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                したたる、

水のひびきのなかに、私の声があ
ります。暗いこころのままで死ん
で幽霊となった私のとうめいな喉。
ぬれながら、だえきもでないほど
にかわいてし ....
泥になって歩く
海の方から風が吹くと
私じしんである 泥
がかわいてしまいそうになる
おまけに潮のにおいまで
はりついてしまいそうになる
この湾岸沿いの道は 淋しさ
そのものが細長く伸び ....
冷えた夜が
低地を這っている
これもまたもうひとつの
忘れられた夜であろうか
――あの人は
  貴重な生を召し上がりました
何ひとつ 言い残すことはなく
混沌の角度で経験は薄まってゆく
 ....
おまえがほんとうのことを口走る度に
鳥の翼から羽毛がぬけ落ちる
世界はやせ細り 目に見えるものすべてが
絵に描かれたものとして溶けてゆく
たとえば可哀相な妹が
人に知られぬ速度で後退する時
 ....
いま この傾いた陽の中で起こる
出来事を讃えよ
祈りは虚しく 鳥撃ち落し
霜の降下は 胸患いの効果を現す
空にかかる花は 萎れ 枯れ果て
この寒気にふさわしい   闇が
笑いを噛み殺して  ....
何故 君はいってしまうのか
大人たちよりも ずっと ずっと先に
危ないよ
あんまり先を急ぎすぎると
石ころだか何だかわからないものにつまずいて
転んでしまうよ
危ないよ

とん とん  ....
死期が近づくと
彼等は自ら首を吊って死ぬ
夜に 孤独な木を探してその枝に
縄を垂らして果てる
南の大地は熱い
吊られた身体は素早く腐る

自分ひとりで首を吊れない者は笑われる
ましてや ....
私は海になる
ただひとり あなたのために私は
自分を分解して個体の部分をすべてぬき取り
液体だけで構成された海になる
父になることしか出来ない性の宿命
それでもかまわず
私は母のような海に ....
時計の秒針を追いかけて跳躍する
目の中で止まる動き
さらには滑り落ちて
  沈み
耳の中で方向を見失う
犬のようにではなく
あくまでも人の成れの果てとして
この(檻)の中で暖まる
外は ....
夜の星の下で
俺とおまえとこうして立ちながら
静かに汚れてゆく
川を見つめている
昨日から明日へ移動するためには
おまえの脳髄に流れるこの川を
わたらねばならぬ
でなければ俺たちは
い ....
都市では
すべての生きて動くものはその死の時に
鳥によってついばまれる
そのようにして葬られる
人も 例外ではない
夕陽が昇るように沈み
そのかたわらでくるった金星が
美しくほくそ笑む時 ....
空いている電車に乗り 席に座る
駅に停まり 駅を通過し
また駅を通過し 駅に停まり
車内は次第に混んでくるが
他の席はどんどん埋まってゆくが
私の隣はいつまでも空いたまま
誰も座ろうとはし ....
その日の夕方
妻は花束を抱えて帰ってきた
赤 青 黄 白
色とりどりの花の群れ
寝室の棚の上に花瓶を置いて
妻は花をその中に挿した
赤 青 黄 白
色とりどりの花の群れ
部屋の中は美し ....
いま
星の下で
明日のために
今日の色を決める
走りぬける
全力疾走の快感
それが俺を
白い荒野の上に立たせている
時には多大な収穫を
時には多大な疲労を
もたらす荒野
その謎の ....
ふっ、
   ふっ、と、
        ふれてゆく。
静かすぎる夜に、
綿毛の意志を運んでゆく。
日にさらされて、
火にあぶられて、
またもやさえぎられて、油っぽい焦りだ。
ふう。
 ....
誰もがみな
道の途中だった
そして誰もがみな
人に気づかれることなく歩いていた
人に見られていると
そう思うのはあさはかな傲慢であると
時の風が教えてくれた
深い
森の奥から道へ
わ ....
雨に濡れるのを忘れた人が、信号の前で返り血を浴びている。どんよりと、ただどんよりと生きていけ。おまえの夜の病はいまだ進行中だ。魚群探知機に映る影の人びと。探そうとしてもけっして探し当てられない影の呼吸 .... 長い眠り
    そして夢
彼は水の底で 海の底で
静かに
雌伏の時を過ごしていた
そして眠り
またも眠り
心地良い水のゆらぎの中で
彼は際限なく眠りつづけていた
動乱の前の
不気 ....
朝食の
トーストとコーヒーの間に
そのものは存在する
点々と どこまでもつづく血痕を
追え
賢者の道よりもまず先に
なすべきことがある
埋められた{ルビ蹠=あなうら}
ますます増長する ....
数える
夜を
その存在を
その版図を
人生の裏側から君は数える
吊るされたものが笑う夜
浮き上がるものが泣く夜
どんな夜が
君に魂の改変をせまっていたのか
わからない
わからないか ....
地をふりかえる
もはや人でないものとして
山に分け入るべき時だ
鼻を濡らして
舌を濡らして
人としての重荷を下ろす
頬を赤らめ
森を通って山の頂上にたどりつく
おしり むずむずする
 ....
眼を閉じよ
どんな風景が
どんな制裁が
君をここまで連れてきたのかを想像せよ
踏みつぶされた
ひとつひとつの物語を噛みしめて
陽の下でのあらゆる可能に背を向けて
夜の中での不可能に随伴す ....
PULL.さんの岡部淳太郎さんおすすめリスト(22)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
したたる、- 岡部淳太 ...自由詩23*07-6-12
湾岸経由蜜柑畑行き- 岡部淳太 ...自由詩24*07-2-6
雨になる前に- 岡部淳太 ...自由詩10*06-1-17
世界の別名- 岡部淳太 ...自由詩33*05-12-19
真冬の惨事- 岡部淳太 ...自由詩10*05-12-11
罪のない子供たちの歌- 岡部淳太 ...自由詩9*05-12-6
首吊り族の死に方とその歌- 岡部淳太 ...自由詩12*05-12-4
海になる- 岡部淳太 ...自由詩10*05-11-25
薄暗い(檻)の中で- 岡部淳太 ...自由詩6*05-11-6
苦い子守唄- 岡部淳太 ...自由詩8*05-10-29
鳥葬- 岡部淳太 ...自由詩12*05-10-23
私の隣に幽霊が座っていた- 岡部淳太 ...自由詩17*05-10-3
悲鳴- 岡部淳太 ...自由詩6*05-9-1
直観の疾走者- 岡部淳太 ...自由詩5*05-8-27
夜、ふれてゆく。- 岡部淳太 ...自由詩9*05-8-20
道の途中- 岡部淳太 ...自由詩11*05-7-6
蒸し焼きの雨- 岡部淳太 ...自由詩37*05-6-18
水の中の目醒め- 岡部淳太 ...自由詩9*05-5-29
存在- 岡部淳太 ...自由詩4*05-5-21
百の夜- 岡部淳太 ...自由詩4*05-5-18
尾のあるもの- 岡部淳太 ...自由詩11*05-5-15
オカルト- 岡部淳太 ...自由詩4*05-5-9

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