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捜してきます と書いたメモを
台所に置いて 家を出た 午前三時
まだ 真っ暗な道をひたすら運転する

公園 飲み屋のある所 よくわからない道
夫が 電話のひとつもよこさないで
友達と飲んで ....
窓辺からずっと虫の音がしていた

部屋をくらくしてそれを聴いている

目を閉じているのか

目を暗やみに開いているのか

もうわからなくなるくらい

虫の音につつまれていた

 ....
臨月でお腹の大きい妻が呼んでいる。
僕はいつもの公園で二日酔いの頭を抱えながら、
三歳の息子と遊んでいる。

繰り返し繰り返し
同じ砂山を作っては壊し作っては壊し、
何回作っても彼の作 ....
 
 
死に目に会えなくて
後悔してるなら
その数分前
まだ意識があった時に
電話すればよかったのに
できなかった

ここ数年
父に電話したことがない
理由は
ただ照れくさくて ....
 
 
ゴールデンベアの
帽子を買った

父が好みそうな帽子だったので
贈ろうとしたけれど
もういないので
私がかぶることにした

ある日
エレベーターに乗る ....
雨が じらしじらし
とうとう降らずに
夜は湿気が足りないようです

星が身震いした回数を
月が数えだすと
黒の風景が深まる

秋の葉の上にそっと
乗せたっていう
メッセージは朝に届 ....
夕暮れの道場に電球が光る
入口の傍らに鉢植えの赤い薔薇の花
母と一緒になって道場を覗く
柔道着を着た大人と子どもたちが
笑顔で挨拶する
その中にキツネの目をした小学校の同級生がいる
見つか ....
つきがこうばん たべました
けいかん ギャングをついせきちゅう
あとの あきちはタンポポの
しゅうかいじょうに なりました

+

かたちのない としょかんで
かたちのない ほんを ....
他人の同情を引く
そんなゆとりがあるのなら
もう大丈夫
砂漠

{引用=飽和湿度に近い街で
渇いた自分を見ている
店のガラスだけではなく
道行く人々の顔にも
同じような表情が広がって
だから
ときどき
父や母の顔を思い浮かべる
のだろう ....
蒸気機関車の車窓から
景色が後方へ飛んで行く
山は碧から朱に変わっており、
山肌には不気味な道が這い回る。

しゅっしゅらしゅっしゅっしゅ
しゅっしゅらしゅっしゅしゅっしゅらしゅっしゅ
 ....
平日は
ぎっしりと湿った砂が詰まった頭に
素敵な大人のお面をつけて
行列の最後尾で傾きながら
特別快速の通過を待っている

休日は
いっこうに衰えない逃げ足に
穏やかな家庭人のジャ ....
               100909






箱の中から
取りだす石ころ
お弾きのように一列に並べた。
テーブルの上の石ころたちは
鈍い色を放ち
眩しそうな目をし ....
 
 
水底にオルガンが沈む
鍵盤で遊ぶコオロギは
青い魚に捕食されてしまった
戻ってきました
ポソポソと語り始める
あなたの口元から
いくつもの砂がこぼれ落ちる
あなたの内に広がる ....
 
 
もう解約したはずの
父のメールアドレスに
メールを送る
すぐに返事がくる
なんだ
やっぱり生きていたのだ

Delivery Status Notification (Fai ....
咲いてる花に
命感じて
触れない手でだきしめる

薄い色の
その命に
なにかを託して歩き出す

認めてほしい
心のありか
だれかがいれば救われるの?

想いを重ねない
川の流 ....
弟と拾ってきた仔犬
団地では飼えないからと母にきつく言われ
泣く泣く拾った場所へ戻してきた次の日

くんくんと悲しそうな鳴き声忘れられなくて
自転車に乗り夢見ヶ崎まで

小高い丘の上には ....
{引用=



夏がころがりおちてゆくのを
陸橋のうえから
ぼくは
ずっとみていたんだ
いつかかならずくる
嵐が
ニンジン畑のどこに潜んでいるのか
だれも知らないことが残念でなら ....
 
 
今日もまた
おなじ道を通って帰る

いつかあなたと
偶然会った
あの道だ

白いクルマに乗ると
あなたはいた
これから松島で
ゴルフなのだと言う

そんな日も
あ ....
あんなに月といっしょだったのに

金星はひとりぼっちになっていた

でもそれは

俺の見えている世界だけのお話で

じっさいはなにも変わらないよな

流れ星だ!しばらく見つめていた ....
やさしさを込めたはずの言葉の前に
氷のように冷たい壁を感じるのは
わたしの中の本当だからです

どうしても感じずにはいられない
わたしの中の冷えきったもの
それが目の前に在るのです

 ....
{引用=
夜の鉄塔に
不意に生える街
怯える目を
置き去りにして
黒々と
増える

天辺から
樹が生えたかと思うと
それも鉄の塊
夜が音を立てて吼えた
音にならなかった
だが ....
 
 
壊れたメトロノームの
壊れたリズムで
第一楽章は始まる
歪んだ旋律が
琥珀色のホールを満たし
それでもヒトたちは
祈るように席に座り続けた
やがて楽団員が一人また一人と
舞 ....
小学校から帰って
叔父に自転車の運転を習う
家には大人用しかない
「両足がとどかないよ」
「おれだってとどかないよ」
叔父は自転車のサドルから腰をおろして
片足しかとどかない姿をぼくに見せ ....
 
 
前田屋というそば屋で
四人でそばを食べた
あれが最後だったと思う

ほんとうは
生まれたばかりの息子と
奥さんのそばに
いなければならなかったのに

遠いところから
会 ....
{引用=
雲烟の中
銀河座標に沿ってゆく
冷たい蠍火
真夏の巡礼
迷うこころが重なってできた
道の途中で
重力だけ頼りに立っている
同じ足で
アクセルを踏む
ラジオから流れる
地 ....
ラジオノイズ

三秒先の暗闇から

明日の天気を届ければ

雲を脱ぎ捨ててしまう

その少女、青いシャドウ、巨大な蛾のような

指先に灯る重力が

心をそっと撫でてゆく

 ....
イタズラ仔猫と一緒に 紅茶を飲む
空色の空を眺めながら なんて
当たり前の ことなんで

紅茶から立ち昇る湯気を混ぜて
ミルクティー風味に 仕立て上げる

見た感じと 触る感覚 味わいは ....
希望があるから絶望があるんである
絶望したくなかったら
希望なんぞ持たぬがよろし

数独を解くのに飽きたわたくしは
今日七杯目の焼酎をつぎながら
わたくしの幸運なる結婚生活について
(た ....
                 100831





クリスタルの庭園に
カットグラスの彫像を納める
納入予定日は1ヶ月後
手慣れた職人さんは熱中症で入院中
そのお弟子は ....
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