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雨乞いをする鈴虫の鳴き声は鉛筆の芯を削るようだ
次第〃に薄らいでゆく窓
ちいさな発動機の音が近づいて来る
予定はまったくないのに、朝刊のもぐり込む音にまたドキリとしてしまう
時計の針 ....
望んでない炎
炎に{ルビ塗=まみ}れた稲わらが強引に{ルビ傾=かし}げる
カーテン越しから囁く者たちは
そこから離れなさいと
ただ 唇を動かす
ありえない色
塗り替えられた あの土地 ....
めだまやきには
苦痛をともなうべきだと
たまごがやかれ
失われるのは
とりのめだまの
源
だった
きみとしろみとその他もろもろ
たとえられて
身のぎせいを
あじわっている
なんて ....
季節は黄金色輝く稲の穂を尻目に、よくできた鳶色の瞳で追いかけるように単純には語れない 。
晴れ渡る日には地図を描いた布団を干す傍らで、照れ隠しに外へ飛び出す少年の姿も
大きく翻るスカートの裾 ....
ママは ついに
短パン タンク
にゃんも
もぞもぞ
おなかなめ
ぬいぐるみの
ファスナー
探してる
シャーっと
脱いで
でておいで
小さい
おじさん
会え ....
八月
隙間のない日差しが街を埋めつくして息をとめた地上
の生きものたちは白い化石になるだろうか
昼下がりの昆虫のように日差しを避けて地下に逃れた
人びとの背にうっすら
あの日の地核の影が ....
そのひとが
どんな人生を歩んできたのか
二秒のすれ違いでは
理解できないかもしれないが
考え始めることが
何かのはじめ
漠然としすぎているから
ためしに
どういう風に髪を洗っている ....
仕事をやめて
また風来坊になって
雲を仰いだら
鳥の群れが光った
へやにあったものはみんな売った
売れないものは捨てた
あの本も
あのレコードも
あの写真も
手紙も
何もか ....
犬猫とは違うことぐらい
判っているよ
※
でもね
薄汚れた服でサンダル引き摺ってた女の子
大切にしてもらっているのかな
パートのお母さんと
いつも家でタバコ吸っている男の ....
夏の
薄明と
薄暮とが
震わす弦
此の世と
彼の世との
あわいに張られた
金魚鉢に金魚
上から覗き込むと金魚
胸鰭を動かし
尾鰭を動かし
背鰭を動かし
何となく静止する金魚よ。
夏だけ生きている金魚
ほんの数リットルの水に漂う金魚
横から観ると大きく見え ....
なんとなく突発的なことをいわれて
あの日も遠ざけられた
七年まえの夏だった
ぼくはあの頃よりつよくなった
それでも失言したり
気持ちが暴れないようにするには
時間が ....
飾り部に出入りされている木の
皮をはがせば しらじらと
預けられていた夜中が
てっぺんから ひるがえり
白い髪を吐き まるまり落ちる
梳いていた指達
歩いていた足達
口づたいに行く ....
彼は初めて会った時、私をじっと見ていた。そして、
「ずっと(キミが)気になっていたんだ」と言った。
ビックリしたけれど、どこかで嬉しいとも思っていた。
それは、私を見つけた時、私のところまで迷わ ....
セミが鳴いている
それだけのことなのに
ぼくは宇宙にたったひとりだ
小学生で
ざりがにを釣ることを
おぼえるために
川ぞいへ
連れて行かれる
えさとかばしょとか
理由はよくわからないけれど
釣果には差が生まれて
移動をしても
変わらないものは
....
風は丘を越えて吹いている
丘を覆い尽くす向日葵は
風に吹かれていくらか首を傾げ
黄色い丸顔を撫ぜる風
道の下は荒れ地
昔昔その昔
そこは大きな畑 だった
広大な綿花畑 だった
コッ ....
頼りなげな黒い煙は
空に還ることもなく
密閉された風景の中へ
呆気なく取り込まれていった
昨日の端から一刀両断に
切り離された時空に
冬物の黒い服を着せ
ひたすら透明な汗をかいて ....
僕らの時代は再び春の陽射しに芽吹いた大きな花びら
(ひらひら)と蝶々は飛びかい
星空をあの輝く太陽のように見つめていたんだね 。
それでも(根性)とか(努力)とか、涙を汗のように拭いな ....
ちきこに ひとかべ そそうのことせ
のにかむ つきはむ そこゆにこごせ
ちりきに ましらお にながし とねすに
つつるに なめよお さしとせ わにうな
ちきりん ちきりん なそひに お ....
ちきりん ちきりん 角踏み立つ身に
ちきりん ちきりん 指混む夜更けの
ツル草 仕留めた 雷様を
腕も 巻き持ち まだ眠る
残る 一房 渇かぬうちに
暇をとらせた 赤闇 小屋 身に
....
ぼくはいびきをかくらしい。
知らなかった。
なぜ、知らなかったかといえば、
ずっと、
ひとりで眠っていたから。
ふたりで眠ってみたら、
ぼくが、夜中に、
なんどもおしっこにいくの ....
今日に限って 折傘忘れてスコール
タバコ屋の小さな軒先で身を寄せながら
雨粒を指で拾い 掌で{ルビ弄=もてあそ}んだ
店奥のシャイな婆さんは
アガリっぱなしの{ルビ緞帳=どんちょう}が下り ....
細く白髪も増えてくると (ほら)鬼がまたやって来る 。
皺だらけの手のひら
(負けちゃいなさい!)と (ほら) 鬼がまた つつく
カリフォルニアの青い空から裸の海にさよならをし ....
{画像=110721225828.jpg}
鯨にある指先(地上)の記憶のように
人間にも忘れてしまった記憶がある
それはsora(翼)の記憶
身体の奥にある翼(骨)の記憶を頼りに
背 ....
....
夜明け前
蒼い空に
身を削る月がいた
誰にも気づかれることのないように
まして獣たちに さとられないように
目覚めた女が背をみせる
静まり返った山森は、眠りについたまま
星をなくした夜空 ....
神々しい光りを放ち まばゆいほどに 輝く十六夜の月
此処に在りと 主張していた
あまりのまばゆさに 凝視できず
室外機の風がやわらかなそよ風に
下水道の水がさわやか ....
風は ふいに吹いて 窓を叩く
黒板の向こうに 鯨がゆく
地学の時間のあくびと 古生代
わたしが 海から来たのなら
うたたねで見た あの鯨は 真実、わたしの古い友人だ
だれかが私を呼 ....
われわれは
枝葉末節にて
生きるもの
幹に遠い
根に遠い
地を摑めない
空を仰げない
無知の世界
生の盲目
見得るものしか
見られない
枝の一本 ....
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