10月15日(土)、
少し遠くの図書館に行って、小説を借りてきた。陽だまりは懐かしく澄んでいた。小説からは、少しレモンの匂いがした。
(小雨の朝とは違う昼の光や、少し遠くに来たという身体の浮遊感 ....
あてもなく歩く
ただ空を見上げて
吐き出す
息の白さが
そのまま雲に
届いて
靴紐みたいに
解けそうになる
首に巻いた
マフラーは
時計の針と
同じ方向で
一歩 ....
三人分のメジナを
海から釣り上げる君の。
笑顔を思い出す夜に
家族という文字が
暗やみから落ちてきて、もう
もう泣いてもいいの。と耳打ちしている
染みわたっていくあたたかさの
ふかふ ....
二〇二一年十三月一日 「断章」
ジョンは五千人程の男女の中に見えなくなった──。誰も彼もが灰色のヴェールを被っている──、凍って粉々になった残骸は〝意識〟と呼ばれ、人々の中に動かしがたい様 ....
ウンチの実態は
食べ物の残りカスではなく
細胞の死骸なのだと聞いて
私は脳細胞の死骸だと
勝手に思ってしまった
確かにトイレに籠って本を読み
粘ると便が出ることが多いので
脳細胞の代 ....
おかしいくらい、
私の人生が冴えていたことは、ない。
ただの1度もない。
休日は後ろの席の嫌な男のことを
ずっと嫌だという思いが消えない
ずっと好きな人がいて報われないけど恋に囚われていた方 ....
はっさくや
植物学者の
家に有り
真っ暗なのは
見えないのではない
闇を見ている
無音なのは
聞こえないのではない
沈黙を聞いている
不毛なのは
生きてないのではない
死を生きている
広い視野と
....
この秋晴れに、階段を
一段飛びで
上る
ぐんぐんぐんぐん登る
どこまでもどこまでも昇る
すると、
涼やかな風に舞い
白々と透明な綿毛が
無数、数知れず
飛び交って来る
....
訳もなく
わきあがりうきたつ
午前のこの時間、この一時
わたしはひたすら
しずかなよろこびに貫かれ
無言でひろがる青空をみる
いつか、
この空の青みに
雷鳴が轟き
亀裂が走る ....
二〇二一年十二月一日 「夜の大海の中で」
ヤフオクで落札した、グレゴリイ・ベンフォードの『夜の大海の中で』が到着した。画像で見た表紙の傷は仕方ないけれど、本文はきれいだった。本体190円+ ....
躍動するこの魂は
年若くして老いた魂を後にし
悦楽に浸った青い春を
遥か飛び越え
美しさと残酷のセカイの深みへと
闇に包まれ入っていく
とおい、とおい
遠いよ
澄んで湧き出る泉の底 ....
なぜか得してるように見える
しょうがない人
なぜかいつもニコニコ和ませる
しょうがない人
なぜかスローモーション
しょうがない人
もしかして ヤキ ....
あなたは
私はあなたのもの
と 言った
華やかな動き
夏の花の笑顔
豊かな体
私は それなのに
恐れていた
こんなに鮮やかさは
私にはいつまでも
とどまらないと
華や ....
いつからだろう
わたしは
目的をもつことを止めた
ただ気ままに
気の向くままに
いきてゆきたい
そんなことができるものだろうか
そんな風にさえ思ったこともあるけれど
まあまあなんとか
....
僕は結婚して長い間女房は
屁をひらない女だと思い込んでいた
しかるに今は
僕の前でも「ブー!ブー!」やっている
「ああ!すっきりした」などと言って
恥じらいもなにもない
ここまでゆるんでし ....
わたしたちは歩く
可笑しなことはないのに
となりできみが時々ちいさく笑う
(なにか間違っている?)
でも訊くことなんかできない
わたしたちは黙って歩く
おおむねすべてのひとたちは
....
天空に
明るく輝く満月は
わたしの意識に
瞬間、響き捉えられる
君はパンクが好きなのか
富士ロックで
押し潰されそうになりながら
踊りまくったのか
満月は天空を上昇し
家々の ....
うすぐもり
ベランダから
なにを見ているんだろう
虫
鳥
雲
それとも
窓
ひとだけに
不自由がはびこる
気づくと
いつ死んだかわからない
カタツムリの
はりつめたよ ....
遠く
激しい雨が降りしきる夜、
官能の感覚の快楽を味わい
性愛も死の願望も体験し尽くし
肉の充足の限界に至って
虚無が虚脱が私の魂を痛打する
遠く
痛みの雨が降りしきる夜、
....
響きのなかに潜むモノ
闇のなかで光るモノ
遠い郷愁を掻き立て
内なる未知に
意識を招き入れる
波打つ旋律、躍る木霊
意識はその残響に包まれ
これ以上ない歓びに貫かれる
意識は待 ....
二〇二一年九月一日 「加藤思何理さん」
加藤思何理さんから、詩集『おだやかな洪水』を送っていただいた。おしゃれなつくりの詩集だ。さまざまな方向性をもった詩篇が並んでいる。物語性をもった詩篇 ....
○「朝立」
勃起している!
勃起している!
今朝はグッと天へ向かって
勇ましく直立している!
若い頃さんざん悩ましたものが
今は喜びとなっている
○「お天気様」
お天気様にはだれも ....
地球が一廻りして朝が来た
雨降りの朝、風が吹く
疼痛は収まり、意識はクリア
道行く人は目的を持ち
僕は温かな喜びに包まれ
今在ることを抱擁する
いつ崩れるともしれないこの覚醒に
ゆっ ....
くるくる廻って空の青
開けて明るみ輝き
白雲の流れ急速に
呑まれいく呑まれいく
世界はただ泰然と美しい
在ることの驚きは神秘は
退屈な日常に転がりながら
私たちはいつも見逃す
....
○「規制」
政治家は
抜け道も考えてから
規制する
○「アベック」
若い人たちは情報的だ!
この猛暑の中
手をつないで歩いている
○「女」
亭主と別れた女は
きれいになる
....
踊っている、躍っている
リズムが旋律が響きが
不思議な渦を巻きながら
迫って来る声、
沸き上がる直観が情動が
自由なイメージへと昇華されて
イメージは限りなく広がり
発声する、歌い語 ....
心細くなっていくのは
日が暮れるからだ
寒いからだ
暗いからだ
人生と重ね秋
子も生まれ
君のお家は
上る春
ライジング・サン
じゃないか
春売って
酒浴びてなお
恋に ....
9月になればまた学校が始まり、けれど暑さはまだまだ過ぎ去ってくれず、プールに入り終えたような夢見の感じが幻熱のように僕らを冒している 時間をゆるやかにしかし直角に左折するような季節のうつりかわり 教室 ....
夏の始まりは曇天 灰色の雲がたなびき 川として日常は過ぎ
ランチにはまだまだ早いな 僕は思った
流れ星を探すよりタイムカプセルを埋めよう
そんな僕は 飛行機の乗客で
23歳 透明なはずの身体が ....
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