鏡のふちに
霜が降りている
唇のはしが腫れはじめ
痛みがやむころに
枝先から影が落ちる
おもむろに声をあげようとして
言葉にならなかった音の破片が
ガラスを震わせる
あなたが
どこか ....
風に乗り運ばれる香りに
鈍感なわたしは気付かず
考えているようなフリをしながら
本当は何も考えていなかった
下校している小学生が
ランドセルをかたかたと鳴らしながら
跳ねるように歩 ....
山を登っていくと
海のことを知っているかのように
彼は何も知らなかった だから 僕は
空になったつもりでいることにした
プールにはいろいろな魚が泳いでいる
狐に出会ったので/桑田佳祐を聞 ....
こんなにみにくい幼蟲見たことないそう言ったのはきみなのに。
ひとりだけサナギになった兄さんがどうしても許せなかったぼく。
巣を捨てて出て行ったあのひとは ....
僕は切符を買うよ
いつもと同じ場所にむかう
日めくりをちぎるときに
忘れてしまうだろう、今日だから
僕は切符を買うよ
四十九枚の十円玉を投げ入れて
光るボタンで行ける場所
誰もが辿れ ....
ひさしぶりに実家に帰ると
お父さんが
船になっていた
甲板には母がいて
いつものように洗濯物を干したり
いい匂いがしてくる
調理室で料理をつくるのも
やはり母だった
嫁い ....
石積みの朝
陸橋はその歪んだ影を
路面に落とし
昨日までの工程を語り終えると
あなたは静かに
最後の生理を迎えるのだった
+
足音が擦り切れていく
あなたにとっ ....
飛騨小坂に
帰りました。
小坂川を
見に
行ってきます。
翡翠色の川
ほとばしる
瀬と
真っ黒い
たゆたう
淵
そこに
身を投げます。
私は
川の中で
暮 ....
さえぎられた道で、端的に
もう
ここには何もない、
きみもいない、雪の
においが
わたしに見ることを教える、でも視力は
もう必要ない、きみが
いないという
ことを見る、その ....
駅のホームからは街が見えていた。
帰り路を急ぐ人々の顔は互いにひどく似ていた。
廃ビルには、昔の記憶が地層のようにこびりついていた。
一日ぶんの影が、街じゅうの屋根という屋根に覆いかぶさ ....
今日あったことがまた一つ
ことさら寂しそうに去ってゆく
自然と
今日あったことも思い出になり
いずれは、ゆっくり忘れてゆくのも
全部私の中にあるんだ
明日が楽しみなんてい ....
赤い夕日を浴びたのに
かげだけ黒い、
そのふしぎ。
草木も花も野も山も
おなじくみどりと
呼ばれる、
ふしぎ。
波の青さにあらわれて
透きとおってゆく、 ....
片側にばかり
痛みを打ち付けて
逆側はいつも
浮いてしまおうとする
結局は
浮ききらずに沈みきらずに
漂ったままで
飲み込んだ水は
呆れる程綺麗で
汚れ ....
口語の時代はさむいがその寒さの中に ※2
自分の裸をさらすほかない時代
ひとつの恐ろしい美が生まれた ※3
三角さん、錯覚しなければ ....
ながれていく
(しずかに)
その潜行する鼓動を
ききわけて
よりわけて
乾く冬のために
水を落とすものとなる
寒い病のために
感情を輸血し
あるいはこのこころの
ものがたりを出 ....
いつも
満たされない夜を求めて
光を舞う蝶でありたい
描けるしあわせはいらない
とまりぎに 腰をかければ
灰になってしまうだけ
足跡を水にとかして
あなたからあなたへ
....
「手紙」
見渡す限りの誰もがのどが渇いていて
水!水!と叫びながら歩いているのに
誰にも耳が付いていないので
互いにそれに気づいていない
伝わることの無い声は
束になって風を起こし ....
話を聞いて
理解して、
誉めて
ご褒美をあげる。
そうすれば
自信がついて
自分が好きで
NOと言える。
すくすく育って
育んで、
人生悩んで
楽しんで。
こんにちは、台風
懊悩の瑪瑙は連鎖反応する
本棚のメニューはプライベート
でも見て行ってくれていいよ
シミダスは
現代詩用語の基礎知識
もう何年も前のだけど
いっそ十年とっておい ....
一呼吸置く、世界だったり
待ち人は来なくとも
息は吐けます
卵の丸みを写してみた紙には
吸い込まれそうな白さはどこにもないのです
変容のない毎日です
僕らは生まれていますでしょ ....
1という字のように立ち 一という字のように眠れ 孤独な無限
0なんて発見するからいつまでも君の不在が消えないままだ
ON/OFFのあいだに広がる宇宙にて親指は祈る メール、 ....
きみの歌は
四散して、きみたちも
四散して、
四散していったものたち、言葉
は
何ひとつとして
きみと
ともには行かなかった、かつて
わたしはきいた、
はずの
きみの
四 ....
クラッカーが鳴らされた
遠い船旅への出航にも似て
さまざまな色の
無数のリボンが流れては
黒い羅紗の床を汚してゆく
ひとつの別れなのか
祝うべきことなのか
知らない
どこへ ....
数字の1はいつだって矢印
高みへと誘う
だけど航空技術の基礎としては
銀ヤンマ
水の匂いには弱い
睡蓮とセイレーンに呼ばれ
オーニソプター
鬼さんこちら
里芋の葉の水滴のよ ....
1
そして皮膚が脱げていく
鳥になって
JRの中にすごいあふれて
ホームのドアが開くたびに散らばって
ぶわっとなりながら
短い永遠とたましいを乗り換え
不安と怒りは眠りと平坦な祈りに ....
白梅も微睡む夜明けに
あなたしか呼ばない呼びかたの、
わたしの名前が
幾度も鼓膜を揺さぶる
それは
何処か黄昏色を、
かなしみの予感を引き寄せるようで
嗚咽が止まらず
あなた、との ....
いくつもの嘘をついた
本当のことだけを言いたかったけれど、
言えなかったから、嘘ばかりになった
「どんなに優しくても、嘘は罪なんだよ」
「真実がつらくても、嘘を言う貴方も傷つい ....
愛に迷う朝の瞳に抱かれた
木陰は透きとおり
空へと還る一つの現象で
(降っている、)
砕けた青の波を
すべりおちていく冬の光
潤滑する霧のなみだは
雪片を
あかあかと燃 ....
呼吸を取りに帰る
瞬いてしまうまぶたみたいに
あらがえないこともあるのだった
息をひとつ
死んだ誰かへ
捧げるわけでもなく
そこに酸素があるぜ、
ということ
....
「 いってきます 」
顔を覆う白い布を手に取り
もう瞳を開くことのない
祖母のきれいな顔に
一言を告げてから
玄関のドアを開き
七里ヶ浜へと続く
散歩日和の道を歩く
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108