遠くから はさみの鳴る音が聞こえる
それはとても正確で 狂いの無いリズムで
冬の雲を切りそろえ 月の出る準備を
飛び散った雲は星に変えよう
はさみの刻む音で 月がくる
光輪のファーを巻き ....
橋を渡る
ここから先であえて水の味を嘗める
遠い背後で冷たくなった人びとは
絶句したまま 熱い指を池の面に浸す
最初から順番に数を数えて
今日もまた
汚れた者がひとり
明日もまた
汚れ ....
娘が補助輪無しで
自転車に乗ることが出来るようになった
それは昨日のこと
最近左手がきかぬと
父がペットボトルの蓋を人に開けさせた
それは今朝のこと
僕は時のパズルと戯れながら ....
蛹の時代は終わったと
鱗粉まみれの陽光を謳歌する
ここには花が少ないからと
蜜の代わりに蜂蜜を
葉の代わりに
デッキチェアを
さようなら、また今度、遊びましょう、晴れの日に。
そ ....
記憶の ぬくもりが
朝のラインに 並びます
いくつかは やわらかく はじらって
いくつかは つめたく ゆるされて
それでも
濡れた空が ひらかれてしまえば
水の旗は ふかく たなびくの ....
目を閉じて目を閉じないで目を閉じてそんな器用な真似はできない
手応えを感じているの?ラケットにガットも張らずに打ち返すきみ
舌を出し振り返るきみほらそこに妖精みたいな花が咲いてる
....
よそうだにしない マンドリル
よろこんで まにうける
よいどれは たちどまる
よこはまから くる
よつやに くる
よりによって なぜ ここにいる
よみすての ゆうかんてにとる
よ ....
マンホールの蓋を開けると
ハローページは既にそこまで
ぎっしりと積み上がっていて
でかくて、飲み込めね、でかくて、飲み込めね
ごきゅごきゅ喉をいわせ
頑張っている船長の隣で
僕はタウン ....
私の中に小さな女の子がいて
公園の砂場で
ちぎった花びらをお皿にのせては
ままごとをして
パパとママの会話をひとり話している
私は今近所の主婦達が公園デビューさせる
ベンチに座っていて ....
からっぽの
そしてからっぽであることにためらいをつけて
せかいがぐるんぐるんまわる
かそくどはじゅうぶんについているのに
もっと、もっと!!
とだれかがせかすことによって
ぼくたちはなりた ....
ダヒテ。
ダヒテの発音は砂のようで
ダヒテの腕はいつもきみどりいろな気がする。
僕の魂は重みにつぶされたりはしない
青梅線を走る送電線に巻き込まれたりしない
そうなったら
....
じーちゃんは 耳が遠い
ばーちゃんは 歯がなくて発音が悪い
二人の会話は
何度も聞き直し
何度も言い直し
互いの顔を
くっつけるように近づいて
可愛らしくて
仲がいい
ばーち ....
「少女の名前」
ちょんちょんと
ケンケンを
庭石でしている
突然かがみこむと
名も知らぬ花に
手を伸ばす
摘みゆかれる花
かわいそうなお花さん
お花はきっと痛いから
摘まないよ ....
今日もくもくも黙って
黙ってこのカラダ働いてるわけでなし
昨日か、そんな言葉は覚えたから
死んだも同然なり
+
あかるい光線がヒット
網膜の選択 くも膜 ....
明日の朝になったら
気付かないうちにあたしが
鮭の小骨になってて
どの食卓でもよけられて皿の端に置いてきぼりで
最後には
グルメな猫にも食べてもらえずに
入れられたゴミ袋を ....
君のくちずさむ
つぎはぎメロディー
僕はとなりで
アクセル踏み込む
君に尋ねても
「どこでもいい」というけど
僕の提案は
すべて気に食わない
信号をいくつも ....
一月の風が過ぎ去った頃
空を迷って辿り着いた木の実が
夜を探していました
まだ
日暮れ前の鳥たちが並んで飛んでいる
公園の歩道には誰かが落としたハンカチが
あと少しで浮こうとしています ....
思い出を消費する
何も残らないように
君が泣く
僕らの時間が
夕暮れる
跡形もないくらい
求めて
海のような
リズムで
どうして
しかられたの
まちがってることを
しちゃったから
なの
どうして
ほめてくれたの
できなかったことが
できたから
なの
なにかのためだとか
きまったことだと ....
ラインストーンふた粒はがれた日のようにさよならって言ったほうが勝ちなの
彼氏くらいいるんでしょってモノグラムの財布撫ぜてるひとに問われる
ゆめのなかほんとうの家族に愛される ....
そうして
僕らのこれまでの順路を
紙の上に書き出してみる
その上に雲なんか浮かべたりして
無駄に力を入れて笑ってみたり
過ぎ去ったあとで
自然に昔話ができれば
それはそれ ....
りんりんと
しなびた空気をいま
のみこんで
ナイフを もっています
ナイフは 金物屋のおじさんが
よく切れるよ と言っていたので
(おじさんは嬢ちゃん、といった)
(ナイフを売っ ....
偏頭痛の片隅で
子供が
膝を抱えている
いつかの子供
立ち上がってもらわないと
そこは
一番痛みがひどい
僕は手を伸ばす
知ら ....
静かに という言葉を 使いすぎてはいけない
そこには たしなみ が あるから
多くを語らずにいても 多くが漏れる
ので さいだいげんの 多くを 語る
よそ者のなんにんかは いじけてしま ....
羊飼いが私を見ている/それはどうでもいいことだ/ただ君はそこにいてくれればいいんだ/死んだ魚のように/私は泳ぎを知らないまま/あなたの流れてくる涙を眺めている/好きだったような気がするけれど/あま ....
とどのように寝返りを打つ
からだが痛い
とどのように寝返りを打つ
一睡もできずに横になっているからだ
不眠症のぼくは4時に起きる
強 ....
この前
青白い顔をして
「死にたい」
と言う客が
いましたので
僕は宮沢賢治にならって
「怖がらなくてもいい」
と言ったところ
「私はそんな事を聞きに
きたんじゃない」と
ぷ ....
きり きりり
ねじさえまけば
なけるんだと
おもってた
りゆうがいるなんて
しらなかった
ふりこが
ゆれるのは
あれは
じゅうりょくのせい
なんだってね
こつこつ こつ
....
ふと婦人は席を立った
向かいの席だった
ぼくは隅が好きだ
ぼくは隅に座っていた
カバンを架けかえようとしていた
ジャケットのフードがじゃまで
カバ ....
さしこむ月明かりに
浮かび上がる
窓枠におかれた青白い手
古びたホログラムのような
その手の
輪郭が、ぶれ
はしる、ノイズ
握られたナイフの
かるい重み
ナイフは澄んだ鏡
凪い ....
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