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風は言葉を求めていた
無言で動き続ける自分に
自分の存在を
何かにあるいは誰かに
伝えたかった
街は重厚な壁に遮られ
跳ね返されるか
止められるかで
風の居場所はなかった
風は森 ....
ひとりで食べる夕食は
いつものように
電子レンジでチンして3分
たった3分
それでも3分
どうにも待ちきれなくて
電子レンジの前で腕組みしながら
ながめるタイマーは
永遠にカウ ....
大人になんてなりたくないと
思った時から
ずっと星を探していた
将来への自信と
可能性への期待に満ち溢れて
星は必ず見つかるものと
全ての人に全ての星があると
それが当然だと思っていた
....
ぼくのこの手に
あのあたたかい
陽だまりを拾うことができるなら
あなたのもとに持ってゆくよ
いのりが
ああ、
きこえない
キズだらけのあな ....
夏が黄色くなってゆく
太陽の色に近づいている
夏をぎっしりとつめて
鮮やかな黄色になってゆく
黄色くなってゆく夏は
水に中に落ち
ぷかぷかと気持ちよさそうに
泳いでいる
近くで ....
その本を開くと
ガラス玉のような星がこぼれました
しみだらけの古い本です
星を見失わないために
すべての星に名前が付いていました
本にはページがなかったけれど
ページをめく ....
誰も知らない夜明け
誰にも聞こえない鳴き声
一羽のニワトリが高層ビルの屋上から
フワリと身を投げ出した
必死にもがいて羽ばたいて
自分にも飛べると思ったのかしら?
あなたは ....
あなたが
星になる
最後の一秒間を
私にください
一、蝉しぐれ
白い病の影がおりて
夏の命、際立つ
すり硝子の花瓶に
溢れていたはずの笑顔
シーツに残された
僅かな起伏は
生きていた
あなたの
散らばった
レモン色 ....
森の中で
がばっと大きな口が開いていた
大きな口は
緑色の歯をいつも見せていた
晴れた青い空の中で
流れてきた白い雲を
一気に飲み込んだ
歯が揺れている
近くまで寄ってゆくと
自分が ....
窓辺にそっと思うは過去の日々
風に靡くレースカーテンに
ひらひら揺らめく影のコントラルト
この四角い世界の外側へ行ってみたくて
思いをあの大樹に馳せては瞼を閉じる
知らぬ街へ駆け出す脚は ....
頭のずっとてっぺんから
かなたまでつつみこむようにはられた
透明なフィルムの外側を
音もなく星々がすべりおちてゆく
そのすきまに
かすかな灯りがひとつ
はらばいになって停泊している
砂浜 ....
都会の道路に沿って
綺麗に並べられた街路樹は
まっすぐに立っていたが
その緑は曲がっていた
歩行者や大型の車に合わせて
その枝と葉は
捻じ曲げられていた
緑はいつも
土や大地の色は ....
車の走り去る音が水飛沫のように聞こえて心地良かった
誰かが車を閉める音が夏休みを彷彿とさせた
熱は下がったが医者から絶対安静と言われた
まだ咳と痰が出る
動くとすぐだ
こう暇であると天井をじ ....
水を描こうとすると
モチーフがうまくつかめない
ただただ手を濡らすだけで
画用紙は白いままだった
だから僕は画用紙を水に浸して
水を描いた
コップの中の水の
揺らめき
覗いてみたら ....
「序詞」
ゆりかごの中で
小さな戦があった
理不尽な理由とプラントが
長い海岸線を覆いつくした
けたたましくサイレンが鳴り響き
その海から人は
眠りにつくだろう
....
庭土が連日の梅雨で 満足げに
雑草まで育てている
庭木も梅雨の晴れ間で 満足げに
みどりの息を弾ませている
そして 生垣の隙間には
....
なにも伝えられない
こんな夜は
静かにあなたの詩でも読んでいよう
なにも言えない
こんな夜は
静かにあなたの歌声でも聴いていよう
今夜だけは
あなた
ひとりでい ....
まあるい泡を
ぷくりと吐いて
そっと寝床を抜け出す
水の流れは
暗いぶん少し冷たい
おびれとむなびれ
ぷるぷる舞わし
水草の間から
夜の空を見上げた
真昼の水面を
きらきら照ら ....
玄関のチャイムが鳴ったので
仕方なく立ち上がろうとしたら
背中の上に
重たい鳥が
止まっていた
「どいてくれますか?」
黄色の羽根を
ぱたり、と閉じて
ずん、と居座る
「私は止ま ....
匂やかにすみれ花咲く
白い星を押し{ルビ抱=いだ}き
夜の{ルビ水面=みなも} さざめきだち
{ルビ朱=あけ}にめくれてゆくまで
鉄は錆びていた
光沢は外に発しない
錆びきっていた
鉄は昔を思い出した
あの銀色に輝いていた自分を
当然だと信じていた
今はぼろぼろな茶色の体が
悲しかった
雨に濡れて
少しずつ ....
君は前脚を
威風堂々と開き
後脚を
上品に揃えた
私は黒毛の艶やかな
毛並みにうっとりし
そっと撫でた
吸込まれそうな眸
見とれていると
君はこちらを見やっ ....
初めてラムネを飲んだのは
確か5歳のときだった
ママとパパに連れて行ってもらった
近所の夏祭り
小さなベンチに腰掛けて
ガラス玉を落としてくれたのは
パパだった
ビンに口 ....
そこに風があった
葉を揺らし
湖を渡っていた
やがて街へ
そして自分へ
そこに風があった
花に触れて
川を横切った
やがて海へ
そして彼方へ
一瞬の風は
また一瞬の風へと ....
あなたが
私の本棚の
背表紙をそっと
撫でる
私が
親しんだ本たちが
小さく
揺れているのがわかる
ああ
それは
古本屋でね
あ
そっちは
お風呂で濡れちゃって
....
耳に雨音
瞳に滴
触れるたび
肌はやわくなってゆく
身じろぎもしないで
硝子一枚に隔てられて
雨に囚われているのだろう
雨を除ける力など
もってはいないから
ここでじっとしている ....
良く頑張っているよね
そんなふうに
自分を褒めてみるのは
なんだか
むなしい気がする
お馬鹿さんだからなあ
そんなふうに
自分を卑下してみるのは
どうしてなんだろう
ふぅ ....
灰色がかった厚い雲に覆われた大空
ところどころ仄かに煌めく
その煌めき
たちまち稚魚となり
大空を泳いだ
稚魚
風に煽られつつも
しっかり雲に身を寄せ
必死で風の流れにのっている
....
雨が止んだ
そして他の誰よりも
最初に光を見たのは
ぼくだった
光は止まっていた
その光をくぐるようにして
白い蝶が飛んでいる
風も止まっている
雨が止んだ
閉じていたものが ....
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