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夏の朝
とうもろこし畑の中に溶けてみた
一直線に並んだ黄緑の
甘い匂いが夏だった
気づけば夏の中に溶けていた
黄色の穂先から見上げる青空は
水を見ているようだった
土から湧き出る水蒸気が ....
鍵爪のような細い三日月の夜
ある人妻は魔王メフィストと約束を交わしました
禁断の恋の成就を願い
その代わりにメフィストの言うがまま
魂を売ることにしたのです
ただ一つだけ月の出ない闇 ....
ついに機械は人間を征服した
自ら創り出した機械に追われた人間は
やがては
絶滅の道を進んでいった
地球を征服した機械は
だからといって
自然を支配しようとはしなかった
むしろ
自然 ....
むこうの山の町あかり
ひとつ、ふたつ ふるえている
星が 落ちてきたのだ
夜になって、ここまで下りてくるのだ
今は遠い、大切な人の
あなたの 部屋のあかりにも 星が落ちた
私はこ ....
やりたいときに
やりたい分だけ
自分の都合だけの
マイペース
マイペースは
自分で進んでゆく速度のことだ
けれどもその前に
自分で進んでゆく道がなければ
ペースはつくれない
そこ ....
てっきょうごしに
くもがかけていき
ゆうがたのはずれに
ひとり
ろうばたちが
きしゃをみおくりながら
さいげつのはなしを
している ひとは
いつかしぬ
かみを
ていねい ....
さようなら
なんて
言わないはずだったのに
さようなら
ふたりで作った
桜のしおりは
あの日以来 挟んだまま
日記には
もう あなたのことを
書 ....
あの時
「ごめんなさい」と言えなくて
けれどもその後
勇気を出して言いにいったけど
君はもう帰ってしまった
あの時
「ありがとう」と言えなくて
けれどもその後
がんばって言おうとし ....
コップに水を満たす
ごくり
夜のなかにひろがる
水域
遠い水を飲みこんでは吐き出す
夢のそとへ
背泳ぎで渡る
水が満ちる
遠くまで水が満ちる
とう ....
ころころと
ころがり逃げることばをおいかけて
さかみちをわたしもころがる
わたしとわたしをかたちどるわたしとの境が
あいまいなゆうがた
おさかなもとりも
ちらばりおちるかきの実も
わ ....
言葉に挑んでみる
言葉の世界は広くて深いので
何もしなければ
言葉に溺れてしまう
バタバタするのではなく
全身を使ってバランスよく
綺麗な姿勢で泳ぐのがいい
言葉に向かってみる
言 ....
放課後には少しはやい 午後
夏の始まりを
逃がさないように
自転車同士
つないだ手
ふたり 風になって
長い長いお休みは
もうすぐそこ
追いかけるように
でこぼこ道
スピードを ....
恋をするなら
声の素敵な子猫を飼って
恋しい 恋しいと啼かせます
一人の夜に膝に抱いて
小さな頭をやさしく撫でて
恋をするなら
おろしたての靴を履き
街をあてもなく歩いてみます
....
一つの授業が終わるたびに
階段を下りて
一階にある自動販売機で
レモネードを飲んでいた
今日も暑い
昇降口の近くでは
これから体育の授業だろうか
下級生たちが体操服で
わいわいと騒いで ....
埃をかぶった辞典を開いて
君に伝えたい言葉を探してみる
学のない頭から出てくる言葉は
ありふれた簡単な単語ばかり
君を勇気づける言葉を知らなくて
根拠も言えず「大丈夫」を繰り返す ....
朝起きたら
机の上にメガネが置いてあった
昨日の夜
酔って歩いていたら
呼び止められて
「透視メガネを買わないか」
と言われた
ほろ酔い気分だった自分は
うっかり買ってしまったのだ
....
こんなときだから
あなたのこと
思い出してみる
洗いざらしのティーシャツ
良く似合ってた
防波堤にふたり
たたずみ
いつまでも夕陽を眺めてた
はにかみ屋さんで
口下手で
....
隣の家の畑から
一輪の花が
「おはようございます」
挨拶をした
それは隣の家の
おばあちゃんの声に
そっくりで
腰は少し曲がっている
お辞儀草みたい
ちょん、と触ると
にこ ....
将来の夢を語り合うよりも
明日のテストに向けて
たくさんの単語を関連もなく
覚えることの方が大切だった
そのときのぼくの夢は痛かった
将来の夢を描くことよりも
今の生活を脱する方法を
....
梅雨空が
あさぎいろに変色しはじめるのは
いいもんだ
たとえ群青色にならなくとも
散策の途次で
草いきれが臭ってくる ....
詩を書くのが大好きな僕は
真夜中だって夢中になって書いちゃうよ
君を創るのは僕だからね
君の街の酒屋でペンと紙で作曲するように詩を書いていれば
君が中央の机の上で踊り出す
人々 ....
一人で田舎道を歩く
夏の夕暮れ
人がいた
農家のおばあちゃんだった
ぼくを見て
こんにちはと丁寧に挨拶をしてきた
人がいた
畑から帰ってくるおじさんだった
日に焼けた顔が
ど ....
続いた雨の音階は消え
訪れた静かな夜
問うこともせず
答えることもなく
過ぎてゆくだけの影に
狭くなる胸の内
満たしていたもの
耳に慣れた雨音と
肌に馴染んだ湿度と
それらの行方 ....
みんなが川で遊んでいた
川の回りに落ちている
材木とか箱とかを拾ってきては
川に流して競争していた
次の日も
みんなは昨日と同じように
草むらの中で下を向いて歩いては
水に浮かぶもの ....
何を植えるかなんて
考えもなしに
掘りおこした
庭のすみ
やわらかい土の頂きに
雀が降りて
ころころと、まろび遊ぶから
つい、嬉しく振り返って
あの人の面影を探してしまう
幸 ....
君は鳥のように 自由でいて
羽を広げて 青い空を駆けまわって
僕は大きな木でいよう
君が疲れたときに 羽を休められる
雨から君を守るため
枝をいっぱい伸ばして 大きな葉を ....
輪ゴムのように生きろ
小さい頃から父に
ずっと言われ続けてきた
その父も祖父から
ずっと言われ続けてきたらしい
輪ゴムのような生き方って
どんな生き方なんだろう
伸びたり縮んだり
....
探し物をしていたら
押入れの奥から出てきた
学生時代のルーズリーフ
こんなものがこんなところに
物理のノートだろうか
数式やらグラフやら
長々とした漢字による専門用語やら
今では何が書か ....
小さな埠頭に飾られた
裸婦像のデッサンは
優しい夜を映していて
僕はそれを見るのが好きだった
そのデッサンには
味のしない名前がついていて
僕が生まれてから死ぬまでの間に
たった三人 ....
一人ぼっちだ
花々の中で
麦畑を風が渡って
そこに点在するポピーは
そのひとつひとつが
恋で
黄色と赤の美しい翼を持った小鳥が
巡礼道の真ん中で風に吹 ....
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