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命は、優しすぎる涙だ。
一粒、肌に触れると、
途端に僕はばらばらになってしまう。
命は、透きとおる歌だ。
僕の身体に沁み渡り、
細胞のひとつひとつがうるおいだす。
命は、無 ....
くもり硝子に指を滑らせる。
流れ落ちる水滴が、
鏡に映るきみの涙と、
重なって見えた。
さよなら。
....
一人でいる寒い夜は
温かいミルクを飲みます
スプーンで雫を落とすと
ミルククラウンができるのですが
それがあまりに一瞬のことなので
私には何も見えません
あなたがそこに
いれくれ ....
森の小さな滝は
冬とともに
時が止まる
滝は白い線となり
静かに眠る
森の小さな川は
冬とともに
音が止まる
川は白い玉となり
ゆっくりと休む
森の小さな湖は
冬とともに ....
不満なこと
満月が雲にかかって見えぬこと
自分の意見を誰も耳を傾けぬこと
この世に逃げ場が存在しないこと
誰しもが思っていないかもしれないが
私にとっては
とても不 ....
あなたは
簡単な挨拶をしただけで
ここから引っ越していきました
残ったのは
適当に結んであるだけの
数え切れないほどのゴミ袋
可燃と不燃の分別も
これでは識別できません
残され ....
携帯電話を持たず
運転免許は取らず
国家試験も受けず
やりたくないことには目もくれず
自分のやりたいことのみ精を出す
いかなる{ルビ流行=はやり}に流されず
いかなる派 ....
◇光
雪山には
光が爆発してゐる
人影はなく
光の爆発はつづいてゐる
◇粉雪
粉雪がさらつてゆくものは
甘い想ひ出と
酩酊
ちりち ....
その言葉は 曲がり角の向こうで
待ちわびている
貴方が そうやって話す
その 頭か何かの中で
今か 今かと
あの角の向こうから
今 来るかと
その言葉は 焦がれている
腰掛けた ....
かみ合わない歯車に、また少しだけ時がずれる
秒針のきしみは それでも
壊れたメトロノームのように 私を、
追うから
逃げ込んだいつかの雪原で 私は、
細雪がわずかに切れる夢を見た
....
賑わった砂浜は
今では自分の足音しかなく
しかもそれは
波風とともに消されてゆく
目の前に見える海は
今の海ではなく
遠い昔に見た記憶の海
狭かった砂浜は
今では自分の足跡しか ....
ちゃぷり、と
月は青空のお風呂に浸かり
朝陽に白く霞んだ
今日も随分と
夜を照らしたものだと
そっと呟く
早く寝よう、と
いつも思っているのに
太陽と話し込んでしまう
長 ....
僕に近づかないで
君を見ると
傷つけたくなるから
僕に優しくしないで
誰にでも親切な君が
たまらなく憎くなるから
僕はトゲだらけの亜熱帯植物で
土星から落っこちたサタン
人 ....
若人は旅をする
知らない逢ったことのない
運命の人に出会うため
時代の洗礼を受け
今、潔く出発せよ
長く続くだろう道の目的地は
皆同じ
どの道を辿ろうが
....
栗林沿ひの道を歩いて行くと
コツンと固い音が
地に弾けてやんだ
少し行くと
また同じ音がして
生きものめいて
転がつていくものがある
――栗の実――
....
手で触れようとすると崩れてしまうおそれがあります。
できることならば遠くから眺めているのがよいでしょう。
*
雨だれ
雨の音がするのです。
理由はそれだけです。
....
異国の空の下
少女がうずくまって歌を歌う
時折、猫のように耳を澄ませる
地球の寝息を聞いて
にっこり笑い
そしてまた歌いだす
異国の空の下
少女がそっと立ち上がる
太陽の光がちゃん ....
その道が続く限り
歩き続ける
たとえそれが
果てしなく続こうとも
楽しいことを思い出しながら
その気持ちが続く限り
想い続ける
たとえそれが
限りなく続こうとも
うれしいことを思 ....
南風に乗って
白い旗がなびく
鳩の群れが
周遊する空は
果てまでも青い
穏やかに目笑する日
リーンゴン
リーンゴン
鐘の音が駆けてくる
市場通りに一尾の魚が落ちてゐる
眼は赤く悲しげに潤み
視線を曇天へと彷徨はせる
そして
路面についたもう一方の眼は
闇の地の深みを透視してゐる
魚は期せずして
天国と地獄を
同 ....
日の光溢れる午後
眩しきなかにきみを追う
流れる雲は雄大で
その白さは真珠のように輝いて
河原を歩きながら
ふわふわ空に向って
歩いているような感覚になる
僕もま ....
しまい忘れた風鈴は
もうトンボは飛んでこないよと
話しかけてくる
夏は終わり
秋も過ぎ去る
汗の輝きは思い出
放っておいた植木鉢は
乾いた土だけが
黙ったまま
夏は終わり ....
僕はパンプキン
君はハニーバニー
二人で旅をしよう
車に乗せられるだけの荷物と
僕等二人だけを乗せて
キャディラック
ビートル
シトロエン
ワーゲンのバンだっていい
何だっていい ....
君はもう見たのかい?
翼をもった
銀色の馬が
空を翔けてゆくのを
冬はこうして
やってくるのを
君はもう聴いたのかい?
いななくたびに
冷たい風が
地上に吹くことを
冬はこうし ....
山肌が幅広く剥落して
日に晒されてゐる
真昼時は
まだいいとして
日が傾いて
夕日の色が
濃くなるにつれて
幅広の滝が
血を流し ....
燃え拡がる炎の
最初の一点が
マッチにあるとしたら
いのちの一点は
種子にあるだらうか
いや
それはいくら
伸び拡がつて
地球を埋めようとも
炎に包まれれば
消滅してしまふ ....
どこか遠くの
名もない寒村の廃屋で
最後の詩人が
おしまいの言葉を
震える手で書き記そうとしている
彼の思考の荒野を
舐めるように滑っては消えてゆく
文字列
この世界の
あら ....
風に
どこまでゆくの?
と尋ねたら
わからないけれど
吹けるところまで
と返事をして
どこかへ行ってしまいました
雲に
どこまでゆくの?
と尋ねたら
わからないけれど
....
あなた、セロリの透明なきりくちに
恋をしたことはあって?
栗いろの瞳
かきあげる仕草
車椅子の少女は
細すぎる膝を斜めにそろえて
やさしい朝のふりつもる ....
すっかり日が短くなってしまったから
夕方の散歩のつもりが
夜の徘徊になってしまい
帰り道が見つからず困ってるんです
周りにいたはずの誰かも
いつの間にやらみんな帰ってしまって
とても静 ....
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