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小さな瓦屋根の付いた
土塀が続くわき道で
赤い郵便バイクとすれちがう
黄土色の築地塀はひとところ
くずれたままになっていて
原付のエンジン音が
その空隙から逃げていっ ....
私のこころには
ちっぽけな美しさがある
ささやかな優しさがある
愛された記憶がある
愛した記憶がある
ただただ
愛するひとの幸せだけを祈った純粋がある
醜さに満ちたこころにも
....
職場での問題やら
他色々と
出口が見つからず
地団駄を踏む心持ち
状況がすぐ見えず厄介である
自分を少し見失っているよう
これはいかぬと思い
久方ぶりにお茶を ....
《最も{ルビ穢=けが}れた山の頂において おれは神をも殺す》
この脳は霧に侵された
この脳は血に潰された
この脳は胞に乱された
汚辱のこれの液が{ルビ睫毛=まつげ}をつたい{ルビ硝子=ガラス} ....
私の背中には翼が生えている
それは私以外は誰にも見えない 見せない 気づかせない
隠したそれは 白い羽根を震わせ
朝露に濡れた木々の隙間を縫って 花びらの表面を撫でて
寝ぼけ眼 ....
食卓に箸置きを添える
といってもそれは箸置きとして売っていたものではなく
両端をねじられたキャンディ型のフォルムの
ベネチアンガラスの小さな置物で
ずっと前に
ベネチアの運河に架かった
橋 ....
建物が殺されるとき
染みついた生活の影が溢れ出して
まるで血のようだ
建物が殺されるとき
流れる血を拭うこともできないで
人の手によって
効率的に殺されていく
そんな彼らに惹かれ ....
長男の叔父が相続して売却されるまで
二十五年間空き家だった
母の実家
大きな日本家屋の庭で
剪定されない樹木と荒畑
雑草の茂る一角に、水仙が
亡くなった祖母を忘れじと香る ....
こころに宿るこのモヤモヤが
とぐろを巻いてる
私を言葉で助けてと
静かな叫びに
絡んだ結び目を
丁寧に一つ一つ
解いていくと
助かりました
ありがとうと ....
そよ風で編まれた
風の言葉に
連れられて
私の耳は進んでゆく
行く先は分からないまま
雑音混じりに
聞こえる
ここから
静かに静止する
最後まで
たとえ無様な最期であっても
「あ ....
朝、目が覚めたら、自分のあそこんところで、もぞもぞもぞもぞ動くものがあった。寝たまま、頭だけ起こして目をやると、タオルケットの下で、くねくねくねくね踊りまわるものがあった。まるであのシーツをかぶ ....
生き物として残り時間はもうそう多くない
やっかいなのはいつまで、なのかは誰にもわからないこと
いっそ自分で決めてしまえば楽になるのかしら
喫茶店でクリームソーダを飲みながら
思い出を誰かに ....
さまざまな
自分の欲と
向き合えば
不安の元はここにあるから
放てば満ちるさ
・
光合成をする
青葉
陽に
透け
足るを知れ私
・
※ 五行歌 ....
階段に
月の花びらが落ちている
けだもののまばたきの前を過ぎ
けだものの舌に拾われる
何も無いところに花びらを見るものなど
邪険に扱ってもいいのだ
邪見に扱うこ ....
ひとつの、無限の神様たちがクジを曳いて
行き先を割り当てるの
きみはジェーン、あなたはトッド、あの子はエーゲ海、絨毯、松の実、石の影
人類最後の嘘って何だと思う?
命? 神様? うーん ....
日本人とは観念である
何処かで誰かが既に
言っているかも知れないが
私は最近強くそう思うようになった
日本人とは人種でも国籍でもなく
その精神の有り様を表すものなのだ
日本人は
....
左右の花瓶に生けた
百合の花
花びらの隙間に
ひと雫の涙
もう二度と会えないんだ
花の香りに慰められるのは
僕の方
空っぽの手のひら
重ねる君の手はない
閉じ込めた記憶
....
とけてゆく熱視線
ついにあなたはサングラスをつけて
塁にランナーはいない
どちらのチームにもヒットさえない
何が当たり前なのか知れないが
きっと引退した先輩は
テレビでこの野球中継 ....
祝いの誕生日
庭に切り殺した 美しい植物をあげる
3歳児の顔で 姉は
うさぎの顔のついたスリッパの方がよいと 駄々をこねる
それは、植物よりも利便性が高いから
それは ....
洗濯機のとなりで
展覧会があった
淡い色だった
人々が行儀よく
並んでいた
わたしも会場に
入りたかったけれど
チケットを
衣服と一緒に
洗濯してしまった
昨夜折った笹舟を ....
少女がしゃがみこみ
自分の影を古いアスファルトに垂らしている
路地裏、午後三時、大安の日
アパートの二階
アルミの冷たい窓枠に肘をついて
しばらく一人でぶつぶつ何事かを嘆いている彼女を見 ....
最近の人間界
さぎを称した
サギで騒がしい
サギの術にハマると
お金は羽ばたいて
闇の空へ消えていく
サギの巧言令色
サギの策略陰謀
気が付いた時は空の ....
(また降りそうになってきよった)
泥酔状態で唄う桜坂 音痴でふざけすぎるけど
黒いネクタイと白いワイシャツが いつもより艶っぽかった
「泣きそうになったわ」と あとで口にした
その ....
道の先で紫陽花が咲いて六月を知らせるように
淡い朝方の日差しが 蟻の姿を照らしたように
海の方から吹く風が潮の匂いを運んだように
夜に階段の軋む音から人の気配を感じたように
貴 ....
昨日から怒っていた
珍しく怒りが収まらなかった
なので
タロット占いに行った
占師の見立て通りの三ヶ月間だったことが
背中を押した
占いへ行ったきっかけ ....
スーパーに行ったんだぜ
魚の骨のパラダイス
くっせー 笑えるよな
キッショ!
ひっさしぶりや、こんなキッショいの、うっわマジでキッショ!
外はみぞれ、何を笑うや、レニン像
キモ ....
地上のある一部の上を
浮遊しているシジミチョウ
少し伸びている青芝には
いちめんの陽射し
こめかみを撫でる風と
こうしていま、私はひとりで
ビルの壁際に沿った歩道を歩き
....
その立派な姿に
私はオドロイタ
どこの誰だかは
すぐには理解したが、
今の私からは想像できなかった
自信に溢れ
ゆうゆうとゆったりした佇まい
静かな口調で
....
「この靴みて!」
靴底の端が切れてパカッと割れた状態になっている
スニーカーを私へ差し出して
「朝は、こんなんになってなかったわ」
悪戯だと思い込み反応をさぐる様な彼女の目付き
....
深海に刺す淡い光で満たしたかった。世界中をなんて思ってた。手が届かない事を知って、深く深く沈んでいく。ゆらゆらりとこぽこぽりと埋め尽くしていく塩辛い水が。鉛のように重くなっていく体に、浸み込んでゆく。 ....
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