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大して明るくもない街灯が
スポットライトのように
道行く人の影を描く
おまえたちは
わたしからは丸見えだ
夜の道
わたしの道
四ツ辻から見渡す一本道には
ひと筋の闇 ....
誰も知らない そんな夜、
少女のぽっちり開いたくちから一羽の蝶が
それはすみれいろの 夢見るひとのうすい涙のような
蝶が飛んでいった 音もなく
(恍惚めいた ひみつの儀式)
....
はじめにそれは夕闇のようであった
遠い地平の彼方に佇み
私を見つめ
幽かに微笑むようでさえあった
夕闇はじわじわと
私を取り囲み
驚くほどの速さで
にじりよってきて
気がつくと ....
穴を掘る
私たちは穴を掘る
深く
硬い地面に埋もれた
季節の輪郭をなぞるように
穴を掘る
私たちは穴を掘る
さらに深く
地中を飛ぶ鳥たちの
淡い心臓に届くように
手紙を拾う ....
文章の欠片が部屋の隅で笑う
僕の脳内で言葉に白髪が生えてきて
杖のない単語がよく転んで痛がってしまう
今日は元旦
「あ」から始める餅つき
「け」「ま」りで祝う祈願成就と健康第一
「 ....
たとえばあなたが
わたしを忘れたとしても
並んで眺めた夕焼けは
ふたりを覚えているだろう
夕日は残る
とある非常口のむこう
あなたが立ち去った後にも
わたしらが消え去った後にも
....
瓢箪から駒でなく
駱駝の瘤に乗った一等星
此処は
ソロモンの王冠
もう一度聞く 此処は
十二時の馬車がやって来て
瞼の億で歌い出すもうひとつの物語
此処は
仮面舞踏会の扇
聞 ....
ハックルベリーフィンの冒険譚を捜そう
君の風景といっしょに遊びたいんだもの
風の自転車で空を描こうよ
永久に休みなんて来ないんだから
勝手にやすんでしまえばいいんだ
食べる。寝る。愛 ....
街なかで魚を見かけた
夕暮れの人混みをスイスイとすり抜けて
駅の方角に泳いでいった
海中でもないのに魚が生息しているなんて
奇妙なことだと思ったけれど
通行人は気に留める様子もない
私がこ ....
ビリビリに引き裂いた
力任せに 泣きながら
それでも気が済まなくて
鋏でジョキジョキ切り刻んだ
その切れ端を 徹底的にシャッフルした
元の形などわからないように
二度と思い出さな ....
東京にゴジラが現れたとしても
北の国ではいつものように雪が深々と降る
明日は猛烈な突風も予想されるからと
二日分の食料品を備蓄して下さいと報道されたが
それは遠くアルゼンチン沖のせいなのだ ....
どうか許してほしい
私には言葉しか
あなたに贈るものがない
言葉は無力だから
あなたにふるさとを返してやれない
金色の楽器も見つけてやれない
ただ伝えることができるだけ
「おはよ ....
月曜がしんじゃった
火曜日がしんじゃった
水曜はしんだふり
木曜がしんじゃった
金曜がしんじゃった
土曜日はじごくに堕ちて
日曜はしらんぷり
しんじゃって
しんじゃって
しんじち ....
濃い青空に
舞う枯れ葉
風
陽光
影をよぎって
歩いて行くのは
今日の私
それを
懐かしむ未来の私の
ここは思い出の中
と思えば
宝石のようにキラキラ
まぶしい
今日 ....
お伽話
銀河の向こうに君がいた
禁断の実は渦の中
迷い込んだら逃げ出せない
小さな小さな恋のお話しで瞼が閉じて
朝の雫が落ちたとき
ぶらんこに揺れながら笑う君
....
沈黙して眠るほかない
鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で
帆軸を極北に向けたまま
難破船のようにふかく朽ちていく
沈黙して眠るほかない
世界の清しい涯てをむなしくも夢みて
....
「雨だれ」
幾多も宇宙が膨張しては落ちていく
手のひらに掬えば
昨日の私の涙みたいで
もしかしてこの中にあの時の自分が
小さくなって住んでいるのかも
瞼を閉じて
何度も聴こえてくる
....
誰も知らない海でした、(けしてあなたのほかには)
舟は出てゆく
夏の入り江、あなたの瞳の奥を
白い鳥は羽根を休めることなく
空にすべる手紙
返事はいらない、ただひとこ ....
僕の東側から
今日も君が昇った
コーヒーの香りが
ほんのり温かい
他愛無い話に
マーマレードを塗りつけて
右目は美人のアナウンサー
左目は君の笑顔
ベーコンエッグは
半熟 ....
流民をへて流民にあう
きみは遠い昔の記憶の中の文学少女
すべての物語を読み切れないように
たとえばたった一人の歴史も解析できずに
やはり僕はでくのぼうにもなれない半端者
きみの洗礼を ....
私はこころの中で寝ています
いびきが何度も聴こえてくるのです
私はこころに布団を掛けています
寝返りするたびもう乱れて自分でも恥ずかしい
それでもやはり寝ていたいのです
夢枕がもう手 ....
列車が出る直前
ホームに目をやると
これまで出会った人たちが
一人残らず見送りにきていた
家族や友人は勿論
ほんの短期間関わりのあった人たちや
仲違いをして音信不通になった人たち
亡くな ....
眠れない夜が好き
(二行目は思いつかなかった)
ペットボトルの水を飲み
ソファで何もしないことをしている
新聞で読んだ伝説によると
こんな夜には黒豹が
宝石を探してうろついているそう
カ ....
さよなら自分
こんにちは自分
歌っているのは夕空の下の
いまだあの頃 雁行を見上げながら
誰に向かって いつに向かって
泣いているのはやっぱり自分
忘れられない
忘れないから
そう言い ....
「眠り猫」
眠りたかった
眠り猫のようにまるくなって
幸せな眠りの世界に入りたかった
好きだった
すべてを合わせても足りないぐらい
そのぶん言葉にできなかった
「猫の眼」 ....
世界のどこかで
猫が丸まって眠っている
その背中を撫でてみたとき
自分が誰かわかる気がする
どうしてあんなに
夕焼けが燃えていただろう
どうしてあのとき
泣いたりはしなかったろう
レモ ....
あなたの小指に糸を巻きつけました
赤い色をした糸を
風にふるえて揺れている
その糸の先にわたしの小指
(ねえ きれいでしょう この世界は
心でしか見えないものがある)
ど ....
貴女の母国の言葉を教えてください
いつまでも話していたいから
貴女の好きな花を教えてください
部屋いっぱいに飾り付けてみたいから
貴女の好きな小径を教えてください
ときどき散歩に誘っ ....
きょうはたのしいお祭りだ
夜の恐ろしさを鎮めた神社へ行くと
本殿へとつづく参道の両脇に
LED提灯が吊るされて
ステテコに腹巻のおじさんや
派手なアロハを着たおにいちゃん、
ポニーテイルの ....
喉を失くした
もう言葉で潤えない
どんな綺麗で優しい言葉でも
空腹を満たすことは出来なくなった
おいでよ
もう誰も信じなくていい
どこからともなく聴こえてくる
もうひとりのわ ....
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