝の差別を
蔑ろにしてきた偶像化を
....
トマトは好きだけど
トマトジュースは飲めない
っていうのと
豆腐は好きだけど
豆乳は飲めない
っていうのは
同じこと?
と彼女に聞かれたので
どうかなあ、
でも
僕は
牛肉も牛乳 ....
ノートのすみに書きなぐる言葉たち
隙間なく真っ黒になるまで書いてから
ちぎって筆箱に入れていった
ひとに見られないように
ぐちゃぐちゃに丸めて
すぐに筆箱は
切れ端でいっぱいになった
....
そんなに汚れた動機なんていらない そう思って動機を片っ端から捨てていったら 動機は全て消えてしまった そんなに美しい結果なんていらない そう思って結果を片っ端から捨てていったら 結果は全て消えてしまっ ....
摩天楼が{ルビ朱=あけ}に染まる時
黄昏の時間も止まる
ざわめく雑踏もどこか遠くの
出来事のように消えて行く
ビルの窓から見た街も幻
トワイライトイリュージョン
歪んだ時間の狭間の中で
....
考えないで
感じよう
継ぎ接ぎだらけの人生だ
考えてたら詰まるから
全開になって感じよう
そいつをうんとかき集めよう
生きてる意味や
未来への不安
どんな生き方になったって
問題は ....
眼鏡をはずし
目の前を水中に沈めれば
外灯は滲み
ひとびとは陽炎になって
せかいはちいさくちかく、まるくなると
おもっていたけど
無限のひろがり
おとこもおんなもなく
泳ぐような身 ....
ああ、うん、うん。
うん。うーん。
……え?
…ああ。
うん? は?
あーはいはい。
なるほど。
うん、うん、うん。
え?
うん、うーん。
ああ、へぇ。 ....
130903
ほい!
無防備のままに
投げ出された女の主体を
無自覚に踵で踏んづける
宿命的に対立の朝
鈍い目をした顔だけの男は
足音も立てずに目を背ける
....
ボクは
全力投球することに
全力投球したいんだ
ワタシは
運命を変えることに
運命を使いたいの
オレは
誰かを愛するために
誰かを愛したいんだ
アタシは
自信を持つため ....
空の彼方に
雲がすばやく流れている時は
家のほうが動いているような気がする
そう考えると足元がぐらついて
ああでもないこうでもないと
心臓に暗い汁が溜まってきて
余計なことを考えないように ....
{引用=
黒い肌の女が 枯れ枝のような
赤子をだいていました
たまゆら
乳飲み子は、欲するものがえられないと
それを知ると、女の乳首を舌でおしだした
砂塵の風
大いな ....
あの人は
優しい人のように思われる
あの人は
穏やかな人のように思われる
あの人は
楽しい人のように思われる
思われることと実際が
近いかどうかは分からない
けれど ....
蚊取り線香に
火をつけようとしたら
この家のどこにも
火がない事実に愕然とした
チャッカマンがきれている
マッチもない
かまどの代わりにIHクッキングヒーター
風呂場には電気温水器
....
小さな部屋で溺れている
静寂と沈黙と哀しみの歌
湿った枕と重たいシーツ
毛のくたびれたぬいぐるみ
世界を揺らすカーテンと
秒針だけは僕の敵
鳴らない鍵盤
潰した指先
掠れた声も
全部 ....
ひんやりとした
季節になりました
誰かが
口にしなくても
もう
夏ではないのです
あなたに
やさしい気持ちで
メールを返し
そう
口にはしないけど
自然に終わって ....
「ずっと、スカートなんか履いたことないよ」
男の子だから、ぼくは
薄荷の声を持っていないから
ならば女の子にだってそんな必要は無い
ガーリッシュを追い求めて
要領の悪さだけがさえなく空走る
....
手の届かない手の奥には
冷たい温度が流れる
温かいなんてうそ、うそなのよ。
わたしの血液の流れる音を
聞きたがるひとがいる
屈託もなく笑う
永遠を謳いあげる
胸のあたりがひしひしとす ....
ちくたく ちくたく
くたくた くたくた
ぐー
竹に数箇所 指を塞ぐ穴を開けた 息吹けば音が涼しげに貫ける
誰かが奏でて 私の心の穴を塞ぐ
竹の佇む容姿に囲まれ 包まれ そのなめらかさに 凭れる
誰かの軸と共有する 土の香りと爽やかな湿度 ....
くっぴんに雨浅く
猫っかぶりで畳遊泳
主張弁解の昨日より
謂われなき明日を詠いたい
六法全書を枕にすると
窓の向こうに{ルビ ....
無表情な父に声をかけると
その霧深い意識のずっと奥の
宇宙のかなたから
帰ってくるのかと思うほど
遠いところから
ゆっくり
微笑みが皮膚の上に戻ってくるのが
見える
「おとうさん」 ....
頂上から
山の斜面にある
噴火口のくぼみまで
火山岩の砂利を踏んでくだる
植物のない荒涼たる大地
坂の途中で
凹んでいるところは
地球のえくぼだ
そこからあがったところは瞑った目
....
やわらかな光が
彼女たちを包んで
もうこのまま
終えてしまいたいと
わたしは祈ったそうな
キミハマダ
タチドマッタママナノ?
庭に咲いたアジサイの
そのまつげに居座った ....
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