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きらきら
という絵本を
君に読み聞かせるのだけど
結晶の写真がきれいで
君のお気に入り
ひとつ 指さして
パパ! と言う
ママ! ととなりの結晶を指さす
次々に 結晶が
....
自動販売機
500円玉が手からこぼれる
行くつく先は暗がりの中
蹴りたい気持ちを抑える悲しさ
転がる 転がる
お金も 人も 人の心も
行くつく先は ....
万年筆の血液が乾いてしまったようだ
無理もない
数年うっかりと放っておいたのだから
いちにち、はとても長いくせに
すうねん、は
あっという間に感じるのはなぜだろう
風、が通り過ぎていく
....
草葉に風の足音
夏の光の深い底で焼かれる虫たち
夜に置き忘れられた
艶やかな目に乾いた夢が映り込む
生と死の歯車が柔らかく噛み合って
素早く回転する
濃厚で豊満な匂 ....
「眠り猫」
眠りたかった
眠り猫のようにまるくなって
幸せな眠りの世界に入りたかった
好きだった
すべてを合わせても足りないぐらい
そのぶん言葉にできなかった
「猫の眼」 ....
太陽の匂いが漂うんです
懐かしいあの土手沿いの道の一画に
両手から
はみだしてしまう大きさの
おおきな亀裂のあるトマト
とうさんが ....
湯の歌が激しく聞こえて来て
夕暮れに
東京渡辺銀行が破綻しました
ニーナの歌も聞こえてきます
締まった詩に成る予感に
母の田圃も駄目に成ります
何処からでしょうか
原始人でしょうか
激 ....
どこか
骨の
奥底に
黙って居座る
黒い眠りのような
小雨の朝
歯ぎしりする歯が
もうないのです
そう伝えたいけれど
そこには誰もいなく
部屋の中には
少年のまま
老いた私 ....
霧吹きのような雨はふかみどり
胸の奥まで吸い込んで
わたしは森になる
しばらくすれば
じゅうぶんに水を含み
耳を傾ける
彼らは
永遠を指し示すこと ....
奥深く海底の熱水床
わたしが今呼吸をしている処
群がる白い蟹は
わたしであるための遺伝子を
鋏で千切りまた繋げる
染色体を失った肉体だが透明ではない
保護色を身に着けたわけでも ....
幼いころの古びた靴は
シャベルよりも
ずっと小さくて、
土遊びをしながら
泥だらけで夕暮れに沈んでいた。
永くて遠い春はすでに
まなざしの向こうにあって、
冬を越えるたび
軽くうな ....
1
外が言う聖域なき改革に
少し笑ってから
だれにも教えるつもりのない
ひとつのメールアドレスを
登録して機能させる
(そこはサイバーエリア)
(そこは賃貸住宅) ....
夕餉が終わると皿を洗い
油や醤油で汚れた台所を
布巾でぬぐう
鍋も皿ももとの位置に戻し
静けさと落ち着きを取り戻す
風呂を ....
風が突っ走って往く
いつか追い越して往った風たちが また
地吹雪は踊る 白いベールを靡かせて
渦巻いては解かれ素早くさらわれる
終わりなく交わされる遠吠え
異言の霊歌 あるいはレクイエム
....
蛇口が
みずうみにつながっているように
蜜柑は
五月の空へつながっている
かぐわしい白い花
まぶしい光に
雨だれに
ゆっくりと過ぎてゆく雲に
蜜柑をむくと
その皮は
しっとりと ....
キムチトーストにはまっている
いまさら短時間高収入の仕事に就くすべもなく
ちぎられた時間のなかでファーストフードならぬ
簡単な食事と全自動洗濯機
電子レンジとオーブントースター
せまい部 ....
昨日、コゲラさんに出会う。木を、こんこんしてらした
消防車が大通りを埋め尽くす
けたたましく鳴るサイレンの音のなか
たくさんの赤いライトが点滅する
何事かと人集りの方へ行ってみると
一軒家が燃えていた
炎は唸り声を上げる
周辺だけ灰色の ....
明日を生きることを辞めれば
私は現実を見ることができるのだろうか
現実は淡い霧の中に
木漏れ日の陽光が漏れる場所
明るさは角度に反射し
暗さにより大半の視界を覆う
私の視力は世界を見るため ....
手塚治虫が死んだ歳まであと十四年だ
一日十八時間起きてるとして
十八時間×三百六十五日×十四年
まだ九万二千時間もあるじゃあないか
これからの人生でいちばん大切なこととは
....
紫色の人工の夜空に駱駝は歩む。
星から星へ、月の満ち欠けを慈しむように。
鼓動は無数の星の瞬き。
銀河のオアシスで緑の水を飲む。
銀河鉄道の乗客はいまだ起きている。
窓際 ....
理由があって神経を尖らせながら
ほとんど毎日を泣き暮らしている
ほとんど毎日決まったひとたちに
メールか電話をして呆れられてる
けれどみな優しいからあれこれと
まくしたててもいきなり呻いても ....
またくよくよと絵の具を捏ねては黒くしているあなた
飛べないばかりか落ちていくこともできなくなったあなた
海だとか空だとか持ちだして悲しんでいる
いいよ いくらでも
このあいだふたりで行った ....
まだすこし早いが会社に出掛けることにした。
ほんとうは繁治も裕子ちゃんを追いかけたのかも知れない。しかし道中にふたりの姿はなかった。
ひと駅まえで降りて会社まで歩くことにした。
あした姉 ....
指で感じて
頭で捏ねくり回して
指で嘘をつく
唇で感じて
頭で探し切れず
唇で誤魔化す
背中で感じても
頭は留守で
背中は語れない
爪先で感じても ....
無い背筋を伸ばし
まな板の上にぬっと立つ
おまえの
下段から冷たく射るような
視線――まったく読めやしない
包丁を握り
ジリジリと
間合いを詰める
――突然
ながい触腕(しょくわん ....
アパートの階段をあがり鍵をあけ繁治は部屋に義兄を探した。戸をあけてすぐのところに狭い台所があってベランダまで見通せる2Kだ。奥の畳に日だまりが揺れていた。繁治は静謐すぎる気配にはっとした。
トイ ....
あれは空だろうか
それとも海だろうか
わたしが欲しかったのは
あの青だったのだ
体中の骨を関節を筋肉を
すべてを伸ばし
掴もうとす ....
愛想無かった白いこの部屋の
窓辺を好んで佇んでる君は
「構わないでいい」と強がってるけれど
冬の寒さが少し苦手で
返事がなくても会話続けてる
離れていてもずっと考えてる ほら
こ ....
木々は裸に剥かれ冷たい風に
枝先を震わせている
白いベンチは錆ついて
今はだれも座るものもない
緑の葉が深呼吸を繰り返す
....
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