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船が出るのを
見ていた
風が吹いていた
揺れていたのは
波なのか風なのか
花なのか僕なのか

船が帰って来るのを
見ていた
もう帰って来ないものも
見ていた

揺れていたのは
 ....
人になりたかった
人に憧れて
その日を待っていた

等しく並べて
輪郭をつくると
それは人間だった

近づいては遠ざかる
消えそうな
わたしの輪郭

人は人がいなければ
人 ....
「先生のじゅぎょう、好きだよ」

その言葉が眩しい
たとえそれがしわくちゃの
紙切れに書かれた言葉でも

ノートの端をちぎって書いた
ひらがなばかりのその文字が
いまの僕に ....
 
やわらかく揺れる姿に
瞳を奪われ 手を差し出す
水面にうつる月の中で

蒼く煌めく波は 僕を誘い
届かないとしても
その幻想を受け入れたい

そんな小さな願いが
指の隙間から溢 ....
私は
どこへ向かって
石を置いているのだろう

ずっと遠くへ行くため?
それとも
今居るところから跡を濁さず飛び立つため?

川に石を並べて渡ろうとしているように思えるときがあ ....
突然放りこまれてしまった


病院の待合室にすわらされ
時計の針が無表情にすすむのを
昼メロのデジャ・ヴのようにながめる


「ママ ごめんね」
かすれた声の一言で
キミは幕開けを ....
ルール
受付にて、鍵を受け取る
駅までの交通費はお客様負担
駅のコインロッカーを開け、自由に閲覧してよい
それを取り出し、手に取ってもよい
取り出した場合は、一駅のみ移動してもよい
(その ....
その言葉を言われた時はショックだった
だからいつもより大きく笑ってみせた
会場は相変わらず賑やかだった
なぜここにいるのか分からなくなった

みんなと別れた後の車の中は
独り言が虚しく響き ....
                    080707



お天気のことを気にしていれば一年があっという間に過ぎて何ごともなく過ぎてゆく、そんな気分になれるあなたは幸せなお方よと、猫が鳴く。
 ....
{引用=
振り返ってはいけない
前がわからなくなってしまう
声を出してもいけない
進んでいる事に
気付かれてしまう
前だけを見つめて
トンネルを抜けるまでは


遠くに小さく見え ....
スナックで知り合えば

たわいもない話をして

エレベーターで送られて

手でも振ればさよならできる

夜の屋上できみと話せば

ケンカでもしなければ

おたがい立ち去れないよ ....
(?)

久しぶりのドライブは仲直りのしるし
お正月に学生さんの駆け登る急坂をアクセル吹かしながら
ふたりを乗せたクルマは芦ノ湖畔を目指す

車内にチェックを入れてみても
知らないおんな ....
家の近所のファミレスで 
ずーっと本を読んでいた 

顔を上げるといつのまに 
店の外の世はふけて 
店内に客はぎっしり 
がやがやと賑わっていた 

テーブルの間を
小走りする 
 ....
 
 
コインロッカーの側に
コインロッカーがあって
そのことだけが
片隅のようなところで
どこまでも続く
何もない、の人が
鍵を開けていく
と、少しずつ
指はあやふやになり
僕 ....
ある日家に帰ると
コインロッカーがあった
お父さんも使っていいのよ
妻が言うけれど
いったい何のために使うのか
僕にはわからなかった

それでも
次々とうまっていく
コインロッカー ....
何か大切なものを
過去に忘れてきてしまった
そんな気がする

握りしめた手の中には
小さな鍵がひとつ

それが何の鍵なのか
それも思い出せない

わからないまま街を歩いた
見覚え ....
きれいな名前をもらった
壊れないように
ちいさく口ずさむよ
動かない両足を
なげだしたまま



今夜も
きみは訪ねてこないね
夜のじかんは
やさしく騒がしくて
フラスコの中に ....
手ごろなプールがないと
汗でぼたぼた水溜りを作りながら
巨人は初夏に愚痴をこぼした

海なんてどうかねと
杖をお守りにしている老人は
巨人には見えているだろう河口を指差した

大きな足 ....
{画像=080523225735.jpg}

大丈夫?
そう言って母はいつも
額に手をやった
そう言えば額の熱は
手で繋がっている


39度の熱を出した
娘の額は汗ばんで
手を ....
燃えるごみを
ごみ捨て場へ持って行こうと
外へ出たら雨であった

透明のビニール傘を差して
そのままぼんやり空を見上げる
水滴の降ってくるさまが見えるのが
大変おもしろい

周囲でく ....
まだ
夜は
寒いので
海岸に落ちていた生乾きのコートを
拾って羽織った

シャツも落ちていたが濡れていて
靴も落ちていたがサイズが合わず
人間の男も落ちていたが
触るとぬらぬらし ....
最高でありたいことと
最低であり続けたい自分が同居し
今日もベッドの中で震えている
気づくと
電気を消した程度の闇に
飲まれて
抱かれて
溶けそうだから
いつも声を出さずに
泣き続け ....
 *
優しく風が吹く、
僕はそれを背に受けて、走り出す、
追い風を受けながら
加速して行く

風を感じなくなる迄
加速して、
風と並んだら、
風を孕んだら、

今度は一気に、
向かい風を生み出す位に ....
二年後の自分が夢の中に出てきた
相変わらず品出しばかりしていた

学生気分も抜け切らないまま
いつの間にか七月になっていた

チーフは自分より早く仕事を始めて
自分より遅くまで ....
空と海とが
おなじ青だと思えるほどの
白い砂浜だった

波打ち際には
貝殻がおどっていて
それにあわせてはしゃいでいる
君がいた

スカートのすそを気にしながら
そ ....
             080703



カワガラス
オレンジ色を
四角に染めて
生きる渇きに
備えてる

 (保有期間が過ぎたので
 (補修用性能部品を
 (絶対に
  ....
まっすぐ投げてくる君の言葉では
あまりにも強すぎて受け取れないんだ
気持ちを言葉にすればするほど
一つずつ嘘つきに消えていくから

なぜ、なに、どうして

言葉が花に出来るなら
君の口 ....
生きたまま
乾いてる
かさぶたをはがすと
地下鉄は走り
首都圏は湿りながら
鼓動を返す

洗濯機が
すこししずつ
ホームに近づく
近づくものを
選択して脱水する

 ....
身体の中で潮騒を飼っている
辞書はそれを焦燥や憂鬱や歓喜などというが
潮騒はそんなにもシュハリ、と
姿を変えるものだろうか。

生まれて初めての始発に乗った。
どうしてだろうかとは考え ....
もう忘れてしまったから
思い出せる
縦に細長い
三角屋根の家は
白い壁に
木の階段
小さな抽象画が
三つ
上って行くと
グランドピアノと
背の高い譜面台
バルコニーには
テーブ ....
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