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ふたりで羊羹に入ろう
思い立って三軒目のコンビニで見つけた
消しゴムふたつぶんくらいの小さな羊羹を
にゅるっと皿の上に出す
安物でいいのかと聞くと
羊羹ならば構わないと言い
ゼリーでは ....
東から西へ
クリークのような商店街の上を
滑空する
コンビニの角を南に曲って
コソコソとパチンコ屋へ向かう
八百屋の若旦那を左目で見ながら
西から北へ
生易しい北風を切り裂く ....
机の上に東京タワーの置きものがある
上部のとがった部分を
指先でつまんで
ひょいと持ちあげ
底の部分を見ると鉛筆削りになっている
小学校のとき母に買ってもらったものだ
東京タワーは大き ....
わたしは川になりたい
草原をうるおし、森をいつくしみ
たくさんの魚が群れ泳ぐ
川になりたい
やがて大きな海にそそぐ川に
わたしは、はるか大地のおく
山の斜面にねむる池。夜ごと
星が ....
姑獲鳥 (うぶめ)
抱いてください 父を知らない不憫な子ですが
抱いてくれたら あなたに幸運が訪れます
身体が重いのは あなたの力を試すため
息が冷たいのは あなたの情を試すため
....
詩の一行一行に
花を咲かせたような
あの桜並木を歩く
僕には
名前を持たない
姉がいた
姉は木の行間をくぐり
幹の陰に隠れたのかと思うと
花咲き乱れる
か細い枝に立って ....
ふゆの匂いがする
ほわり、
冬のお喋りをしよう
たくさんのきらきらするものが
眠たそうに待っているのは、きみの春
あの頃の小さな息吹が
ほわり、と手さぐりしながら
追いかけてくる ....
絡新婦 (じょろうぐも)
ちょっと小首をかしげながらの上目遣い
さりげなく腕を組みながらのEカップ
たっそれだけで男の口元と財布は
情けないくらい緩んでくれるの
でも本当に欲 ....
殺風景なガラス張りの待合室に覚える
独特な曖昧さを避けてみるのも一興と敢えて
乾いた風の吹き抜けるホームに佇んでみた
乗ろうとして乗らなかった準特急の走り去った先には
見覚えのある古い建物 ....
にゃーン
零下15度の夜中に捨てられた猫
図書館員に拾われ
図書館で育てられた一匹の雄猫
にゃーン
鳴いているだけなのに
苛立ってばかりいた男の人が笑った
自閉症 ....
一反木綿
ブランドって何でしょう
トレンドって何でしょう
ステータスって何でしょう
セレブリティって何でしょう
誰かの視線につながれた風船になるよりも
飾り羽が多すぎて飛べ ....
子供の頃の、僕と父の写真を指差して、四歳の息子が、
「お父さんがふたりいる」と笑ってる。
それから、今の僕を指差して「お父さんが、もうひとりいる」と笑ってる。
今度は少し、不思議そうな顔を ....
こころ秘かにそう呼んでいた
――温泉宿ではなく海辺の一軒家を
灰褐色をした雑木林と
露出した山肌が囲み、
いつからか戻らなくなった主の代わりに
月に一度か二度、ぶらり現れては泊まって ....
ぬっぺふほふ
脂身 から にゅるんと 手と
煮凍り から ぬらりんと 足が
新月の 夜道を ぺたりぺたり 歩いて
軒下の 薄明かりに ぐんにゃり うずくまる
こらあげん の 垂れ ....
淡灰色の木綿
胸元に縫われた
鉤針編みの
ほんの些細な花を
両肘の下で袖をとめる
小さなボタンを
白いタイツを履いた
二つのひざに触る
生成色のピコレースを
顎の下か ....
雪女
もうそろそろ思い出して欲しいの
あの冬の日の美しい青年も
今じゃ肉色の雪だるまで7人の子だくさん
どうにも暑苦しくて耐えられないわ
今年も余計に雪を降らせてやったけど
....
冬
新緑の匂いなど知らない
今は深く眠るだけだという
獣たちの叫び声を閉じ込め
風の白い息だけが聞こえてくる
妖精のように踊っていた水
山々に見つめられても
厚い衣の下 ....
ぼくは少年のころ
特別な存在だった
月光が家の前の袋小路を照らすころに
宇宙から迎えの使者がくるはずだった
トイレの中の窓がまぶしく光る夜
ぼくは何事かと小窓をあける
袋小路に円筒の光 ....
遠い 遠い 空の 空の 下
あなたはどうしているのでしょうか
ただ胸にポカリと開いた穴から
静かにトウトウと流れ出していくようで
酩酊して
街の片隅のコンクリートで忘れ去 ....
090118
語感が好いからと言って
のんびりしすぎた
背伸びをしないで居たら
背中が堅くなってしまった
三重塔が美しい姿態を日に曝す
光り輝 ....
沙漠。人たる飛沫の色と喘ぐ口
そして些少の水、忽ち陽も声なき砂に埋もれ
凛として立ちつづけた女の淡い影
匂い燻る、榴弾の転がる塹壕を後に
夜の静寂が痩せた躯(むくろ)を晒して
番いの命、 ....
Nice to…
ああ、キン肉マンのおでこに書いてあるやつね
違ったっけ?
あなたは苦笑いしながらも頷いてみせる
完璧主義者を気取るあなただって
お母さんのお腹から出てき ....
狐火
東京タワーのライトアップのバイトは
少し怖かったけど時給の油揚は厚かった
明日は午後6時にお台場集合らしいけど
エコとか言って体よく使われてる気がする
人はあやかしなん ....
静かな小正月の窓から見える景色に
つい
あの日
どうして降ってくれなかったんだろうね
と
ねえ
降るとどうしてこんなに静かなんだろうね
雪々
静かでも幸せな ....
裏木戸が
閉じたり開いたり
冬の言葉で話してる
積もる
雪の音以外
何も聞こえない
意味の欠片さえ
さくさくと
家に帰る足音が
遠くからやってくる
もっと遠い
何処 ....
あなたが降りた後の地下鉄に
言葉になりきれない音が鳴っている
ガタゴトカタコト
言葉のトレイン
頭に鳴り止まない音が鳴っている
大好きな女の子の背中には
大人になりきれない羽がある
....
枕返し
枕は魂を夢の入り江へ運ぶ舟
夢と現の狭間に横たわる
とろんとした浅瀬を行き来する
僕は腕利きの一等航海士
大抵の鼾や歯軋りには動じないけれど
獏の襲来にはかなり手を ....
あなたに贈るこの花は
あなたの為に咲いている
あなたに気持ちを伝える為に
わたしがせっせと育てたの
毎日毎日水をやり
大事に大事に育てたの
一生懸命咲いている
花はわたしの気 ....
私たちには
自由がないから
私たちはそれぞれ
素敵なものを提出しあい
小さな箱庭を
作った
透き通る石や
カラフルな千代紙や
マフラーからほどけた
大好きな色の毛糸や
私 ....
わたしがどれほど 傷ついていても
私の片方の目がつぶれ
全身に 治療のしようのない潰瘍が広がりつづけていても
この汚れた空に向けて
窓から この美しい蝶を放つ
この世界が どれほど汚れ
....
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