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君がまだ6か月のとき
君の夜泣きが止まらず
私は泣きながら君を抱いて
夜中の暗く細い道路をひたすら歩いてた
このまま車にひかれてしまいたい
そんな無責任なことを考えていた
私には
....
年末の大掃除に向かって
クローゼットを開けた
激動の一年を振り返り
ハンガーにかかったままの服を
どんどん投げ捨てる
こんなところにまで
思い出が詰まっていたなんて
いらない ....
東京の原っぱが消えたと書かれても
子供のころにはもう
原っぱは無かったのだ
のび太やドラえもんやジャイアンが
遊んでいた空き地も
ファンタジーでしかなくて
リアルじゃなかったんだ
....
曲がったネクタイを直して
身だしなみをきちんとして
それから 二人で
青空を見に行った
白いけむりが立ったので
裏の丘へと登っていった
あなたの腕のような
楓の木々のあちこちに
朝 ....
いつもより遠出した散歩の途中
気がつくと僕は
古墳の前にいた
その古墳のことを
僕はそれまでただの自然の丘だと思っていた
『県指定史跡』と書かれた案内板に
黒い鳥が一匹だけ止まっている ....
「笑っているの」と訊ねると
「笑っている」と応える
木の葉が風に舞って
肩越しに落ちかかるまひる
赤い葉っぱが嬉しくて
赤い色がかなしくて
その指先をもとめて手をのばすの
....
陽射しが強く射している
この昼下がり
僕は
あなたに会いたくて
空を見上げています
もしかしたら
雲のじゅうたんから
悲鳴を上げながら
さかさまになって
落 ....
ひとの明かりが照らす夜から
星の光を洗い出して
空を見る
冷たい空気に頬を浸して
昔覚えた星の名を
思い出そう と
{引用=ベテルギウス リデル
カストル ポルックス
シリウス ....
とろりとろりと
日が暮れて
お社の石灯篭の暗い影
僕の背丈より
いつの間にか長い
鬱蒼と生い茂る鎮守の森
空にはねぐらに帰ってきた鴉の
黒く騒がしい群れ
忍び寄る夕闇せかされて
....
年末の気忙しさに閉経後の人生を考えてみたりする
それはあまりにも取りとめなくて
生理用品の買い置きはどうしようかとか
明日から生理用ショーツ穿かなくて済むのねとか
不幸中の幸いにして生理痛とは ....
ぬめぬめとした
自分を抱き締めた。
皮膚呼吸をしているはずなのだが、
何かを塗りたくてたまらない。
空には暗いグラデエーションの夕暮れ
丘に登って見上げている僕は
ぬめぬめとした
....
太れ
太れ
君はもっと大きく
君はその存在感をもっと示せ
ぶくぶく
ぶよぶよ
君 ほんとうはこころ優しい
君 ほんとうは繊細な感性を持っている
おおきく
....
反発だけして時が過ぎ
なにか変わってしまったのかと
確かめたくて戻ってみた
私が出て行きたかった場所へ
母は老いて変わらず
村は古びて変わらず
人の目が変わらなく見えるのは
私が変わ ....
何故生きるかって?
目の前を覆う
すべての霧を射抜いた
明日という、夢の為さ
水族館が好きだった
おおきな魚が好きだった
わたしはまだちいさくて
背伸びして水槽に額をくっつけた
ガラスは冷たかった
わたしの目を奪う
彼の名前をわたしは知らなかった
ピラルクーが ....
すべてを失ったはずだった
あれから家に辿りつくまで幾度と無く転んでしまい
死装束にと亡き父に誂えてもらったリクルートスーツ着てきたのに
あちこちに鍵裂きを作ってしまった
死への船出がこ ....
君の願いは僕の夢
君の喜びは僕の楽しみ
太陽が与えてくれたものだから
小鳥が聞かせてくれたものだから
君の泣き声は僕の涙
君の怒りは僕のいたらなさ
月に落としてしまったもの ....
鬱蒼とした樹木の間から
黒い月が煌々と光る
青い空が見える。
しかし、決して昼間ではない。
ここで飛ぶ鳥は梟であるし、
地面には野鼠どもが
異様に光る目をこちらに向けている。
自 ....
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{引用=
これは、リンゴの木の前に立っている私 ....
透き通った青の天井見つめて、
寒空の下
薄いボロボロの服を着て、
その子は寝ている。
大きく目を見開いてその子は眠っている。
チェマダンの往来の真ん中で、
一人のコッチョビが眠 ....
僕は夢想する
雲一つ無い青空に
ぽっかり浮かぶ黒い月を
僕は夢想する
鬱蒼としたジャングルに
飛来する原色の鳥達を
僕は夢想する
ジャングルの樹々の間を
悠然と歩む ....
晩秋は山の夕暮れ
山の子どもはその頬を
真っ赤に染めて
白いふとんが敷かれるのを
待っている
また来る朝に
目を醒ますため
また来る春に
芽を咲かすため
晩秋は山の夕 ....
私の悲しみが
雪となって落ちてきた
ひらひらと
黒い髪に休むように
静かに
手のひらの温もりに迷い込むように
いつまでも
止まない
白い悲しみ
どこまでも
染めていく
....
マッチ売りの少女にでもなった気分で
その鍵穴を覗くのがわたしの日課となってしまった
この街へ引っ越してきた当時はタバコ屋さんだったトタン屋根の並び
ちょっとしたお屋敷風の黒塀に
その鍵穴は ....
ありふれたおはなしが
ささやかに座っています
テーブルの上
紅茶が入ったカップの横
読みかけのおはなしは
トコトコ歩きます
誰かの声をとおって
誰かの頭の中へ
沈黙を守って
....
樹から落ちる枯れ葉も
雨に震える風も
街角に咲く小さな花も
名前を付けたら
全て私のものになる
無機質に広がる
ビルも交差点も
輝きを放ち
愛しいものに変わる
私の指を握り返す
....
北風が肌をかすめて冷たさを置いていく
そんな季節になりました
お元気ですか
わたしは少し厚手のコートをはおるようになりました
相変わらずのブラウス姿にカーディガンを重ね
冷える手先にはカ ....
風が笛を吹いて
こっちにやってくるよ
子どもたちを
さらいにやってくるよ
どこに連れていくつもりさ
風が太鼓を鳴らして
こっちに向かってくるよ
こどもたちの帽子を
さらいにやってく ....
風になって
笛の音階をたどる
わた雲を飛ばしたり
しゃぼん玉を吹いたり
ストローは麦わら
吸いこめば体の芯が暖色に染まる
祖母のジュース
渋柿も老いた手の魔術によって
とろとろに熟成さ ....
夢をみた
ふかいいふかい沼にはまりこみ身動きもとれず
出せる声は呻くような無様な音のみで
がいこ がいこと鳴くイキモノが迫っては消える
暗いとも明るいとも言えぬ景色は
これがこの世界の果 ....
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