去年の秋のことだ。
老婆がひとり、道の上を這っていた。
身体の具合が悪くて、倒れでもしたのかと思って
ぼくは、仕事帰りの疲れた足を急がせて駆け寄った。
老婆は、自分の家の前に散らばった落ち葉を ....
塀越しに高く高く
はなみずきが咲いた
芝生に植えられた一本の花水木
随分昔のことのような気がする
裏口から出られる婦人は
いつも和服をきちんと着て
わたしににっこり微笑んで
丁寧 ....
幻のような町にいた どこかで風景が流れる光景を眺めていた 音のない世界だった 時折誰かとすれ違った気がした なにも見ないようにしていた 鳴いている仔猫を見かけた気がする 歩道橋の階段を登り 車の流れる ....
すべての駅は
改札を捨てて
だれかのおとしたメロディを
つぎはいでゆく
終点が
ただよう終着駅へ
咲いて
散る
それしか
人は見ていない
散って
生きる
そのことを
人は見ていない
愛でて
酔って
呆けて
憐れんだら
人は春を忘れて
葉桜の下を ....
気のつよいのは、はは
泣きべそなのは、ちち
そんなふたりに、わたしはよく似てる
いつになってもこのかなしさは
変わることがない
いつになってもこのさみしさは
何にも代わることはない ....
ボーナス制度とは搾取ではないか。
封建制度の名残である。
賞与は褒美として渡される。
縛りつけるつもりなのだ。
(ボーナス入るまで、やめないでねって。)
給与だけなら12回の手 ....
ここ半年で二人の女性に片想いをした
妙なことに二人とも腰に複雑なボルトが埋め込まれ
夜のお付き合いは出来ないと言う
ぼくも薬の副作用で役に立たないでいる
精々がハグをしてキスをすることしか出来 ....
きみはどこでおりるの
ないしょだよ
そっか
ほしへかかる鉄道
どれくらい経ったかい
あれからどれくらいたっただろうね
君が降りてから何年経ったかい
ぼくがおりてからなんねんたった ....
絶望を嫌がってました
実は気持ちよかったね
でさ
苛立ちを嫌がってました
でさ
実は気持ち良かったね
闇を嫌がってました
でさ
実は気持ち良かったね
....
「おまえは、あまり、人の役に
立てなかったから
他の役目を探しなさい」 って
最後ばかり優しい物言いだった
わたしはまだ尾が残っていて
不完全だった
ぐずを泳がしておく水は無い
恨ん ....
食べる
空を食べる
それにはまず 雲を食べなきゃ
雨雲を食べる
口の中が 水っぽい
雪雲を食べる
口の中が 凍るよう
赤々と燃える太陽は
さすがに食べられない あっちっちだもの
空を ....
人はみな
命を奪い
生きている
手のひら合わせ
感謝する
6ヶ月ぶりにスーパーへ買い物に行った
まずは果物コーナーへ
小ぶりの林檎が4個で498円
買うのをやめた
バナナ4本で268円買った
野菜は冷凍在庫にたくさん有るので
ゼンマイだけ19 ....
降るひらは
何も想ってないのかもしれない
舞うひらも
はせる思いは重いだけよと
愉しませ哀しませ
ことばのない、季節空間
散るひらが
揺り動かすのは勝手な
人のつくった情動、記憶、 ....
なぞなぞ
5つあれば
じゅうぶんでしょう
人指したいって
からだにフィットしないけど
中指よりも親指がよくないかい
さくら公園の彫刻でもあるまいし
猫は小指
薬指だったら良 ....
陽だまり、虫たちの空港
夢はいつも
そこで見ている
日々をかたどる
ため息も呟きも
散り散りになって
空のあるべき場所へと
帰っていく、と
痛みだけか残る
整備士の足首の細さ ....
高級官僚になれますように
七夕の短冊に、そんな願い事が書かれてあった。
デパートの飾り付け。
ユーモアあるわね。
それともユーモアじゃなかったのかしら?
ひばリンゴ。
ひばりとリンゴを ....
空気は暖かい
そして重い
死なない程度に手をつなぎ
死神と桜の道を歩く
路肩駐車。点滅信号
誰かの笑い声が遠ざかってく
腕がないおもちゃを拾う
灰衣の裾で風が舞う
....
昨日は近く
今日は遠い
明日はその中間くらい
夏は遠く
秋は近い
春はよく分からなくて
冬は一周回って背中に
張りついている
夕は近く
朝は遠い
昼はいつも手探りで
....
君の寝顔をみていると
波だっていた心が落ち着くのはなぜだろう
寝返りをする横顔は
どこか不安そうにみえるけど
眠っていても笑い顔にみえるよ
眉毛を掻く右手が可 ....
朝の冷たい床を踏んで
温水を浴び始める
髪を洗う事にする
泡を立てて
それを洗い流す
泡が伝う
うちがわの
頬を触る
冬をひとつ
生き延びた
ことになる
手を握る
生き ....
琥珀の水を飲み
紫煙を漂いながら想いを馳せる
数十年の迷路を未だに彷徨いながら
素粒子が固まった肩を抱き締めた
言葉を失ってからどれくらい経つだろう
答えが見つからない迷路の壁は高く聳え
....
やがて白銀の景色は薄桜に染まり、
雪風は砂風となってアフリカの砂漠へ移り吹く
ぐにゃりとした冷たい肌のやつは、
サハラ西岸の浅海で捕れた後、冷凍されて
TAKO と記された紙箱に詰められ海 ....
銀色のバケツに残された水
明日の朝にはまるい薄氷が張る
そんな冬の楽しみは
氷越しにのぞいてみる
とじこめられた宇宙
あなたのために冷えていました
冬の清涼な日々も
ずっとは続か ....
嘔吐物の匂い
リネンの手触り
二日酔いの痛み
神さまが死んだあとに
うまれてしまったので
自分の重みを
神さまとわかちあえない
昨夜
目につく鏡をすべて割ってしまった
や ....
小さく丸まった背中に
触れようとして
手をのばせなかった
盆の季節までさようなら
しわしわの笑顔で
手を振る人
何度も振り返って
手を振ると
小さくなった姿が
まだ手を振っていた
....
ひとひらの灰
切れそうな電線で赤い鴉が鳴く
あれを訳してみて
意味のない歌のようです
そう
また歩き出す
瓦礫の橋で合成肉を齧る
この川を渡るのですか?
てんとう虫がとまる
....
私たちが暮らしてゆくのに、
米を買うのにも窮するような毎日だったら
きっと憲法第25条は守られていない
ご飯と納豆だけの朝飯を食べ、
お昼は抜いて、
夜はカップ麺を食べて眠る
そん ....
千人の仙人、殴り合う。
それが、最初のヴィジョン。
笑っちゃうだろ。
もちろん、「僧侶」のパロディさ。
有名な詩人たちが殴り合うのも面白い。
だれが、だれを殴るのか、興味があるし、
殴り方 ....
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