すべてのおすすめ
生暖かい夜の隙間に
逃げるように滑りこんで
私は膝を抱えて
じっと息を潜める
爪先のあたりから
半透明の白い繭が
私の躯をゆっくりと
覆っていくさまを思い描く
膝の裏とか
指の間 ....
あれは暑い日でした
いつも通りに長い坂を自転車で下り
数十年前に廃校の中学校を横目で見る
校庭は手入れがされてなく雑草が高く伸びているが
近所の小学生が野球をする場所はなにもない
ざ ....
冷たい消毒槽は
三歩で渡ると決めていた
プールサイドの足跡が
しゅわしゅわと、夏にしみこむ
浅黒い肌の散らばる奥に
見え隠れする
白い朝顔
先生の御子だという
なるほど、鼻筋はそっ ....
わたしがサミーラと知り合ったのは
見知らぬ国への好奇心と
ちょっとした向学心
辞書を引き引き書いた拙い手紙を
赤と青の縁飾りも可愛い封筒に入れて
生まれてはじめての海外文通
切手一枚でつな ....
エオリアンハープの 響きと色が 乾いた
白砂の フィールドを 打ちひらいて いった
旗になってしまった 白いシャツを なびかせて
少年や 少女が まだ 薄 ....
腹に響くエイサーの
どごん どごん
飛び跳ねる常夏リズム
どどごん、かつ、かつ
手踊りが咲き
歯は白く輝き
乾いた{ルビ三線=さんしん}の{ルビ音=ね}が走り出す
空を切り裂く指 ....
押入れの中で目覚めると
いつものように優しくなってる
手も足もおもいっきり伸ばして
指先の細かい部品までもが
思いやりに溢れている
感謝の言葉は誰に対しても
正確に発することができ ....
無数の灰皿のシケモク、
煙が気体と科学反応を起こし、君の陰部に吸い込まれる。
部屋が空間と化す。
僕の隆起は肉体化し、生命体となる。
透明な精液が顕在化しエロスとなる。
君の胸の母性に吸 ....
私の部屋の金魚鉢には
金魚が一匹いる
金魚鉢を見ていたら
すうと引き込まれて
泳いでいた
涼しい青い水の中
緑の水草ゆうらゆら
赤い尻尾はひいらひら
たくさん泳いだら
す ....
ひたひたと打ち寄せる若い海が、
青い匂いに弄ばれて、言葉の果てで立ち尽くす、
夏に縛られながら。
波は立ち眩んで、一滴ごとに、ほころびる海の雫が
暑さに滲んでいく――。
散らばる熱が ....
夜空に、ひしゃく星
くらやみは
すくわれることなく
すりぬける
あなたとわたし、
街灯りを遠くに眺めながら
水を打ったように静かな公園を歩いていると
一 ....
いちばんふしあわせで
かなしい場所を知っているかい
それは穢れも痛みもない
世界だよとあなた
岩清水のようにうつくしく笑った
透明の
ほかには
なにもない世界
てりつく光が
....
待合室には
女の子を連れた母親と
少し離れたところに
人の良さそうなおばあさんが
座っていた
熱のせいでボゥッとなった私の目も耳も
何も見ようとも聞こうともしていなかった
「お子 ....
そら
そう
ほら
みて
ここ
そこ
むこう
ぜんぶ
ぼくに
とって
ふかく
やさ ....
あなた、アオウミガメの背中を
匂ったことはあって?
少女は
さして、答えを求めるふうでもなく
空と海の継ぎめを見つめたまま
潮風にふくらんだ髪を
そっと抑える
....
虫は
しゃくとり虫は
進もうとする頭部と
残されてしまう尾部とを
しっかりと引き連れて進んでいく
木の生長よりも早く
葉脈の先にたどり着いたあとに
なお宙空に伸びようとしたが
....
どうしても捨てられないものがある
幼い頃母に買って貰った運動靴
靴入れの奥に今も大切にしまってある
いつかあなたもシンデレラになるのかなと
七歳の誕生日に買ってくれた運動靴
そういえばこの季 ....
そりゃあきれいでサラサラのボウズさ
プールからあがって
シャワーを浴びたばかりの
音も殺して近づくんだもの
それで顔にティッシュ乗っけて逃げてくから
なんともはや、
すごいでか ....
ギラギラの太陽と茹だるような暑さのもと
癇癪を起こしたような蝉の声を聞きながら
ホワイトクリスマスの事を考えるのは無理があるかも
波をけたててトナカイの代わりにサーフィンに乗って
アロハのサン ....
濡れている地面を
数を数えながら一歩ずつはじいていく
はじくたびに足の裏がわから波紋がでてくる
地上という大きなかがみの湖にどこまでもひろがっていくどこまでも
やるかやられるかみたいな ....
海という隙間で息も絶えだえに
船がただひとつ進めない方角があり
羅針盤の鏡にこうして映すと
宇宙も空も無くなる時間なのに鏡は
越えられない境界線を示すだけなのです
宇宙に似た深い暗闇を
....
水面にゆがむ月よ
滑らかならぬ蒼白い顔は
私を待っていたのでしょうか
それとも見送ってくれるのでしょうか
足を止めると
あなたはきらりと
涙を放ったように見えましたが
驕りだったよう ....
眠れぬ夜が
大きな口をあけ
数珠繋ぎの言霊を
ひとつ食み
またひとつ食み
私をおいて
月の光ばかりが蒼白く
強くなる
溢れた涙を
瞳に返せはしないけれど ....
三日月を食べた夜は
騒騒と 潮騒が耳鳴りのようで
蹲る僕を灰色の目が見ていた
薄暗い闇の中で浅い海を畏れていた
三日月を呑み込んだまま
灯台の灯りを見続けていたけど
胃の中で、光が ....
雲しうみへ
おそいひるのひ
おちていくかけ
ひと
めしあげないで
干しのさなかに
えりのひかりに
しすた
えんじん
むし、き
命めくこと
ろめんにかせ ....
夜を乗り越える呪文
古いノートの落書きから思い出す
詠み方を忘れた大人には
雑踏に落ちている足音に似て
あどけなく残酷な
季節を乗り越える呪文
変色した写真の束から探し出す
今日しか ....
密集した小さな穴々から、予覚された円柱へと、いくつもの湯の筋が地の粗い曲線を描きこむ。湯の筋に閉じ込められた空間は火のゆらぎをきざしているが、私の体によって、様々な輝度から破壊される。この瞬間にも、時 ....
「こんばんは、お久しぶりね」
聞き覚えのある声に振り返ると
おんながひとり乗っている
「今日ぐらい早く帰ってきてね」と
妻にせがまれたのに残業を強いられた
可愛いひとり娘の誕生日だっていうの ....
ガソリンが 値上がりし続け
保険の お得な前納システムにさえ
不安で 躊躇してしまう
変動したら 上乗せして払うのか
道路工事で 渋滞の通勤道路
わずか数十メートルの道を整えるため
....
夏の
体の
着衣のまわりくどさを
一枚、一枚、可愛がるように
指でしか剥ぎ取れぬ熱を
一枚ずつ剥ぎ取ってきました
あ、
そういえば、
非常階 ....
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