すべてのおすすめ
妻との決着は穏やかに着いた
様々な想い出が走馬灯のように通り過ぎてゆく
長いと言えば長く
短いと言えば短かった
二人は別々の路を選び
晩秋を待って別れることになった
互いに別々の白い路 ....
父はギャンブルと女に金を使い果たし
家に給料を入れることは殆どなかった
幾度となく踏切りの前で躊躇したことか
カンカン カンカン ゴォーッ ゴォー
母は嗚咽を押さえてぼくの手を ....
空がとても青いから
ぽろぽろ涙を流します
ハンカチを持っていないので
涙を拭うことはできません
地図を持っていないので
トコトコ家に帰ることも難しくて
夕陽が沈む頃 ....
あ 愛よりも深いものは何だろう、と君は言った
い 今飛び立とうとするのは
う 生まれてきた喜びを知るためだ
え 縁というものは愛より深いかも知れない
お 大空を目指して飛んでゆけ
か 彼方に ....
ヤマメやイワナは今頃どうしているのかな
釣り人の居ない冷たい水の中
安寧に暮らしているのかな
冬は餌も少なくておなかがすいていないかな
無情な魚食者の言うことではないな
美しい魚体に見惚れ
....
空の青がとても悲しくて
黄色い銀杏の葉が飛ぶ時を待っている
中庭に降り注ぐ陽射しは眩しくて
{ルビ眼=まなこ}を閉じて五体を開き暖をとる
ときおり吹く風は透明な北の便りを運んできた
午後 ....
夕暮れの中庭のベンチに腰をかけ
{ルビ鋼色=はがねいろ}の空を見上げると
鳥が矢印のような隊列を組み
還るねぐらを目指して
陽の沈む方角に飛び去っていった
病棟に戻り
やがて食事のアナ ....
成層圏を脱出してから
どれほど経ったのだろう
宇宙の果てまで
まだまだ遠く届かない
来世という未来に託すしかないのか
路傍の石ころに生まれ
泥に生まれ
虫に生まれ
魚に生まれ
豚 ....
私は私で
他の誰でもない
通じない言葉に疲れて
スマホを放り投げた朝の散歩道
きみは私を処刑しようと決めた
そう きみと二人
菜の花畑の向こうに碧い海を眺めたね
遠く水平線には洋紅色の貨物船が浮かんでいた
固く手を握りしめ
明日の行方を占った
きみの{ルビ華奢=きゃしゃ}な肩を抱きしめながら
....
磨かれた廊下に深海魚たちがゆらり
ゆらゆらとゆっくり泳ぐ
深い眠りに就いているのか
夢をみているのかわからない
天気予報では明日は雷雨
深海魚には予報も関係なくて
廊下をゆらゆらと泳いでる ....
北の湖の{ルビ畔=ほとり}に
{ルビ春楡=はるにれ}の大樹が唸るように{ルビ聳=そび}えている
その根元にきみを置いて写真を撮りたい
そそぎこむ小川には姫鱒の求愛激しく
やがて ....
Tとは小学生の頃からの付き合いだ
遊びに行くとTのお母さんが出迎え
関西弁で他愛もない話しをした
いつも1時間程
その洗礼を受けなければならなかったのだ
玄関の水槽には金魚が揺れて
猫 ....
来週の月曜日で渓は閉鎖される
天気予報は曇りだから
これが最後のチャンス
華麗な山女魚とも3月まで逢うことはできない
秋は心新たに本流の虹鱒を追いかけるだろう
清流のファ ....
釣りから帰ると
ポストに1通のメールが届いていた
{ルビ一滴=ひとしずく}の涙が零れ落ちる
それは川に流され海へと溶けていった
琥珀の水に氷を沈め
紫煙を{ルビ燻=くゆ}らせながら
そ ....
それはやはり
そうだった
{ルビ伽羅=きゃら}を{ルビ焚き染=たきし}め
熱き胸を{ルビ鎮=しず}める
秋の夕暮れ
ぼくはクラス委員をしていた
グレーのTシャツにジーパン
下駄を履きショルダーバッグで登校していた
小学校からの出で立ちだ
或る時教育委員会の人が聞き取り調査に来校し
ぼくの身なりを注意した
....
夕方に米一合の飯を炊き
三食分に分けてラップで包み冷凍する
基本は納豆玉子かけご飯
キュウリの浅漬け
ご飯のお供を数種
コンビーフやウインナーを齧り
3分間の食事は終わる
冷蔵庫の冷凍室 ....
釣り人は絶えず空を占っている
彼は雨模様の日々の間隙を縫って車を飛ばした
渓の入口に着くと水の唸りが聞こえてくる
今日も駄目だと知りながら
狂ったように竿を振り出し続けた
....
あれは小学2年の夏休みのことだった
隣の家の姉さまは
白地に花菖蒲の浴衣を纏って
細い躰を座敷に横たえ
静かに扇風機のぬるい風にあたっていた
ぼくは庭にあったシーソーに乗りたくて
姉さまの ....
あの頃ぼくは口径20㎝の反射望遠鏡が欲しかった
土星・木星・プレアデス・アンドロメダ… etc
銀河鉄道に憧れて
遠い 遠い{ルビ宇宙=そら}を観たかった
当時はバイトをしても貧しくて
とて ....
ドーッドドドーッ ドドドーッ
ザーザザザーッ ザザザ ザーザザザーッ
木漏れ日の渓に透明な水が溢れる
ここ数日の夜中の豪雨で水量はいつもの3倍くらいはあった
流れが激しいとヤマメは岩の陰に隠れ ....
今日は天気の良い日曜日
渓を訪れる釣り人は多く
ボウズが続出し
挨拶をすると
水量も少なく
入渓者が多くて駄目ですな
異口同音のこたえが返ってくる
釣れないので{ルビ納竿=のうかん}する ....
月に一度の通院日
ドア通ドアで二時間弱
雑談だけの検診
渓流の話しを興味深く聞いてくれ
土用の丑の日に鰻重は食べたかと
あの店が美味いだの
やはりこの店が美味いなどと…
担当医は ....
夜のスーパーは人影少なく
ゆったりと買い物ができる
入口を入ると野菜コーナーでアスパラとエリンギが眼に飛び込んだ
明日の朝はベーコンと一緒にバターソテーにしよう
このスーパーでは半額シール ....
休日の昼下がり
虹鱒を追いかけていた
ザブン! と飛び込む親子
魚がいるぞ! 父親が叫ぶ
ぼくは仕方なく水と戯れた
渓に静と動あり
静は岩
動は水
森はそよぎ
小鳥がさえずる
渓谷の明日は晴れのち曇り
毎週土曜日は4700尾のヤマメと720尾のイワナが放流される
梅雨の中の貴重な天気で釣り人が我も我もと集まって
養殖の魚は警戒心に疎くて入れ食いになる
週末だけで ....
初夏の風に吹かれて
ぼくは睡魔に襲われた
李白と盃を交わし
{ルビ白酒=ぱいちゅう}を底まで飲んだ
青い瞳の舞姫は{ルビ胡旋舞=こせんぶ}を踊り
宴は興を増してゆく
李白は酔えば酔うほ ....
鉛色の空の下
紫陽花が咲くのを待っている
そこにカタツムリが居たら
梅雨空も悪くはない
四季折々の美しさがある
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