すべてのおすすめ
「かきたい」
とある保育園児の前で言ってみた
裏返したカレンダーとクレヨンを貸してくれた
「かきたい」
とあるおばあちゃんの前で言ってみた
孫の手を貸してくれた
「かきたい ....
世界はつながっているというのに
僕はまだその本当の姿を知らない
どこかで争いがおこっているというのに
僕はただ祈ることしかできない
それなのに僕は
まるで赤ん坊のように
泣 ....
手すり
よく冷えているので
天からの雪
形のままに
地面
よく冷えているので
やがては雪
透き通った氷の柱に
どこに
人語を介する
なにが
人語を解する
中谷ダイア ....
真夜中の毛布に隠れ
短い振動が
密かにわたしを呼ぶ
七十センチ横では
きみの見知らぬ連れ合いが
高らかに寝息で嘘を吐いている
幸福の整理券を
並んで手に入れたものの
本当は少し ....
なくしたものと
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のい ....
よろよろと海岸線を歩いていると
月が見えた
タバコの煙が風に乗って流れた
ああ俺は
照らす光におびえながら立っている
それから海に向かって眼をやった
錆びた商店街が背中にあった
波は ....
高く空に刺さる 木の 黒い
黒い樹たちの隙間から
降る音 来る音
その向こうに棲む おと
冴え冴えと
地に降り積んでは
ゆる、と めぐる
発した声は
....
ふわふわのシャボン玉の中では
ふわふわの魚が泳いでいる
しゅわんとはじけると
魚は空にかえっていく
私もかえりたい
空じゃなくていいから
ふわふわじゃなくてもいいから
....
22歳の誕生日から3日経ち
私は生理になった
さあ、とお腹の中の月時計が私に言う
いつか生まれてくる赤ちゃんのために
お布団を新しいのにかえましょうね
初潮を迎えてから
ち ....
ふたりは出会う
雛連れの野鴨憩う山郷の水面は茜に染まり
ほら手をつなご
これから暫くふたりして
同じ水脈を流れ行くのだから
ふたりのささ舟は
透き通る冬の気象 ....
凍えの夜に
面相筆で刷いた薄雲が
星座に風を満たし
十字に居並ぶ太古の紋様は
くっきりと現在を刻印し
ありふれた永遠を
わたしに見せつける
生は
背中の痛みで
諦めは
....
冷えた夜が
低地を這っている
これもまたもうひとつの
忘れられた夜であろうか
――あの人は
貴重な生を召し上がりました
何ひとつ 言い残すことはなく
混沌の角度で経験は薄まってゆく
....
ずるやすみの木で
かみさまを見かけた
なにをしているんですかとたずねたら
ずるやすみをしているのさとこたえた
ぼくも人のことは言えないから
ああそうですかと
おおきな幹にせなかをよりか ....
走る車の中から
窓の外に
うつる景色が 素敵だ
あなたはちゃんと
歩行者の安全考えて
車走らせていて 素敵だ
時折 携帯を取り出して
メールチェック
もちろん一旦 停止して…
....
たとえば
カーテン越しの陽だまりに
できるだけぽつんと
たよりなく座ってみる
時計の針の
こちこちという音だけが
胸にひびくように
明るみの中で目をとじる
いつの日かお ....
歩道の残雪を
踏みしめる律動
声でもなく
音でもなく
歌でもなく
白い吐息に飽きて
見上げる
大気の天蓋
一弦の
その楽器
透明におびえ
....
発売まで指折り数えたCDを
ようやく手にして
するするセロファンを
むいているときのときめきは
リンゴを倍速でむいているみたいで
ポンと
再生ボタンを押すと
さらに加速度を増して
....
アライグマに石鹸をわたしたら
小さな手をちょこちょこ動かして
とても楽しそうにしていた
まるまるとした石鹸は
みるみるうちに小さくなり
無数の泡だけを残して
アライグマの視 ....
時の泉に 群れ飛ぶ月の 彼方
のべる腕 さしだす酷に くれて
守る いわれのない 裸の花
晒し 望む 天の 枕木
はしり 散らす 吐息の杖
くぐり 舞い戻る 夜明け
理科教室のカーテンの陰
ビーカーに入れられた
子供の悪戯とクロッカスの球根
こっそりと 育つ日々
昼の太陽 夜の月
揺れる隙間から漏れる
光りの栄養を貪りながら
薄情な薄明か ....
呑んだくれた父が
血まみれになって帰宅したことがある
前歯が三本折れていて
目の周りは真っ黒だった
何がおきたか怖くて聞けなかったが
父は喧嘩をするような人間ではなかった
呑んだくれた ....
シュレーディンガーの仔猫たちは
母を捜して彷徨っていた、
小雪ふる池のほとり、
量子の石榴をもとめる彼女は、
仔猫たちをみつけるたび貪った、
死ね、
さもなくば生きろ。
あたたかい空気…しあわせな部屋
あなた
じぶんの係累捨てて
来い
ここまですぐに来て
お互いの愛情を試すための
小さい小さい 遊びなんか
馬鹿げたことよ
そうなの ....
驚くほどのことはない
わたしは、空中に髪をほどき
視線を結着させている
あこがれは、あこがれ
先天的な太陽は、この時
肺の浮沈までも漂白して
果ての分裂を結晶化している
わたしは、今 ....
平和の島
カニバリズムの島
人を喰うことを
習慣としながらも
平和だった島
南の海に浮かぶ
緑豊かな島
ある時 ....
大阪駅
十一番線
遠い目をした
電気機関車
彼方への思いだけで
切符を買いはしなかったか?
帰るという意味を
部屋に忘れてこなかったか?
いつもどこかに
....
国語の教科書
「急がないと」の「急」が
「魚」に見えた
魚がないと大変だと思っているうちに
心もひれになって
ふわふわと泳ぎだした
先生や友達もみんな
大きい魚や小さい魚 ....
君の声がどうやって千切れてゆくのか知らない
どうか耳をよせてください
いいやよせないでください
僕はカミキリ虫みたいに叫んだ
その声は成層圏を真っ二つにした
そんなわけない
ど ....
花に触れるとき
手のひらは
香りにも触れている
手のひらでは
匂い
感じられないけれども
花に触れるとき
手のひらは
色にも触れているのかどうか
手のひらで
....
待ち合い室の窓辺には
枯れそうな観葉植物がいて
誰もそれに気付かないまま
誰もがうつむいている
ただ水をあげればいい
枯れそうな観葉植物は
まだ枯れてはいないのだし
渇きをいやせれば
また青々とし ....
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