ため息の一つもこぼす
残暑が根を張る
帰り道
会社の敷地の植込みで
目を和ませてくれる
萩の花風
たくさんの
紅紫の小さな蝶たちが
(おつかれさまね) と
や ....
ほおづえをついたら
消えるくらい細い 月だね
知らないあいだに
こおろぎが まぎれ込んでたから
窓をあけて 夜に帰したよ
りーん あちらから
りーん こちらから
遠くても 呼びあ ....
叩かれる音のない鼓の
むなしさは
真空にひろがり
私をつくる
階段を先に降りる君が
僕を見つめ
斜視がかわいい
琥珀の空間に
溶け込むような君の声が
チョコレートより甘く
キャラメルよりもせつない
僕は初めて
手をつなぎたいと思った
たぶん、分 ....
空には羊雲
空の底には私
私のほほにそよ風
そよ風に
無限の光
思い出して
あのまなざし
まなざし深く静か
遠く
遠くて近い
魂
あのまなざしの魂
まなざしの魂と
近くて遠い ....
福島で除染作業に携わる人の中に
二十代半ばくらいにみえる若い女の人がいた
TVのインタビューに
「働かなければ食べていけないので」
と答えた砂埃の中の彼女の姿が
忘れられない
彼女が今 ....
夕風に舞ってくる
モンシロチョウの薄黄色
一雨ぬれた秋草に
もう 雲間から
淡いの光が差している
こおろぎたちの戯れる
エクスタシーにポツンと一人
置き去られ
三 ....
いつから家は家だったのだろう?
(チャイナ・ミエヴィル『クラーケン』下巻・第五部・59、日暮雅通訳)
ドアってやつはいつドアでなくなる?
(ジョン・スラデック『時空とびゲーム』越智道雄訳)
....
火を吞み込む邪心が人の無心を焼き尽くす
風を嗅ぎつける者が遂に世界を弄滅させるまで
憂いを食べつくす言葉を放つたびに
オレンジ色の首飾りが
似合っている少女の瞳に映り込む
この時間を流れ ....
道路工事で
職場前の道は渋滞
ブラインド越し見える作業員の人たち
若い人が一人もいない
砂塵と高湿度の靄の中
上下するヘルメット
ドア一枚隔てたこちら側は
....
静脈の運ぶ退廃が酒肴として活きる夜
帷の内と外でどれだけ熱量が違うのか
内では
肥満めいた男が慄き若い女に買われて
右往左往しながら満更でも鳴く蕩けて
真っ暗な夜がないのと同じように
....
誰もが知る肌に
夏の落ち着きを失った季節は、
陽のわずかな傾きに
秋を告げる
沈黙をやぶる囁きに
自問自答をとめる
潮の香りは、さやけき潮の音
反射する 陽炎のひかり
....
金曜日、ファミレスにて。
カラカラと音を立てた 冷えたグラスから
水滴がしたたって テーブルに水たまりを作ってる
さっきから僕の愚痴は 止まらなくなってる
うだるように続いてる この夏 ....
海がつなぐ
まだ知らぬ世界も
流れ流れてやって来る
水か銀か仏か
あらゆるものが
流れ込んで
世界中を巡りゆく
海がつなぐ
あなたと私も
同じ母の魚を食らい
糧か毒か滋養か
....
漫画って
なんて素晴らしいんだろう
小4の春でした
漫画家に、なりたい
絵は上手かったのです
絵は上手い?
やっぱ画家になろうかな
うーんでも
今どき画家じゃ食 ....
、、
ほとんど会話もないまま
「アメリカの朝食」を聴きながら
たまごの入った高級食パンに
森のバターをたっぷりとのせて
熱い紅茶でいただいた
ただそれだけ
晴れた日に傘を貸し
雨の日に傘を奪う
どうやら
それが流行りみたいだ
他人だもんね
困ろうが狼狽えようが
観客席からは滑稽に見えるのだろう
土砂降りになって
みんな借り ....
・(おそろしい)/日取りは新たな締め切りをつくる - どこでもない - そういう場所だというのだ : (人間のように)(人類のようだ)例えば / 戸の隙からか細く投げかける灯りが - まずためらいがあ ....
妹の娘は
私に似ている
彼女が産んだ赤ん坊
男前ではないけれど
愛嬌のある顔
知り合いのおっちゃんに
似ている
彼は私を一生懸命見つめてくる
私が何者か分析している
他に ....
思い出の地を巡る
なんて言うとテレビ番組のような言い方ですが
まさに思い出の地を巡るので許してください
昔あった桜の木は
倒木の恐れがあり切り倒された
開けた景色はコンクリートで舗装され ....
2重の蠟は
智慧を了し
ツマビラカな
星の接点を
観ずる
しかし
2も2も5なら
6は栄光の
発光体になり
しばらくは馬なので
そんなふりをしたカモメになった
そんな表裏 ....
着信音
表示された名前に
息を飲んで
恐る恐る応答をタップした
紛れもない
あなたの声
嘘みたいだと言ったら
嘘でーすとふざけてきて
一気に緊張がほどけた
少しも迷いのない
....
私達はもはや売れることを恥だと思っていやしないか
***
閑話休題
***
私達はマウンドに立つことすら難しい男と女がやっと出会った結果
宇宙を越えるような数々の勘違いの ....
どこまでも
続こうとする坂道
喘ぎながら
繰り返される
独り言のような呪文
聞きながら
闇雲にしがみついた
あなたの背中
眠ったふりしながら
安いおしろいに混じった
....
風の歌なんか聴かなくていい
おれの声を聴け
ビール瓶の栓を100円玉と間違えて
拾ったおれの声を聴け
腹がへって
矢も盾もたまらず
全力疾走して野球帽が飛んだ
おれの声を聴け
....
ロボットが感情を持ったとか
人の知能を超えたとか
そんな時代が来てるらしい
ロボットが人に近づいてるのか
人がロボットに近づいてるのか
分からない時代がきそうだね
でもね
ロボッ ....
何をしても上手くいくし
何もしなくても上手くいく
見えない器を満たすこと
それをこぼさず運ぶこと
溢れた水は土に還し
空へ向かって芽を伸ば ....
小便を浴びた顔を洗って
今日も街へ出かけていく
本を読んだり
花を写生をしたりしていると
道行く人が一瞬目を止め
"君はまるで磨けば光る美麗な原石だ"
そして応じる間を ....
歴史ばかり雄弁な片割れ石碑のどこにも書いていないが
多賀城の南門から素足をのぞかせた未開の少女が入ってきて
わたしの首になめらかな両腕をかけて影へみちびきいれた
そのときからわたしの胸には真紅の ....
「語られるべき内容がほとんどなくても、
言葉は無限に増殖して一冊の本になることができる」
(『文体練習』レーモン・クノー)
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