すべてのおすすめ
漂っている
田の畦の
名もない雑草の根元に
捨てられた溜め池の
透き通る水の中に
細い目で鳴くアマガエルの喉に
咽び泣くような曇天の中の
炭焼き小屋の煙の中に
確かに漂っているのだと思 ....
少し神経質で几帳面すぎる
右手
無骨だけど何故か憎めない
左手
ろくに箸も持てないくせにと
名前すら満足に書けないくせにと
いつも左手をなじってばかりの
右手
何を語る ....
真っ黒なランドセルが
ひっくり返っている
カブトムシに似ている
そう思って
しばらく眺めていた
小学生の頃
それに教科書を詰め込んで
学校に運ぶことを
当たり前だと思っ ....
「カリヨン」
乱太郎
さっきまでの淋しさは
何処に
さっきまでのうっとう ....
ベイビー
あたしのことをそう呼んだのは
最初の飼い主だった
本当の名前はコインロッカーベイビー
長い名前はめんどうなので
いつしかベイビーになっただけ
生まれてすぐ
まだ眼も開い ....
ほんの気紛れだった
マンションの折込みチラシで
折紙しようなんて思ったのは
最寄駅徒歩7分を山折り
南角日当良好を谷折り
指紋の間にかすかに残る
あどけない感触を頼りに
無骨な指 ....
時計台の裏側から
針が回るのを見てみれば
この世界の裏側から
時が過ぎるのを見るようで
次元が違うところにいるような
不思議な感覚に陥る
思えばこの世界は
時が過ぎるのを
....
舗石の下には砂
自由の下には旗
投げつけられた火炎瓶
怒号、
硝煙、
五月革命のパリ
嘘つきアルベール
誰しもあなたのことをそう呼んだ
真実ばかりじゃ息がつまっちまう
たまには嘘 ....
ひろげたお店を片付ける
そしてトイレで用を足したなら必ず水を流す
便器の底を覗けば
生きてきた私自身の素性が判る
※
早や店じまいの季節になったものだと
ひろげすぎた店 ....
猫を撫でたあとで
優しさは書かない
返信を待ち焦がれても
淋しさは書かない
軍鶏鍋を食ったからといって
美味しさは書かない
マニュアルをなぞったつもりで
愚かしさは書かな ....
{画像=111121235243.jpg}
どうやらこの世界では僕が天使で君は女神だ。
背中の羽で飛び回る自由と好きなペアを弓で射る自由。
背の高い女の子と低い男の子、
気の強い女の子 ....
息を切らしながら山道を登っていくと
薄暗い脇道から片目のポインターが飛び出してきて
びっこの前脚で器用に跳ねた
どうしたらよいのだろう
何かの病で左目を失くしたのか眼窩は
底知れぬ闇 ....
あなたの唇に息を吹き込む
サンピエトロ大聖堂を流れる僕の風
祈りはあなたのために
そしてピエタ像のように抱きしめて
僕はいつでもペテロになってあげたいと
あなたの唇に言葉を貼りつける ....
誰もいない六畳間
頬を畳にくっつけて
夏休みも終わりの午後
八歳の僕は昼寝する
風が簾を通して頬を撫ぜる
うつらうつらしている僕の眼の先には
隣の部屋でミシンを踏む
母の姿がぼんやり ....
鳩尾から飛び立つ
フラミンゴの羽音を
君に
聞かせてあげたかったけれど
仙骨から這い上がる
虹色の蜘蛛を
君に
見せてあげたかったけれど
せり上がる甘酸っぱい海面で
何を ....
僕の瞳の奥で
針を手に持って微笑む君
それって
拷問と呼べないか
1)
庇には樋がなかった
コールタールの屋根をはげしく打って
雨は黒い路地に、まっすぐ流れおちた
ひくい窓を大きくあけて
わたしは雨の音を聴いたはずなのに
路地に敷きつめられたコー ....
少し前から
光合成をしなくなった
薄らいでいく光を
見過ごして
遠ざかっていく水を
遣り過ごして
余った二酸化炭素を
夢にすり替えることもできずに
ただ乾いていく
カサコ ....
どこかで誰かが泣いていた
悲しくて
それとも恋しくて
※
悲しさに理由なんていらないけど
流した涙はしょっぱくて
それでいて仄かな甘さなんて感じてしまう
なぜって
....
猫 呑気にたんすの上
バスケットの縁に首をのせ
顔だけ見せてご挨拶
声にならない鳴き声で
名前を呼ぶとニャンと鳴く
小さな口でニャンと鳴く
小さな声でニャンと鳴く
今日も呑気の ....
眠気眼のサラリーマンは
今日も大きなあくびをする
長いコートに包まれた
少し猫背なその背中
「いってらっしゃい」と声をかけたら
「いってきます」と言って
背筋をピンとのばした
....
呼吸のように
代謝のように
君と僕を
当り前につなぐもの
歯磨きのように
晩御飯のように
君と僕を
さりげなくつなぐもの
無理矢理つなごうとしても
呆気なく解けてしまうも ....
わたしの天使は飛び降りる
高い塔からまっさかさまに
天使は翼を広げたまま
わたしへ向かってほほえむだろう
雪が降るように真っ白に
翼は光る冬のはじめの陽射し
わたしの ....
{画像=111110214109.jpg}
打ち寄せる砂浜に
文字を書いている
崩れ消えて行く文字達
流木を持ち
強く刻み付ける
水際に暗く強く ....
喉を嗄らして
低周波で世界に発信する
・・・・ここだけの世界。
発信器の低出力は金の無さか。
それとも設計自体に問題アリ。
コンデンサーが怒れているのか。
....
思い出の数には限りがあって
両の手のひらからこぼれた思い出は
ひとひらの色あい
鮮やかに晩秋の野山を彩っては
やがて力尽き
道端の
ふきだまり
静かな眠りに何を夢見る
※
....
さみしい小鳥は丘はすて
ひろい海へととびたった
海はつめたく 深遠で
するどい波は 小鳥をなめる
さみしい小鳥は海をすて
はるかな山へとびたった
山はさびしく 厳格で
あらい吹雪 ....
見つめられると目が泳ぐ 点
嘘をつくとき唇が溺れる 点
滅多に好きなんて言わない 点
温かすぎると慌てて逃げ出す フーテン
笑おうとすると頬が寒がる 点
お世辞を言う ....
夕日が
熟した柿の実の中へと
沈んでいく
静寂が生まれる瞬間だ
紅葉は色を落として
深い眠りについた
幾つかの音を拾って
風が遠くからやってきた
心音に重なる
騒がしさが消えて
耳 ....
君の生まれた十月の国で
うたうように眠りたい
銀木犀のしずかなかおりが
漂う夜気に包まれて
丘を木立をぬって流れる
川のせせらぎを聞きながら
幼い君が 少年の君が
夢 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182