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目を閉じると
緋色珊瑚色菜の花色
まぶたの裏に
現れては消える明るい斑
風の無い中庭は
緩やかな分子で満たされて
枯れ枝から枯れ枝へ
見知らぬ鳥が声を探している
鎖骨のあた ....
カモの群がる池の畔
桜花映える日差しに包まれ
川鵜と小白鷺が向き合っている
川鵜
すっかり春だねえ
これから北へ帰るのか
小白鷺
いや まだ田に水が入っていないので
....
黒ブチの
仔猫の彼女がいなくなって一週間
去勢手術を受けるために入院をし
退院した翌日に
ベランダの3階から飛び降りて以来
姿を消した仔猫
キッチンのコンロのある
隅っこ ....
箱から出ておゆき、羊たち
呑み込んだ象を吐き出すんだ、うわばみ
立つことが精一杯の星の上で
灯りを消す、点ける
(日の出と日の入りのあわいは僅か)
薔薇を宇宙の風から守る
(風は吹くの ....
のんべんだらり
日長一日 だらだらと
ソファーの小舟で
文庫本が櫂に
目が疲れたらひと休み
音楽の風に吹かれながら
好きな時間を小舟に乗せて
無為の海を漂流しよう
のんべんだら ....
冬のベランダに
月の光が降り積む夜は
白く凍えて眺める空に
故郷の庭を思い出す
月の白い光にぬれて
赤いつばきも 寒菊も
色吸い取られ白く震えていた
就寝前に外の便所
白い庭に ....
まだ自転車に乗れなかったころ
ともだちの自転車を借り
田舎の緩い坂道をおそるおそる降りながら
何度も練習していた
不思議なことにあるときすっと自転車が自分のものになる
そんな瞬間を体験し ....
川嶋医院の
門柱までの石の階段を
ケンケンしながら昇って行く
昇った先に待っている懐かしい顔
随分と草臥れたセーターを着ている子や
今日おろしたてのジャンパーが
砂や泥で白くなってしまった ....
人間の蛮行を悲しむのは
人間だけなのであろうか
諸々の神を世に送り出し
それを受け入れた者達は
神に事の真意を問い続け
贖罪の何たるかを尋ねて
今日もまた祈り続けては
神の悲 ....
鏡に向かって
眠気と髭を剃り落していた朝
くたびれた自分の顔に重なるように
ふっと浮かんだ父の輪郭
丸くて憎めない
目の記憶
電車の中吊りは
気の早い春の旅への誘い
オーデコロ ....
空に向かって伸びてる道を
僕は一所懸命歩いていた。
歩いて歩いて歩いて歩いた
いつか空に着くもの
と信じて。
歩いて歩いて歩いて歩いたが
空は全然近よってこない。
そればかりか
空 ....
わからないという名の猫を
飼うことにした
どうしてそんな名をつけたのか
さあ、どうだか
神様だってわからない
テレビを見ながら政局に毒づくと
その猫がにゃあと鳴く
娘に大事なことを言い聞 ....
七月のある日 兄は ぼくを呼んだ
風通しの良い部屋に一人伏せていた兄は
「今度は帰れないかも知れない」という
「弱気なことを…」
ぼくはそう言ったきり次の言葉が出ない
幼少時父も母も病で ....
若者が過去を振り返るのは
夢を実現するため
老人が過去を振り返るのは
夢を楽しむため
でも
若かった過去へは行けません
***
別れるまで一度も名を呼ばれなかったからっ ....
ふしあわせは
雨のように降ってくる
不穏な空から予定通りに
稲妻をともなって突然に
傘も持たずに
ぼんやり歩いている時に限って
ふしあわせ予報ははずれて
私の思考と良心はずぶ濡れ ....
今日も街を行き交うひとびとの影を踏んで歩く
一瞬にして微塵に還るもの
止めどなく細く長く伸びるもの
軽く薄く風に舞うもの
ときどきそれさえも無い人に出会うが
それも街の雑踏の風景の一 ....
君が左腕を僕に差し出す。
痒いの、掻いて
君は右手が使えない
痒いのだが右手で掻けない
僕は指を立て君の左腕を掻く
とっても白い左腕を指で掻く
掻いている間中
....
平和3
手も足も頭も
引きちぎられた人々を
クロゼットや押し入れの壁に
塗り込めてつくられた平和
もはや 人間のうめきは
くぐもって外に漏れ出ない
人は闘争に美を見つける
....
学校から帰ってきた息子が
窓際で何かしている
覗いてみると、濡れたつまようじを網戸の目に刺し水の膜を張らせている
何してるの?と聞いたら
テトリスみたいと言った
ゴミも取れると。
なんてた ....
星なんか
見えない夜もある
それでも夜空を見上げて
一番輝く星を探しているんだ
その星が
ずっと照らしてくれると信じて
星なんか
見えない夜がある
暗い夜道で
仔猫の鳴き ....
雲ひとつない高笑い
真っ青な永久歯で
空は
高層ビルに喰らいついている
控えめな思い出し笑い
押しつけがましくない暖気で
光は
目抜き通りを撫でている
束の間の微笑み返し
....
「非常ベルが鳴らしてみたかった」と、
その男の子は 泣きながら
お巡りさんに謝っていた
毎朝電車は ラッシュを呑み込むと 靴の群れを吐き出す
腕時計の長針先より 先にスマホ
....
僕のオペレーティングシステム上では
翻訳されがたい世界や言語
壁伝いに手探りで歩いて行ければ
いつか切れ目にゆきあうだろう
なにかが融合するところまでは歩かなければならない
信号も横 ....
雪の瞳に映るのは
軽やかな窓
音もなく降る白い彼方の光
ひとつの塔に夜明けが訪れた
沈黙はただ安らぎであるかのように
いつか鳴る(それは予感めいた)鐘の響きを待って ....
遠い昔のことよりは
今の家族を思うとき
苛立ち不満を見るよりは
今の楽しさを感じて生きる。
不自由な君の手をさすり
冷たい君の手をさすり
世間話につい昔
未来の話は嘘になる。
今の楽し ....
いつかは捨てなければならないものたち
おもいではすでにどの街にも
棲みついてはいないのだろう
もう昔々あるところにはだれもいない
ものの変化を過去というならば
いいかげんな記憶のなかから ....
いそぎ足でやってきた
冬が
粉砂糖みたいな
パウダースノーを
街中に降りかけていった
私の黒髪にも白く積って
ガトーショコラみたい
綿菓子みたいな吐息が
凍える指先を温める
北風 ....
人づきあいは苦手ゆえ
頭に猫をのせることにした
出会う人たちは皆
頭の上の猫に気を取られ
(毛並みをなで
喉をなで
さかんにじゃらし)
私のことは気にも留めない
そのすきに私は
....
紫の葉が落ちた時
生まれた頃の泣き声は還らない
腐敗が始まった土壌で
夢は悪臭を呆然と放って歌は枯れていく
耳の役目を終えた貝殻を二つだけポケットに仕舞い
少年は東へと永遠に消え ....
田舎からダンボールで送られてきた
白菜、大根、里芋に 手紙
走り書きで 手入れが行き届かなかった、という
詫び状が 一通
私が手伝っていた畑 耕していた土地を離れて
間もない冬 ....
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