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風の中に雨がむせび
雨の中に女がむせぶ
長く長く
細く細く
胸の中に
容赦なく風が吹きこむ度
血潮のいとおしさに女はむせぶ
過ぐる日 ....
夜
月明り
独り暮らしが始まっていた
絶望も希望も寝静まり
生活が一つ転がっている
朝
目が覚めて思う
生きていた
しかも快晴だ
何にもないので
布団を干した
....
寝息が包んでいた闇を抜けて
小さな呼吸は
始発電車よりも早かった
眩しいからなのか
朝を薄目で盗んで
それを混ぜるための
パレットが欲しくなる
乗せるものが無くても
軽くて透明 ....
空へ空へ
伸びる茎
光を光を
求めて
枝分かれして扇形になった
それは
小さな木々のよう
草はらに
明るい森を成している
海の向こうからやってきて
異国の地に根をおろした
覚 ....
夏陽がじっくりと焦がす
白い坂道の曲がり角
大樹の木陰、繁り合う枝葉
セミの声
見上げる少年と虫捕り網
身体を揺らしながら
爪先立って手を伸ばす少年
ぼくは坂を下り ....
地元走るローカル線を
無人駅で降り
山裾へのぼる細い道で足を止める
通りすがりの一軒家
枝葉被った鉄の門
奥には木造の二階建て
厚地なカーテンひかれたままの窓
....
幸せという字は辛いという字の上に一本足して、蓋をしている
辛さに蓋をして幸せになるぐらいなら
辛いままの方が正直じゃね?
おれの息子はそう言って戦争に行く
2年間
中央の大学で学位を ....
風に満ち足りて花に憂う
水滴は一夜を幻に染める
夜の静けさに映り
溢れる心の瞬間に今、
あなたは闇を想う
走れとばかり、飛び立つ鳥
月灯りの淵の
電灯はもう
薄目を閉じて
片足で立っ ....
あーーーーーー
まじでねーわ
女を書くな
おまえが女を書くな
おまえごときが女を書くな
女を書くな
女を語るな
女の胸とか髪とかスカートとか肌とか
そんなんやめろ
詩が嫌 ....
ごみみたいな感性で放てよせいぜい
きらめかないミラーボールに反射する銀のクローバーの中に君が四人いる、IHコンロの音で殺される妄想ばっかりしてる
友だちのやり方もわからないまま
大人になると ....
加藤さんが五大大会三連覇を達成する
という快挙を成し遂げた
まだ梅雨は明けきらず
朝からの小雨で唸るような湿気の中
お風呂をはじめとする各箇所のカビ取りは
一向に捗らないが
せっかくなので ....
かのじょとわたしはいつもいっしょにいる
かのじょのみぎかたには食洗機についてる
みたいなひねるだけのスイッチがついている
わたしがからだをかたむけるとわたしの体はゆうれいみたいにすいーっ ....
日本海に春の来た時は
静かに 静かに
目をとじてみると
生命ない小石が激しい息吹をもらす
波 寄せる毎
丸くなり
カラカラ カラカラ と
妙に乾いた音たてて
踊り ....
それは凄くて 彼の胸は貝がらだ
完璧な夏に 投棄された貝がらだ
涸れないことをほめるのは
ただ軽蔑するのと一緒だ
彼は{ルビ薬匙=やくさじ}を咥えさせて
蛇も寝なさそうな夢を明か ....
つい、さきほどまで
天国と地獄が
綱引きしてましたのよ。
でも
結局のところ
天国側の負けでしたわ。
だって
あの力自慢のサムソンさまが
アダムさまや、アベルさま、 ....
そして私は迷い込む
静かな五月の夜
輪郭を失くした処に
複流し
伏流する時の中で
淡くオーヴァーラップするのは
私の意識と
君の意識か
(私とは)
(君とは)
谺のように出 ....
それ は 、無言、の内に
、声 、を発する
なにも 語らない 、有機的な 沈黙 、
そういうものに 触れていた
雨に、 打ちつけられて
そうして佇んでい ....
もう見ることは無いと思っていた、
はっきりと思い出せなくなっていたあなたの横顔、
今こうして隣で金色の風を浴びて、
火のようにはためく髪と、
水底のような瞳が細められるのを見て、
どうしてこ ....
グミ
どうぞ、と差し出された袋のなかには
色とりどりのグミ
お祭りみたいにひしめき合ってる
青いのをひとつ
取り出して
口に入れる前に電球にかざす
ママが言った
海の色を ....
草原で風に吹かれて
座っている
誰かが来るのを待っている
偶然通りかかるには
あまりにも広い
知らなかった
こんなにも膝を抱えるなんて
自分自身で歩いて来た
わかっているけど
一 ....
新しい童話ができました
美しくて優しいお話でした
子供たちは喜んで読みました
けれど一番夢中になったのは
大人たちです
雨上がりには虹が出ると
いつまでも信じ続けました
どこから ....
私
雨だれのリズムで
「晴天だけが良い天気とは限らない」
なんてぼんやりとつぶやいて
自室の窓の外へ目をやる
その人の人生を私が生きることはできないので
私は私の人生を生きるしかない。 ....
I
どの、骨で
鳥をつくらうか。
どの、骨で
鳥をつくらうか。
{ルビ手棒=てんぼう}の、骨で
鳥をつくらう。
その、指は
翼となる。
その、甲 ....
5月28日
黒いペンで書かれた
カレンダーのさりげない予定
几帳面な字
その翌日
あなたは
日めくりの裏のような
真っ白な予定の永遠に続く
向こう岸へと
踏み出してしまった
....
おふとんとわたくしの
さかいめがおぼろげ
すなのこまやかさで
ぬりこめられて
まぶたをきちんと
とじたまま
きょうのしごとについて
まとはずれなだんどりをくりかえす
お ....
ピアスの穴が2つある
どちらも好きなバンドが出来た時
何か印になるものが欲しくて開けたのだ
好きなものが出来ると
生き方が前向きになるし
傷口に塗り込むマキロンは
僕にとって夏の匂いだ ....
もうどこへも逃げてゆけない言葉たちが
{ルビ凝=こご}る五月闇
夏の色が濃くなるごとに重くなってゆく空
その空の重みに耐えかねて
虚ろになる意識
否 虚ろを装う意識
綴るご ....
タマキンが
五月の風にそよいで
心地好い
梅雨までの短い時間
思う存分
この風を楽しむ
ひとりベランダで
風よ、風
僕のタマキンから
白癬菌をすべて
取り除いておくれ
....
鼓動と同じペースで手を叩いたら
どちらか分からなくなった
手を止めた瞬間に崩れ落ちる身体を想像しては
足元を悠々と闊歩する
蟻の行進を眺めた
つま先から少しずつ、食いちぎられるまま
....
子が産まれる、とわかって、
しっかり喜んでみたのだが、
まだ、わからないのよ
そうか、まだわからないのだ
無事に産まれてこない胎児たちもいる
産院の、陽がよく入る待合室
お腹の大きな妊 ....
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