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怒りを抱きしめる
しっかりと両の{ルビ腕=かいな}で{ルビ抱=いだ}いて
だれにも盗まれないように

他人の怒りに迂闊に乗っかったりしない
酔っぱらいがハンドルを握る暴走車に乗るのと同じ
 ....
印画紙に染みついた影
人生から落とすまいと誓っていたものから
手を離した瞬間を覚えている

何度も何度も反芻する
記憶が消化器官と口内を往復する
輪郭がとけ筋も擦り切れ味もなくなる
そん ....
嘔吐物の匂い
リネンの手触り
二日酔いの痛み

神さまが死んだあとに
うまれてしまったので
自分の重みを
神さまとわかちあえない

昨夜
目につく鏡をすべて割ってしまった

や ....
毎日アンパンを食べている
このアンパンはすべての栄養がバランスよく入ってると宣伝されていて
飢えないためだけに食べる

完璧な栄養のアンパン
それを手にしたブラウン管のなかの刑事、張り込みを ....
新年のはじめての夕焼け
久々に会う家族とこたつで雑煮などを食べ
あるいはふだん遠方に住む同窓と旧交をあたためていた
あの日

それは突然に来て
なにがなんだかわからないうちに
時間がひび ....
手のひらですくえるほどの軽さ
ふっと息をかければ羽毛のように
水のようにさらさらと
それくらい
それくらいと言いたいのに

あなたが踏んだ泥は何億年後かにも
化石になって残るだろう
た ....
神を探している
渦巻く嵐に仕え
霞に額づき
灰色の聖餐を受ける
そんなことができるような神だ

雪が降るよ
遠く故郷を離れ、胸の中に
あの重い、湿った
削ったばかりの木片のような
 ....
ひみつ
口にもしないから
風も通らずよどんで
古い醤油瓶底のようなそれ

そんなものが胸のすきまに
たまって
口がどんどん重くなる

もう一言も発せないから
すこしばかり目 ....
花の種を植えようよ
そこに種があるかぎり
植えようよ

おおきな水が
うずまく火が
ようしゃない光の炸裂が
通っていったあとの
街の
そのあとの
地面を探して
土があれば
植え ....
走ってる
走ってるよ
ただ走るために走ってる
ああ、明日が追いついてくるよ
影が手を伸ばしてるよ
もっとはやくしなくちゃ
とまったらだめだよ
立ち上がれなくなっちゃう

足がもつれて ....
秋に撒いた種が花を咲かせたか
わたしは知らない
春になる前に去らなくてはいけなかったから
瓦礫のなかに
そっと咲いていたらいい

眠ると亡くなった人に会える
まだ生きているような感じで
 ....
1台のシーシャのように
同じ味の夢を共有した
あおい煙をくゆらせて
交互にホースを持ち替えて
ぽつりぽつりと交代で話す

夢ってね叶わないんだよね
そんなこともわかる年ごろで

けれ ....
口を開こうとしてやめ
口を開こうとしてやめ
そのうち億劫になってごろ寝をする

現実が早すぎる
明日も生きるはずだった人たちの時間が断ち切られ
まともな水も食料もない

そんな日々が続 ....
闇のなかへ祈りをポンと放り込む
どこか奥のほうでぱしゃん、と水の音がする

跳ね返ってくるかすかな水音が
応えなのだろう
それを紐解いたりはしないけど


冷える夜に丸くなって眠る
 ....
焼き場で
まだ熱い骨を拾いながら
生きててえらかった
と言う
レエスの縁のハンカチが
小さなポケットからはみ出して

花に埋もれたあなたは
びっくりするほど小さい

いつ終わるのか ....
いま生きながら埋葬されている
あなた
血の滲んだ手で墓掘りのスコップを握ってる
それもあなた

あなたのお葬式は
だれも知らないうちに行われる
正しい名が呼ばれることもなく
墓標もない ....
爪を剥がす
わたしの指は二十本あるので
二十回できる

それはやさしさの残機

不安に駆られるゆうべは
脳を取り出して洗う
ホームセンターで売ってた一番強い漂白剤に浸けて
洗面台でじ ....
なにひとつ持っていかぬという気持ちで
日々、靴をはき
仕事をし
夕飯の買い物をして
靴をぬぐ

思い出も悲嘆も後悔も
生き残った人たちのもちもので
三途の川の向こうには持ち越せぬ

 ....
いままで亡くなったひとびとの
すべての墓に供えるには
花が足りない

そのことをかなしむこともできないほど
墓標は増えつづけている

忘れられた
記されなかった
記憶のなかに
わた ....
きょうのわたしはしにました
あしたのわたしもしぬでしょう
でもまたうまれてきてしまうでしょう
そのようにし いきてきた
ぼくはひとりでなんでもできるよ……!
という稚さを
大人になっても捨てきれず
いや、ますますひどくなり

おさない傲慢さと足りなさが
反響し
一個の駒のようにまわっている
ぐらぐらと今 ....
拝啓と書く
敬具で〆る

小学生のとき
電話とメールというメディアの違いを考えよ、という課題があった
今はもう、そのどれもがふるい
既読がつき、いいねがあり
三分の空隙にすら意味がうまれ ....
本田憲嵩さんの凍湖さんおすすめリスト(22)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
オパール- 凍湖自由詩5*25-6-14
反芻- 凍湖自由詩725-4-28
無痛- 凍湖自由詩625-3-30
アンパン- 凍湖自由詩425-3-24
あの日- 凍湖自由詩2*25-1-1
たましいの重さ- 凍湖自由詩924-12-30
神を探している- 凍湖自由詩324-12-25
ひみつ―澱- 凍湖自由詩524-12-18
種を植える- 凍湖自由詩324-11-7
走りつづける- 凍湖自由詩424-10-6
花を渡す- 凍湖自由詩524-9-29
煙の味- 凍湖自由詩324-5-22
ルート- 凍湖自由詩7*24-3-2
まどろみ- 凍湖自由詩824-2-3
熱い箸- 凍湖自由詩624-1-17
いつしか百年がたち- 凍湖自由詩1123-9-23
日曜日の家事- 凍湖自由詩823-9-15
向こうの花畑だけが- 凍湖自由詩1122-12-11
いままで亡くなったひとびとの_すべての墓に供えるには_花が足 ...- 凍湖自由詩822-11-19
そのようにし- 凍湖自由詩222-11-4
ままならぬ- 凍湖自由詩221-10-23
文通- 凍湖自由詩1821-10-10

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